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図書新聞2001/10/20
ジャーナリストと文芸評論家(モンタネッリ、ボ、パンパローニ死去)

七月にサミットが開催されたジェノヴァでは、デモ隊と警察の激しい衝突が起きた。投石、放火、そして警官隊による鎮圧の映像がテレビでくり返し流され、世論を二分する論争が起きていたころ、ふたりの文化人の訃報があいついで報じられた。

日本では『ローマの歴史』(中公文庫)など歴史解説書で知られる1909年生まれのインドロ・モンタネッリは、イデオロギーや常識にとらわれない鋭い批判精神をもったジャーナリストとしてつねに注目を浴びてきた。ファシズム時代には体制批判の記事を書いて死刑宣告を受け、74年には「コリエーレデッラセーラ」紙の編集方針と衝突して日刊紙「ジョルナーレ・ヌオーヴォ」を独自に創刊、94年には「メディア王」ベルルスコーニの政治的介入に反発してさらに「ヴォーチェ」紙を創刊するという波乱の経歴がその反骨精神を物語っている。五月の総選挙でも、保守の立場にも関わらず、右派のベルルスコーニ現首相を批判して左派への投票を表明して周囲に波紋を投げかけた。

モンタネッリより二年下の九〇歳のカルロ・ボはフランス文学の教授であり、ウルビーノ大学の学長を四十年以上も務めた文壇の大御所だった。近代詩運動エルメティズモ世代を代表する批評家として紙上で発言する一方、積極的に社会参加を行うキリスト教者でもあり、83年には終身上院議員に任命されている。

ボとならぶ文芸批評の代表格だったジェーノ・パンパローニ(1918-2001)も今年一月に亡くなった。五月に出版された『日々の評論家』Il critico giornaliero (Bollati Boringhieri) にある書評百十編には、簡明ながら思いがけない表現で作家の特質を見抜く感覚が発揮され、カルヴィーノ、ガッダ、モンターレ、パゾリーニなど文学界の半世紀がリアルタイムで描写されている。

二〇世紀文学におけるジャーナリズムと批評の重要性を体現した三人と言えるだろう。


Geno Pampaloni, Il critico giornaliero, Bollati Boringhieri, 2001.

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