■ 第二幕

 

日が変わって、某日夜。

2階の下宿部屋(町田君の部屋らしひ)から大宴会の笑い声が聞こえる。そんな中、静かに玄関の扉を開け、侵入してくる女性の影・・・。2階で声がするたびに物陰に潜み、警戒しています。そして富士子さんが台所の奥にある部屋からやってくる気配を感じて、トイレに逃げ込みます。

頭にはカーラーを巻いて、寝巻き姿のおカミさん。どうやら一週間(?)も祝宴の状態が続き、もはや呆れた気持ちになっています。そこに町田君が、スーパーのカゴのようなものを持って2階の宴会部屋から降りてきます。完全に町田君の部屋がその宴会場になってしまっているわけですが
  富士子「町田君、迷惑なんじゃない?」
  町田 「僕なら構いませんけど」
  富士子「無理しないでね…」

町田君迷惑に思うどころか、それすら楽しんでいる様子。まして、2階の宴会場の窓からは、下にいる町田君に:

  キク 「町田く〜ん、ビール持ってきて〜」
  町田 「はい」   キク 「町田く〜ん、冷蔵庫にあるおつまみ持ってきて。俺の名前が書いて
      あるやつ、適当に持ってきていいから」
  町田 「はい!」

  清一 「きくちゃ〜ん、大家さんがトランプしたいって」
  キク 「町田く〜ん、トランプ!」
  町田 「はい」

と、次々と2階からの要求が来ているのに、やっぱり町田君は嬉しそうに快諾しています。さらに;

  暎子 「あっ、キクさん、トイレのカギ治しておいてくれた?この間、大家
      さんに覗かえれちゃったよ!」

という声が聞こえてくれば、またキクさんから頼まれるだろう事を予見して、心の準備をして待ち構え;

  キク 「町田く〜ん、トイレの鍵、直しといて!」

と、キクさんが言い終わるか終わらないかぐらいのタイミングで:

  町田 「はい、喜んで!」

と、応じてます。キクさんはお酒が入ってるだけでなく、何でもやってくれる子分が出来て上機嫌なのです。

  富士子「無理しないでね、町田君」
  町田 「いえ、楽しいですよ。昔のばんから学生みたいで…。あ、トランプ
      ありますか?」

リビングの棚の下にあると言われて、そちらに行って、箱の中を探す町田。

そんな町田を見て、富士子さんがしみじみと町田に話します。

  富士子「昨日瑛子ちゃんとね、町田君は違ったね、って話してたの」
  町田 「えっ」
  富士子「ほら、災いを呼ぶタイプだとか、人生の雨男だとか、言っちゃった
      じゃない?」
  町田 「ああ、あれですか、気にしてませんよ」

箱からトランプを見つけ、籠に入れ、箱を元に戻してからソファーに座る町田君。ああやって、大家さんに大金が手に入って、またそれが不幸を呼ぶのではないかと不安に思っていたというおカミさんの話を聞きます;

  富士子「酔っ払わせて、朝起きたら『何寝ぼけた事言ってんだよ、お前さん』
      って、芝浜やろうと思ったの。」小ネタ*2-1
  町田 「でも、心配なかったんでしょ、お金は銀行に預けたんだし」
  富士子「『折角回ってきた運だから、大事に大事に使うんだ』って…。それ
      を聞いて、私、感動しちゃって」
  町田 「へぇ…」


そして;

  富士子「みんながあなたのこと、あまりよく言ってないことは知ってるわよ
      ね?」
  町田 「ええ、何となく」
  富士子「何を考えているか分からないとか
  町田 「(^^;)」
  富士子「ギャグがつまらないとか
  町田 「(^^;)」
  富士子「冗談を言ってもタイミングがズレるから、前に
      つんのめるとか
  町田 「そんなことまで!?」
  富士子「私はね、思っていても言わない」
  町田 「思ってるんですか?」
  富士子「(うん、と黙って頷く)」小ネタ*2-2

そこまで言われて、ちょっとショックな町田君(^^;)。

  富士子「それもね、あなたが自分の事を話したがらないからなの。そういう
      ものなのよ、悪口って」
  町田 「でも、本当に話すことなんて何もないですから…。」
  富士子「まぁ、私はあなたを歓迎しているのよ。たとえあなたがピッキング
      泥棒でも」
  町田 「いいえ」
  富士子「たとえあなたが売れない芸術家でも」小ネタ*2-3
  町田 「いいえ」
  富士子「もしくは、あの、よく、歩行者天国で、紙の人形をぴょんぴょんさ
      せて…」小ネタ*2-4
  富士子「ああ、ああ、実は種があって、両側から二人でひっぱってるやつ」
  町田 「あれやってんだ!」
  富士子「違いますよ!」

そして、少し改まって;

  富士子「一つだけ、そうだったらどんなに面白いかと思っているのがあるの」
  町田 「なんですか?」
  富士子「三億円強盗!」
  町田 「・・・。いや、生まれてませんよ!」
  富士子「なかなか尻尾をださ無いな、このやろー」

と、次々話を振ってみるおカミさんは、話をしている間に、ぽろっとしゃべらせようと思っているらしい。

とにかく、みんながどう思っていようと、町田がどういう人間であろうと、結果的に、町田が来てから災いが降り注ぐどころか、下宿屋全体が変わったような気がしているおカミさん。

  富士子「あなたが来てから、何だかいい感じなの」
  町田 「そうですか?」
  富士子「そうですよ。町田君、みんながどう思っているにせよ、私は頼りに
      しているのよ。できるだけ、長くこの下宿屋に居てね」小ネタ*2-5
  町田 「言われなくても、そのつもりですよ。僕はこの下宿屋が好きで、こ
      ういう生活がしたいと思ってやってきたんですから」

町田はそうおカミさんに告げた。


そこに大家さんが降りてきます。一緒に『ババ抜き』・・・あ、いや、富士子さんの顔を見て『7並べ』をしようと。馬鹿騒ぎに付き合ってられないという富士子さんの言葉に、大家さんは落ち込みます。

  キク 「大家さん、ナンパ成功した?」
  満男 「うるさいよ!」
  キク 「何だよ!人が心配してるのに」

そこに清さんと瑛子ちゃんも降りてきます。大家さんが本気でおカミさんと仲直りしたがっているということで、その応援にやってきたのだ。

  清一 「おばちゃん、俺達が言い出したんだよ。眉唾だとは思うんだけど、
      男がそこまで言うならと思ってさ」
  暎子 「そうそう。ほら、合コンなんかでもさ、とりあえず騒いで、その後、
      二人でしっぽりよ」

そういう清さんや瑛子ちゃんの言葉に、町田君も加わって;

  町田 「一緒にやりましょうよ!僕も頑張って盛り上げますから!!」
  暎子 「あ、あんたはいいわ。ギャグを言う度にどんどん
      淀んじゃうから
  清一 「暫く休んでな。盛り上がってきたら呼んでやるから」
  町田 「あら、くやし・・・」(^^;)

町田君、いじけてます(笑)。

とまぁ、そんなこんなで、おカミさんは渋々ながらも2階に瑛子ちゃん&清さんと一緒に上がって生きました。それに対し、気まずそうに、すぐには2階には上がっていかない大家さん。しばらくソファー周辺でウロウロしてますが、2階に行く前に、熊の置物をまじまじと眺めて;

  大家 「位置が悪いなぁ〜

の声と共に、熊を起き上がらせました!!!そのまま黙って2階に上がっていきました。一人残された町田君でしたが、その熊が座っているのを見て;

  町田 「(@o@) !!!♪

それを見て、町田君までもが上機嫌になったのでした(笑)。興奮して、台所で水を口にする町田君。2階のキクさんからトイレの鍵を直すようにフォローが入り、トイレの方に向かってルンルン気分でフットワーク軽く駆けていきます。思わず熊の彫り物の前で回って甘えるポーズをしてみたり(この町田君、か、可愛すぎる…(*^^*))。



だけど、町田君がトイレに入っていった瞬間、大きな物音が!町田君ともう一つの人影がトイレから出てきます;

  町田 「うわー!」」

  町田 「あいたたたた、あいた、あたたたた・・・・・・・・」
      (↑北斗の拳のケンシロウ風(^^;))

トイレから出てきたもう一つの人影は、もちろん、先ほどの女性(奈津子)。なぜか町田君はトイレ用マジックリンを手に・・・(笑)。

  奈津子「よく、飛び上がって驚くって言うけど、本当に飛び上がって驚く人
      って初めて見たわ」

頭を押さえて苦しむ町田君。

  奈津子「何持ってるの?」
  町田 「マジックリンだ!!!
      あ、丁度、棚から落ちてきて、キャッチしたんだね」(←冷静に分析)
  奈津子「貸して!」

そして、奈津子が替わりにトイレにマジックリンを戻してきて、改めて町田君が頭を打ったことを心配して尋ねます;

  奈津子「頭、大丈夫よね?自分の事分かる?」
  町田 「た、たぶん」
  奈津子「名前は?」
  町田 「町田恭平」
  奈津子「部屋は?」
  町田 「3号室」   奈津子「今朝食べたご飯は?」
  町田 「アジの干物と***」(さすがに覚えてないわ)
  奈津子「小さい頃の思い出は?」
  町田 「パンが飛んで、僕、うさぎさんになっちゃった
  奈津子「病院電話した方がいいよね…」

そして、黒電話の方に言って、受話器をとる奈津子。救急車を呼ばれてはたまらないと、慌てて訂正しようとする町田君;

  町田 「あ、いや、違うんです。小学校の運動会で、パンくい競争のパンの
      紐が切れて、目の前で飛んだんです。それで僕、ウサギさんの旗の
      ところに」
  奈津子「・・・」
  町田 「あ、だから、順位をつけるのは良くないという事で、1等から5等
      まで動物の旗だったんです、うちの学校の場合。それで僕は兎の旗
      のところに…」
  奈津子「…そういうこと」
  町田 「そういうこと」

とりあえず、話を理解してもらえてホッとした町田君。

  町田 「でも、間違ってますよね、うさぎだなんて。ビリの人間には自分が
      ビリだとわかった方がいいんです。そすれば2つの選択肢しかなく
      なる。もっと頑張って一位になろうとするか、別のことで一位にな
      ろうとするか」

ここで町田君、いきなり立ち上がり;

  町田 「だいたいね、そうやって誤魔化なんていうのはよくないんだ。子供
      はうさぎが嫌いになりますよ!うさぎにとってはいい迷惑だ!ねぇ、
      そう思わない?」小ネタ*2-6
  奈津子「・・・。頭、大丈夫?キャラ、変わってるよ(^^;)」

と、そんな解説はさておき、いきなり登場のその女性は、ここ下宿人が旅行に行って帰ってきたりというわけではなく、大家さんの次女である奈津子。

  町田 「うわぁ〜、感激だなぁ。お話は聞いてましたよ」

  奈津子「あまり良い話じゃなかったでしょ?」
  町田 「はい
  奈津子「・・・」

町田のストレートすぎる反応が気になりつつも、奈津子はビッグになってやると言って家を飛び出し、5年ぶりにこの家に帰ってきたことを告げる;

  町田 「でも、よかったんですかねぇ。久しぶりの里帰りなのに、最初に会
      った人間が僕で。しかもトイレ」
  奈津子「仕方ないわよ。やり直せないし」

町田が聞いていた奈津子についての話は、5年前に家中にお皿や鍋やらを撒き散らして中年の禿の男と家を出ていったと。

  奈津子「禿げてないわよ!中年だけど」
  町田 「あ、すみません、イメージがどんどん膨らんじゃって(汗)」

そして当時は山姥のようなガングロメイクだったという奈津子ちゃん。その姿がイメージできなかった町田に写真を見せると;

  町田 「砂掛けババアだ」
  奈津子「私もそう思う…。恐いもの無かったからね、この頃」

と、とにかく、この頃、奈津子はビッグになってやるって家を飛び出したのでした。

  町田 「ビッグになるって?」小ネタ*2-7
  奈津子「こういう女の子が考えそうな事」
  町田 「へぇ…(写真を見ながら)想像できないなぁ…。砂掛けババアの夢
      でしょ…」
  奈津子「・・・」

絶句しつつも、奈津子は部屋の奥を指差して言う;

  奈津子「あれ!」
  町田 「ミシン・・・ですか?」
  奈津子「ファッションデザイナー。 『NATSUKO』ってブランドの作りたかっ
      たの。表参道に自分の名前の看板を立てるのが夢だったの」
  町田 「で、表参道に看板は?」
  奈津子「立ってたら昼間にリムジンで帰ってきてた…」

奈津子にもいろいろあって、最初の作品は売れたが、それが失敗の元で、作りすぎて借金して、またそれを取り戻そうとしてさらに借金…。住んでいる所も追い出され、行くところがなくなったらしい。

  町田 「その、はげてない中年の人は?」
  奈津子「逃げた」

とはいえ、相手も会社を潰して、苦労したのであり、奈津子は恨んだりしてない様子。

  町田 「すみません、会った早々、いろんなことを聞いちゃって」
  奈津子「こちらこそ、いきなりヘビーな話をして」
  町田 「じゃぁ、おカミさんを呼んできますね」

町田君は2階におカミさんを呼びに行こうとしますが、お皿を投げつけて大騒ぎをし、『二度とこのうちの敷居はまたがない!』と家を出て行った手前、非常に顔を合わせづらいという奈津子は、それを止めます。

  町田 「・・・」
  奈津子「何?」
  町田 「イメージしてるんですよ、砂掛け婆が鍋かん撒き散らしてるところ。
      見えました、あはははは(笑)」小ネタ*2-8
  奈津子「・・・」
  町田 「どうぞ」

話を続ける奈津子;

  奈津子「みんな元気そうね」
  町田 「ええ」

キクさんはお兄さんみたいで、暎子ちゃんは相談にのってくれ、清さんは何かあったらかばってくれた。そして、お父さんとお母さんも、昔は一旦、喧嘩を始めるとガラスを2〜3枚割るまで収まらなかったものが、今、久々に実家に帰って見た二人は、その手前で抑えていた;

  奈津子「成長したのねぇ、みんな…」
  町田 「ええ。でも、まだ安定してないんですよ、あの夫婦。その・・・、
      お父さんはお母さんと仲直りしたがっているんですけど、お母さん
      はその”気持ち”に答えてあげないかもしれない。
      いや、それ以前に、お母さんはお父さんの”気持ち”に気づか
      ないかもしれない。そうなると、さらに事態は悪化する可能性があ
      ります。いずれにせよ、あの夫婦にとっては今夜が山場です!」

と、熊が座ったポーズのマネを随時しつつ、そしてその熊の置いてある方向を見つつ、そう奈津子に告げる町田君。奈津子にしてみれば、その町田君の仕草は意味不明ですね(^^;)。

  奈津子「何かいる?」
  町田 「(^^;)」

  町田 「今日はどちらへ?」
  奈津子「あっちの空き部屋、こういうとき便利よね、流行らない下宿屋は」
  町田 「後で報告に行きます。ご両親への挨拶は、上手くいきそうだったら
      明日の朝、ダメだったらまた日を改めた方がいいでしょう」

その言葉の通りに従い、奈津子は2階の空き部屋へと上がっていこうとします。その前に;

  奈津子「私、あなたと会って、まだ10分ぐらいしか経ってないけど、あなた
      のこと、結構、アテにしているかもしれない」

と、本心ともお世辞とも取れぬ良い方をした奈津子ちゃんでしたが、もちろん町田君はその発言を真に受けてまして;

  町田 「おカミさんにも言われたんですよね。そういう性格なんですかねぇ。
      確かに、一見、ボンヤリしているように見えるんですけど、扇の要
      になってると言うか…」
  奈津子「格好よく見えてきたぞ!」
  町田 「照れるな…」
  奈津子「・・・(--;)」

とにかく、奈津子ちゃんは下宿屋の空き部屋にしばらくの間、潜んでいることにしました。奈津子は町田君らの部屋に続く階段とは別の階段から空き部屋に上がっていきます。一方の町田は、うろうろと居間に居ると、再びお上さんが降りてきます。

  町田 「トランプは?」

どうも一緒にいると気まずいというおかみさん。どうも何か企んでいるようにも見えるし…と。とにかく、「もう、寝るわ」と言って奥の部屋に行こうとします。が、町田君にしてみれば、このまま、”気持ち”に気づかずに寝られてはたまらない。町田君の必死の大作戦が始まります(^^;)。ロビーにある雑誌の山を指して;

  町田 「あ、あの・・・、この辺の雑誌を片付けておいた方がいいと思うの
      ですけど…」
  富士子「そうね、片付けておいて」
  町田 「あ、あの!どれを捨てたらよろしいでしょうか?女性誌もあるし」
  富士子「そうねぇ・・・」
  町田 「すみやかにこちらサイドへ…小ネタ*2-9

まずは作戦その1、おカミさんを熊の置いてあるソファーのある空間に招き入れることには成功しました。続いて作戦その2では、熊の置物そのものに視線が行くように、雑誌を一冊ずつ床に置き、それをおカミさんに拾わせ、また一冊を置いて拾わせて、徐々に熊の置物の方に誘導しています;

  富士子「どうもあやしいのよねぇ。何か裏があるような気がするのよねぇ」

  富士子「大金を手に入れたら、またそれで新たな借金を作り出すんじゃない
      かと不安になって」
  町田 「不安ねぇ」

  富士子「亭主を信じられないなんて。信じられるのが、テレビのみのもんた
      だけだなんて…」

それでも富士子さん、何せ12年もそんなことが無かったものだから、全く熊が座っていることに気付かず、熊の足元に雑誌を置いても気付かずに拾い上げ、最後の手段で町田君が熊に雑誌を抱えさせても気付かずで、その雑誌を手にして机の上に積み上げます;

  町田 「(>_<)」

もうダメだと町田君が諦めたときに、部屋に戻ろうとしたおカミさんがUターンしてきて;

  富士子「町田君?」
  町田 「はい?」
  富士子「そっち(の雑誌)捨てて、あっち取っといて」
  町田 「はい(がっかり)」
  富士子「(再び)町田君?」
  町田 「はい!」
  富士子「逆だ、あっち捨てて、そっち取っといて」
  町田 「はい・・・」

そう言い残して自分の部屋へと戻ろうとする富士子さんは、「♪雨の横丁〜」なんて歌いながら、心なしか軽ぅ〜くスキップなんぞをしてみるのでした。町田君、思わず「よしっ」とガッツポーズ!(^^;)。そこに居間に下りてくる奈津子。

と、そこに2階の3号室の窓が開いて、上機嫌の大家さん他が顔を出し;

  清一 「町田君、大丈夫だから、上がっておいで!」

と、2階の様子も順調のようで、いい感じで進んでるようです。清一たちが顔を引っ込めたのを確認してから、奈津子は茶の間に出てきて;

  奈津子「さっき、言い忘れたんだけど、6号室にいるから」
  町田 「奈津子さん、明日大丈夫だと思いますよ」

と、町田君は先ほどのおカミさんの様子から判断した結果を奈津子に告げます。

  町田 「また明日。おやすみなさい」
  奈津子「おやすみなさい」
  町田 「あっ・・・」
  奈津子「?」
  町田 「グッナイ♪

町田君、性格が変わりつつあるような…(苦笑)。そして町田君も2階の宴会場へと上がっていきました。



誰も居ない居間。

そこに中庭から一組の男女がやってきます。女性が男性をリードし手招きし、部屋にあげます。女はここの長女 貴子、となると男は貴子と駆け落ちをした安西さん@元証券マン。堂々としている貴子に対して、賑やかな2階から人が降りてくるんじゃないかとおどおどしている安西は、貴子に叱責されながらも、下宿屋に入ってきます。冷蔵庫を覗いては、何か食べるものがないかと物色しますが、出てきたものは「魚肉ソーセージ」(^^;) 。「相変わらず進化のない食べ物ね。昭和30年台の味がするの、この金具は」とブツブツいいながらも安西に一つ渡し、自らも歯でビニールを引きちぎって食べ始めます。小ネタ*2-10

この二人、嵐の晩に激しい恋をして駆け落ちしたものの、安西が証券会社をクビになり、どうも上手く行ってないらしい。そもそもの原因は貴子の父にあるわけで;

  安西 「君のお父さんが長嶋監督に見えたんだ」

と、それまでは「ジャイアンツの川相選手のようにノーアウトランナー無しでも送りバント」をするタイプだったのが、満男と出合って自分は松井だと勘違いしてしまい、博打的な銘柄にばかり手を出してしまって、挙句に会社を首になったのだった。

そんな話をグチグチしているところに、2階の宴会部屋からキクさんが降りてきます。「貴ちゃ〜ん」「キクさ〜ん」と再会を喜ぶ二人に対し;

  キク 「おや、安西君、居たの?」

と、どう考えても歓迎されていない安西さん。そりゃぁ、この下宿屋では大家さんの愛娘をそそのかし、連れて行ったことになっているのだから、悪者ですね(お気の毒様)。

そこに同じく、清さんや瑛子ちゃんも降りてきて、同じく再会を懐かしんでます。皆、貴子と安西は大家さんに駆け落ちの許しを乞うために戻ってきたのだろうと思い込み、早速、大家さんと話しやすい空気を作ってやろうと考えるキクさんたち。

  キク 「となると、大家さんの機嫌が勝負というわけだ」
  清一 「でも、おばちゃんと話が弾まなかったから、ちょっと空回りしてる。
      今は町田君と二人きりだから」
  キク 「ああ、それはますます沈んでいくよ…」

このまま放っておいたらさらに沈んでいくことが予測されるため、再び盛り上げようと勢いよく3人は2階に上がっていったのでした。

問題は残された貴子と安西。実は、許しを乞うために戻ってきたのではなく、二人が別れたので、その報告をしに戻ってきたのだった。3年前、二人は激しい恋をし駆け落ちまでしたものの、その後、安西は会社をクビになり、新たに高利貸しの会社に就職。一方の貴子は安西が不在がちのため、ジム通い先で”三瓶”似の男と不倫。その仕返しとばかりに、安西も会社の女性と不倫という、もう、泥沼の展開です。こんな話、いきなり父親に話したらどうなることか分からない。まずは母親に話て間に入ってもらおうと、貴子は富士子の部屋へと向います。


残された安西のいる茶の間に、町田君がやってくる。実は町田君、もう少し前から、宴会場を追い出されて、下りてきていたのですが、貴子と安西のとんでもな内容の会話を聞いて、茶の間に出て行くことも出来ずに、階段のところでじっと待っていたのでした。

  町田 「あ、初めまして、町田です」
  安西 「初めまして、安西です」

礼儀正しく向かい合って二人はご挨拶(苦笑)。ふと、ちゃぶ台の上に散らかした魚肉ソーセージを食べた後を片付けようとするのを見て町田君;

  町田 「あ、僕やります」

ちゃぶ台の上のものを手に、台所に行って片付けてます;

  安西 「みなさんと一緒じゃないんですか?」
  町田 「ええ…。休憩してろと言われたんです。僕が冗談を言うと盛り下が
      るらしくて」
  安西 「わかるなぁ。僕も新入社員の頃は苦労したんですよ。上手い冗談が
      中々言えなくて」

そして、町田君、改めて;

  町田 「すみませんでした。聞いちゃったんですよ、そこで…」
  安西 「いや〜、参ったなぁ」
  町田 「すごいですねぇ。お二人の話を聞いていると、僕は羨ましいです」
  安西 「・・・。それ、変った反応ですね」
  町田 「僕にはできないと思いましたね。ビンビン生きているという感じが
      して」
  安西 「もしかして、おたくっぽい人ですか?パソコンがお友達みたいな…」
  町田 「どちらかというと、そうかなぁ。ヘビーな人間関係は苦手と言うか」
  安西 「似てるなぁ。いや、僕もね」

と、自分のことを語り始める安西。昔は証券会社に勤め、律儀な人生を歩んでいたが、大家さんの担当となり、嵐の晩に貴子と衝撃的な恋に落ちた;

  安西 「そしたら開いちゃったんですよ、僕の中のやんちゃな狼が!」
  町田 「やんちゃな狼?!」
  安西 「名前を付けたんです。どう呼んだらいいのか分からなくて」

安西は、自分達のような性格の人間には、「嵐の晩を待つことです」とアドバイス。そうすれば、町田も「びんびん」生きることができるんじゃないか・・・

  安西 「どうです、参考になりました?」
  町田 「・・・あ、聞いてなかった」
  安西 「・・・」
  町田 「イメージしてたんです、やんちゃな狼の」
  安西 「いいこと言ったのになぁ…(いじいじ)」

そこにキクさん,暎子ちゃん,清さんが降りてくる。キクさん(?)がポロリと貴子と安西の話をしてしまい、娘が帰ってきたということで、大屋さん、大喜びの状態らしい。一緒に2階で飲もうという話になり、戸惑う安西さん;

  安西 「どどどどど、どうしよう」

と、事情を知る町田の方ににじり寄り、じっと顔を見ます。そこで町田君:

  町田 「流れに任せましょう!付き合いますよ!

と、大手を振って2階に向かいます;

  安西 「ありがとう!・・・何だか頼りがいがあるなぁ」
  町田 「よく言われるんですよ!」

と、なぜか急に強気なキャラになった町田に続いて、安西も2階の宴会部屋へと向ったのでした。

そして、キクさん、暎子ちゃんもそれに続き、少し遅れて清さん、ソファーの周りの雑誌を簡単に片付け、そして、いつもと違う座った姿勢にある『木彫りの熊の置物』を元の這っている姿勢に戻したりして・・・(オイオイオイオイ)。


そこに富士子と貴子が奥の部屋から戻ってくる。いきなり家を飛び出していきなり戻ってきて…と、娘の行動に不満いっぱいの富士子。

清一から2階での話を聞かされ、最悪の展開になっていることを知った貴子。清一に2階の様子を見てくるように頼み、その一方で、母親がアテにならないのであれば、父親が大激怒したときのために、妹の奈津子のところに泊めてもらおうと、奈津子に電話する貴子。安西と別れたのでしばらく泊めて欲しいと言う貴子に対し、奈津子も彼氏と別れて住んでいる所を飛び出したらしい。横で貴子の電話の話を聞いていた富士子は思わず貴子の電話をとりあげ、電話に出ると;

  奈津子「お母さん??!!!(@o@)」
  富士子「そうです、お母さんです…」

と、奈津子の驚いた声が電話を飛び越えて、直接、下宿屋に響いた(笑)。奈津子は下宿屋の空き部屋に潜んでいたが携帯の電波の状態が悪く、部屋の外=広間の方にまで出てきていたのだ。振り返った奈津子と富士子は、同じく振り向いた奈津子と顔を合わせる。

  貴子 「おめー、どこにいたんだよ!コントじゃないんだから!!!」

お互い家を飛び出していた姉妹が、こんな形で実家で顔を合わせるなどと、コントでも有り得ないだろうというものだが、これはコメディなのよねん(笑)。戻ってきた娘二人を前に、厳しい言葉を放つ富士子であったが、もしかしたらこの夏に奈津子が帰ってくるような、そんな気がしていたという富士子は、奈津子のために買っておいたという『お肉屋さんのマヨネーズ』を冷蔵庫から取り出した;

  富士子「思う存分、なめなさい」

その母の言葉に、大粒の涙をこぼす奈津子。あまりに涙を流しすぎて、メイクが崩れて目の周りが真っ黒になったりして…(笑)。さらにそこに、安西から真相を聞いた大家さんが怒り心頭で降りてきて、広間に全員集合です。中央にある『ちゃぶ台』をどけさせて、大屋さん、安西さんを背負い投げ。

  安西 「何でどけるんだ!」
  暎子 「見たかったから」

ナイスコンビネーションです。さらに大家さんは大暴れを続けようとしますが、清さんが逆に大屋さんを背負い投げして、小休止。一方;

  富士子「奈津子も帰ってきているの」

と、陰に隠れていた奈津子も、恐くてブルンブルンと首を横に振りながらも、満男の前に顔を出す。大騒ぎして「二度とこの家の敷居は跨がない」と家を出て行ったくせにと言う満男に;

  奈津子「予定は未定だ!

と奈津子ちゃんの名言その1(笑)。

全員が奈津子や貴子の味方をしている中で、素直になれない大家さんは、延々と自らの思いをぶちまけます;

  満男 「しこってるのよ。しこっちゃってるのよ」
     「娘二人が出て行って、俺も葛藤したんだよ、娘だ、でも、娘じゃない」

挙句には「俺の気持ちはどうなっちゃうの」と座布団を「バカー!バカー!!バカー!!!」と叫びながら部屋中に投げ飛ばし、茶の間に大の字になってしまいます。小ネタ*2-11

その父親に、改めて、奈津子も貴子も父親にこれまでの経緯を話し、土下座してこの家において欲しいと頼み込みます;

  奈津子「後悔はしてないよ。でも、これからどうしたらいいのか分からない
      の。それが分かるまで生まれたこの家で暮らしたい」
  貴子 「お父さん、ごめんなさい。何を謝るかというと、お、親に対しては、
      幸せになることが一番の親孝行なのに、それを果たせなかった事…」

その謝罪を聞いても、満男は娘達には自分と同じように時間を無駄に費やして欲しくは無かったのに、と大激怒の大家さん。

そういう重い空気が下宿屋中を支配している中で、唐突に町田君;

  町田 「あの・・・それは違うんじゃないでしょうか?

  一同 「?????」

  町田 「もし、なっちゃんという長編小説があったら・・・」
  一同 「???????????」
  町田 「その第1章はとても面白いんじゃないでしょうかねぇ?」
  一同 「・・・」

  町田 「中年男を捕まえ、パトロンにするところなんて笑えますよ。それが
      恋愛に進展するプロセスは心理的に興味深いです。そして、華やか
      なファッション業界の光と影。これはちょっとした企業サスペンス
      の趣ですねぇ。それを奈津子さんはたった一人で経験したんです。
      もちろん、(貴子たち)お二人もねぇ、ものすごい恋愛をされてます。
      今が幸せか不幸かはわかりませんが、この3人のみなさんは、とて
      も貴重な体験をされたんではないでしょうか?僕はとっても羨まし
      いです(^o^)」

周囲の空気を省みず、町田は持論を展開しています(^^;);

  一同 「・・・・・」
  満男 「何だか空気が変わっちゃったなぁ、おい・・・」

妙な町田の発言に、怒る気力が失せてしまった大屋さん。「飲みなおしてくる!」と下宿屋を飛び出していきました。

  暎子 「チャンスなんじゃない?」

このタイミングで酌でもしながら和解することを貴子と奈津子に勧める清さんたち。奈津子と貴子は、清さん、キクさん、暎子ちゃんにフォローを求め、一緒に満男さんのいる店に安西とともに向ったのでした。もちろん、町田君は空気を淀ませるに決っているので、来ちゃダメってことで、下宿屋に居残りですが・・・(^^;)。

おカミさんと二人っきりとなった町田君。おカミさんは町田に礼を言います。

  富士子「町田君、ありがとう。あの人、怒っているのが馬鹿馬鹿しくなった
      のよ。話の内容は何だかよく分からなかったけど、いい話だったよ
      うな気はする」
  町田 「なら、いいんですけど」

そして、夜に備えて(^^;)、シャワーでも浴びようとする富士子だったが、ふと、木彫りの熊に目が止まった。先ほど座っていたはずの熊が、這っているではないか!振り返って熊を見た町田もその姿に絶句・・・。

  富士子「寝るわ。町田君、年を取るっていやーね。
      ないはずのものが見えるの・・・」

そう言って、部屋へと戻っていく富士子であった・・・。

 

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