■ 第一幕

 

7月のとある日、一軒の下宿屋『日ノ出荘』に、うら若き男性(えっ?)が、なぜか裏口(というか中庭?何故に玄関からじゃないのだろう?)からやってくる。長袖の白シャツというシンプルな格好(*^^*)。手には小さめのボストンバッグが1つ。

  町田 「すみませーん」
  「・・・」
  町田 「すみませーん」
  「・・・」
  町田 「また来ます」

男が立ち去ろうとした瞬間、下宿屋のトイレから、いかにも冴えない中年男性(失礼な表現かしらんm(_ _)m)が、便所のスリッパを茶の間に脱ぎ散らかし、ズボンのチャックを閉めながら大慌てで飛び出してくる。どうやらその中年男性は、その男がやってくるのを待ち構えていた模様。

  満男 「町田君?!町田君でしょ?大家の小暮です」

男の名は”町田”、この中年男性が営む下宿屋に引っ越してきた新入り君。そして、トイレから出てきた男性はこの家の大家さんである小暮満男。町田は満男に”取り込み中”だったところにやってきて、すみませんと謝ると;

  満男 「それを言うなら、お汲み取りだな
  町田 「?????・・・上手いですね

と、とぼけたジョークに、間の抜けた返事をする町田君。どっちもどっち、先が思いやられます。そうして満男は町田を下宿屋の中に招き入れます。

  町田 「すみません、予定より早く着いちゃって…」
  満男 「荷物はそれだけ?」
  町田 「あ、他は後からきます。予定が変わって、僕だけ先に…」

町田と大家さんは初対面。下見に来たとき大家さんは不在でした。家に上がって、ソファーに静かに座る町田君。

  満男 「文学青年って感じだねぇ。君、太宰治に似てるねぇ…
  町田 「照れるなぁ」
  満男 「ホント、真面目だねぇ。さすが太宰治!」

さらに;

  満男 「それにしても、今時珍しいねぇ。こんな下宿屋にやってくるなんて」
  町田 「好きなんですよね、こういう雰囲気が」

下宿屋の梁なんかを触りながら、こういう下宿屋の匂いが好きだと語りつづける町田君。一方、大家さんは台所で麦茶とビールの準備をしながら、町田に;

  満男 「あ、そこ片してくれる?」(「片す」が分かんないんだな)
  町田 「あ、はい」

ちゃぶ台の上に散らかった新聞等を片付ける町田に、満男はこの下宿宿について話します。自分は父親の跡をついで下宿屋の大家をやっているが、今時の学生は親の仕送りでワンルームマンションに入ったりして、この下宿屋は8室あるうちの3室しか埋まってない、と;

  満男 「だから、大家やめて大リーグに行こうかと思って…」
  町田 「へぇ〜」(←素直に感心)
  満男 「・・・冗談だよ。いるだろ、ピッチャーで”大家”
      (興味なかったらわかんないわ、これは)

などと、町田君、とことんつまらないシャレに付き合わされてます。

  満男 「あのね、一つ言っておくけど、俺、結構、冗談言うのよ。大家なん
      てしがない商売やってるから、一日中そういうことばっかり考えて
      るの。面白くても面白くなくても、とりあえず笑ってくれるかな?
      (町田に)冗談とかあまり言わないの?」
  町田 「あまり、言わないですねぇ〜
  満男 「ちょっとぐらい入った方がいいな。こういう下宿屋ではコミュニケ
      ーションが大事だから」
  町田 「はい」
  満男 「真面目だねぇ。さすが太宰治!」

大家さんはビールや麦茶を冷蔵庫から出してくれましたが;

  町田 「あの…、僕、ビールは」
  満男 「ビールを飲むのは俺。君、麦茶
  町田 「あれ・・・」

「あ〜っ」と美味そうにビールを飲む大家さんに、町田も「あ〜っ」とつきあいつつ(^^;) 小ネタ*1-1、大家さんは本題。引出しから契約書を出し、一方で家賃2月分の前払いを町田君に申し出ます;

  町田 「でも、おかみさんからは何も…」
  満男 「あいつ、抜けてんだよね」
  町田 「はぁ。正直、きついんですよね。生活費の足しにしようと思っていたので…」
  満男 「無いの?困っちゃうなぁ。こういうことは言いたくないんだけど、
      決まりだからなぁ…」
  町田 「はぁ・・・」
不満そうな満男の顔を見て、仕方なく町田がズボンのポケットから封筒を取り出すやいなや、その封筒を取り上げる満男;

  町田 「あっ!」
  満男 「あるんじゃない、冷や冷やしちゃったよ、大家さん」
  町田 「あの…領収書は頂けるんですかね?予定外の出費なもので…」
  満男 「大家と言えば親も同然、店子と言えば子も同然。
      杓子定規はやめようよ」
  町田 「はぁ…」

なんて調子よく言いながら満男は、町田が契約書を読みサインしている間に、「俺、出かけるから」と、そそくさと外出の準備。競馬新聞を片手にダイヤル式の黒電話で”よっちゃん”に電話し、『ずっと目をつけてたんだよ、ハシリターガル』などと言ってます。電話の相手に話して受話器を置くと、「それ(契約書)、よく読んどいて!」と町田君をおいてきぼりにして下宿屋から飛び出していきました。

  町田 「・・・」

直後、再び、玄関の扉が開いて;

  満男 「あ、あと、ビール、片付けておいてくれる?あいつ、俺が昼間から
      ビール飲んでると、機嫌が悪いんだよ。君も、大屋さんの夫婦喧嘩、
      見たくないだろ?」

言う事だけ言って、再び飛び出して行きました。

  町田 「???

頭の中が「?」マークでいっぱいの町田君でしたが、仕方なく、ビールと麦茶の片づけをしに台所に向います。



そこに、「♪燃焼系〜」のCMソングを歌いながら、鴨居で懸垂する筋肉自慢のキクさん@グレーの半そでTシャツにグリーンのジャージ姿が風呂場から出てきます。町田君はきちんと挨拶をしようと待ち構えますが、そこに裏口からおカミさんも買い物から戻ってきたため、大家さんに言われたビールを先に何とかしなくては、と町田君、台所の奥に引っ込んじゃいます。

お肉屋さんで瓶入りのマヨネーズを買ってきたというおかみさん、キクさんに蓋が硬いことで有名なこの『お肉屋さんのマヨネーズ』の瓶を開けて欲しいと頼みます。買い物篭から取り出したマヨネーズの瓶をキクさんに渡して、台所に向おうとしたときに廊下に放り出されたトイレのスリッパを目にします;

  富士子「ちょっと、何よこのスリッパ!!」
  キク 「大家さんじゃない?」
  富士子「何、大家さん、便所のスリッパこんなところで脱ぐの?」
  キク 「前も俺が直しておいたよ」
  富士子「あら、そう・・・それはどうもありがとう」

上京して24年間この下宿屋に居続けるキクさんは工事現場をリストラされ、家賃も1年半溜まっているという、半ば居候状態の下宿人。但し、工事現場で働いていただけあって、たくましい筋肉を持っています。が、その筋肉をもってしもても、『お肉屋さんのマヨネーズ』はなかなか開かないよぉ〜;

  富士子「何、まだちょっと開かないの?頼りにならない筋肉ね」
  キク 「でも、これ、本当に固いっすよ。輪ゴム無いですかね?」
  富士子「そんなので開くなら、私がやってるわよ!」
  キク 「そうっすか?」
  富士子「ソースじゃないわよ、マヨネーズよ!!」
  キク 「家計簿つけるたびに機嫌が悪いっすね…」
  富士子「貸して!」

と、おカミさんが自ら開けようと、輪ゴムを取りに台所の奥に向ったところで、ビール片手に台所内をうろうろしていた町田君と鉢合わせ(まだビールを持ってたんかい!)。びっくりするおカミさんと、慌てておカミさんを置いて玄関を飛び出していくキクさん(11日昼の公演では、玄関の扉が勢いで外れてしまうハプニング有り。「24年間居るんだから大丈夫」と、キクさん自らフォロー(^^;))。すぐに下宿屋に戻ってきて、靴べら片手に町田君に立ち向かいます。

  町田 「町田です」
  キク 「住所は聞いてないよ」
  町田 「・・・」(大阪公演では「小田急線でしょ?」の台詞有り)
     (ああ、これ、最初は意味がわからなかったよぉ。確かに地方の人間
      にはわかんない部分ね)

おカミさんは、「町田」の名前を聞いて「町田君?」、顔をパタパタ触り「あ、町田君!」とようやく合点がいった模様。

  キク 「誰?」
  富士子「紹介するわ、こんどここに越してきた新しい下宿人の町田君」
  町田 「町田です」
  富士子「こちらキクさん。危険を察知すると人を見捨てて、いち早く逃げる
      薄情な人」
  キク 「戦ったじゃない、靴ベラでさ」

  町田 「そんなに硬いんですか、そのマヨネーズ?」
  キク 「前代未聞の硬さだね」
  町田 「ちょっと貸してもらえますか?あの、先ほどから見ていると、キク
      さんはこう…引っ張るように開けてたじゃないですか?そうじゃな
      くて、押し込むようにあければ」
  キク 「偶然でもあけちゃったら、俺の立つ瀬が…」

と、キクさんが警戒する中、町田がグっと瓶の蓋を押し込んで、くるっと回してみると;

  町田 「あ、開いちゃった
  キク 「(@o@)?!?!??!?!」
  富士子「ちょっとどうやったの?」
  町田 「ちょっとしたコツですよ。押し込むようにしてあければ…」
  富士子「ちょっとやってみていい?」
  町田 「はい」

そして、マヨネーズ瓶を町田から受け取って富士子もやってみると;

  富士子「押し込むように、まわす!」

と、綺麗に富士子さんの力でも瓶の蓋が開いちゃったのでした。

  富士子「すごいわ町田さん、余程、キクさんより当てになる。召し上がれ」

と、富士子に麦茶を差し出され、片膝ついて受け取る町田君(^^;)。

  町田 「頂きます」

と、麦茶を飲む町田に、突っかかるキクさん;

  キク 「あのね、君と僕とは今会ったばかりだよね」
  町田 「?」
  キク 「第一印象、ものすご〜く悪いよ。こういうエピソードは後に引く感
      じがするな」
  町田 「開けなきゃよかった」
  キク 「大体、どうしていきなり台所から出てきたんだよ。しかもビールな
      んか持っちゃってさ。図々しいにもほどがある」
  町田 「いや、これは大家さんが」
  キク 「大家さんがだしたの?うそだぁ」
  富士子「飲んだの、あの人もビールを」
  町田 「はい・・・い、いいえ。ぼ、僕が飲みました。あっ、それからこの
      契約書も」

と、町田君は自らのズボンのポケットから先ほどの契約書を取り出し、富士子に渡します。

  富士子「あの人がこの契約書を出して、あなたに書かせたの?」
  町田 「はい」
  富士子「ちょっときくさん、驚いたよ、あの人が仕事をしたよ」
  キク 「まだ頭の片隅には覚えていたんだね、自分が大家だってこと」
  町田 「忘れっぽいんですか?」
  キク 「驚くほど仕事をしないんだよ!」

キクさんが言うには、大家さんは仕事をしないだけでなく、博打にも手を出す。競馬、競輪、競艇等々何でもやるという、ある意味、非常に珍しいタイプの人間なのだ。

  キク 「娘が二人いるんだけどさ、休みのたびに娘を連れて出かけるんだ。
      子煩悩な親だなぁ…と思ってたら」
  富士子「遊園地って言っちゃぁ、競輪場、動物園と言っちゃぁ、競馬場。
      おかげで、上の娘(こ)は、小学校の遠足で行くまで、動物園には馬しか
      居ないと思ってたのよ」
  キク 「娘が二人いるんだけど、『1富士 2鷹 3なすび』で、おばちゃんが
      富士子で、長女が貴子、次女が、"なす子"っていうのはあんまりだから
      奈津子って」

そうして話題は娘二人について。まず、長女の貴子は、大家さんに大損させた株屋と駆け落ちしてしまってます。とある嵐の夜に、貴子の部屋に株屋を招き入れ、恋に落ちて、そのまま突っ走ってしまったのだ。

  キク 「貴子ちゃんの方が積極的だったよな」
  富士子「もう、29だったからね」
  キク 「『いやーん、やめてくださいませ』・・・株屋の悲鳴が聞こえたね」

  町田 「その後はお幸せに…?」
  富士子「知らないわよ、3年間電話一本、よこさないんだから」

一方の次女の奈津子も、ずっと援助交際の真似事ようなことをやって、その後、パトロンの中年男性を捕まえて、やっぱり家を出て行ってしまってます。

  富士子「『ビッグになるんだ〜』って言って、皿やら鍋やらを巻き散らかし
      て出て行ったの」

  町田 「その後は成功して?」
  富士子「知らないわよ、5年間電話一本よこさないんだから」

  町田 「何だか、悲惨なご家庭ですね・・・
  富士子「ううううう・・・(号泣)」

町田の、何気ないつもりの一言で、おカミさん、大泣きです。

  キク 「おいおい、おカミさん、島倉千代子通り越して、淡谷のり子になっ
      ちゃったじゃないか!」
  町田 「いや・・・考えてみればとても楽しいご家庭で…」
  キク 「遅いよ!」
  町田 「すみません」
  富士子「キクさん、この下宿屋に何か明るい話題は無いの?」
  キク 「あるかよ!」
  富士子「何か一つぐらいあるでしょう?このままじゃ、町田君に印象が悪す
      ぎるわ」
  キク 「(含み笑いをして)熊・・・」
  町田 「熊?」
  キク 「ははは。俺しか知らない秘密…」

「やめてよ」というおカミさんを無視して、居間のサイドボードの上に置いてある『熊の彫り物』(口に鮭をくわえているどこのご家庭にも1つはあるというアレです)にまつわるエピソードについて話をしはじめます。

  キク 「この熊が夜になると座って甘えるんだ。
      そしたら次の日の朝、おカミさんの機嫌がいいんだよ!」
  町田 「! ああ、ああ、ああ・・・アイヌの呪いとか!」

と、ピントのボケた発言をする町田君。キクさん、ガックリ。

  キク 「百歩譲って、座って甘えるまでをアイヌの呪いとしよう!おカミさ
      んの機嫌がよくなるのは何なんだ?!」
  町田 「いや、そういう呪いもあるのかと思って…」
  キク 「無いよ!(怒)」
  町田 「!」
  キク 「考えてみろよ、夫婦の機微をよ!」
  町田 「・・・(*^^*) ???ああ、まぁ、そういうことなんですかねぇ…。
      ・・・愛のサイン!?!」(きゃっ(*^^*))
  キク 「正解!」
  町田 「何だ、仲がいいんじゃないですか!」
  富士子「誤解しないでね、町田君、あの熊も14年間座って甘えてないんだか
      ら。でも、戻しておいてくれる?この先、一度ぐらい奇跡が起きる
      かもしれないから」
  町田 「はい・・・」

キクさんは、それでも、大屋さんは今回のように町田君に契約書を書かせたりといった大家としての仕事もし始め、もしかしたら、再び熊が甘える日もくるんじゃないかと、冷やかしてますが、おカミさんは話半分程度にしか聞いてない感じです。



そこに続いて第2の下宿人、暎子ちゃんが帰ってきます。プール帰りの暎子ちゃん、賑々しく、プールでの様子をみんなに話始めます。

  暎子 「泳いでも泳いでも人で、芋を洗うようにとはあのことだね。焼いて
      たら焼いてたで、声を掛けられて、あはははは・・・・」

と、話す暎子ちゃんの前で、じっと立っている町田君。黙ってお互い、顔を付き合わせる格好になってます。

  暎子 「・・・。誰?」

  富士子「前に話したでしょ、新しい下宿人の町田君」
  町田 「町田です」
  暎子 「ああ、ああ、ああ、高梨暎子と申します。どうぞよろしく。どうも
      どうも…」

で、暎子ちゃんの口から次に出て来た言葉は;

  暎子 「AB型?
  町田 「はい」
  暎子 「うお座だ〜
      (『みずがめ座』だったときもあったのよね)
  町田 「何で分かるんですか!!!(@o@)」

通り過ぎていった男の数だけデータが詰まっているという暎子ちゃん、占い師のように町田君の血液型&星座を言い当てました。ちなみに、過去のデータを鑑みるに、うお座のAB型は「災いを呼ぶ」タイプらしい。

過去に篠原という男がこの下宿屋にいて、シーズンに2回しか喋らない、ペットボトルに金魚を2匹買ってるような人間だったが、暎子ちゃんのデータ-ベースと着き合わせると、町田はそれと似たところがあるらしい(^^;)。さらに、貴子や奈津子が出て行ったのも、篠原が居たときだということで、町田君、最初から偏見を持って見られてます。ちなみに篠原は、暎子ちゃんにチョッカイを出して、蹴り入れられてこの下宿屋を出て行ったらしい。

  キク 「気をつけた方がいいよ。暎子ちゃんキックボクシング習ってるから」

  キク 「でもよかった、暎子ちゃんもこいつの第一印象が悪くてさ」
  暎子 「えっ、私、悪くないよ。よく分かんない人好きだしさ」
  町田 「・・・(^^)」
  キク 「でも、さっき、あいつに絡んでたじゃない」
  暎子 「絡んでたんじゃないの、構ってたの!どうしてわかんないかなぁ、
      そういう機微がさ!そんなんだから、24年間も下宿人やってんじゃ
      ないの?」
  町田 「あのぉ〜、高梨さんは、格闘家でいらっしゃるんですか?」
  暎子 「格闘家、っつーか、人生の格闘家?!」
  町田 「・・・」
  暎子 「まぁ、その辺は謎のままにしとこうかね。その方がさ、楽しいから」
  町田 「はぁ…」

と、よく分かったような分かんないような顔をしている町田君。そんな町田君はおいておいて;

  暎子 「それじゃぁ、ちょっくら顔作ってくるわ」
  町田 「?!」
  富士子「あいよ、頑張って!」
  町田 「顔?」

ここで暎子ちゃんは、一旦、自分の部屋に帰っていきます。と、その前に;

  暎子 「おばちゃん、おっちゃんにお小遣いあげた?」

暎子ちゃんは、ここに帰ってくる途中、大金持ってる大家さんとすれ違ったことを告げます。金を手にすりゃ、すぐに博打に費やしてしまうのが大家さん、最近ではたばこ銭程度しかあげてない。そんな大屋さんが、トランプのように札束広げて、うはうは言いながら駅前に走っていったと。しかも、暎子ちゃんが声を掛けても全く気づかないような興奮状態で・・・;

  町田 「!!!」

誰もそんなお金は渡してないと言いますが、町田君だけは心穏やかではありません(^^;)。すぐにでもおカミさんにそのことを話そうとする町田君ですが、日ノ出荘の面々の会話に割り込もうとしても話に割り込むこともできず、ただただオドオド。

まさか、もう1人の下宿人である清さんが貸したのでは?とおカミさん&キクさんが思ったところに、その第3の下宿人 中年の貫禄ある男性 清さん@なぜかアロハシャツ姿が登場。中庭からアイス片手にやってきます。

大慌てで清さんに確認しようとするおカミさん;

  清一 「どうした、ピクニックして?」
  一同 「???」
  清一 「あ、パニックか・・・あはははは(豪快な笑い)」
  町田 「?????」

なんていうつまんない冗談が繰り広げられている横で、黙って聞いていた町田君。しばらく間を置いてから『あっ、なるほど、そうかそうか…』という感じで先ほどの清さんのギャグを理解しとります(おせーよ)。さらにパニック状態で話を続けるおカミさんに;

  清一 「まぁ、おばちゃん、落ち着けよ。『落ち着け』といえば、俺は、鮭
      がいいな。・・・あ、それはお茶漬けか!」
  町田 「?????」

と、ここでも町田君、一瞬、きょとんとしてましたが、『あっ、落ち着けとお茶漬けと、ツケがあって、そうかそうか…』ってな感じで陰でこっそり理解しております(笑)。

と、そんな町田君の鈍さはおいておいて、とにかく、清さんもお金は貸してないと言ってます。

  清一 「だって、大家さんに金を貸したら返ってこねーもん」

その言葉を聞いて、ますます不安が膨らんでいく町田君。

  町田 「あの・・・」

と、ようやく大家さんに渡した家賃の話をしようとして手を挙げた町田君でしたが、おカミさんに清さんへの自己紹介をして欲しがっているのかと勘違いされ、ここでも言いそびれてしまいます。おカミさんから、清一さんこと清さんを紹介され;

  町田 「あの、清さんっておっしゃるんですか」
  清一 「相澤清一、よろしく」
  町田 「あの、何となく脱臭効果がありそうな名前ですね。
      活性炭・・・かっ清さん・・・清さん
  一同 「?」

清さんに睨まれて、おカミさんやキクさんのいる茶の間の反対サイドに一目散に逃げる町田君。

  町田 「あの、ジョークがお好きのようだったので、チャレンジしてみたん
      ですけど…」
  清一 「俺、こんなレベル?
  キク 「全然、清さんの方が上!」
  清一 「だよな・・・感じ悪い」
  町田 「・・・」

町田君、黙って突っ立っていることしかできません。そんな町田君の前で、舌を鳴らして音を出し、ピンポンの真似事をし始めるキクさんと清さん。息の合ったところを見せます。その後、町田君も参加して、清さんとラリーをしようとしますが、ジェスチャーと音とがチグハグで、清さん、完全にやる気なし 小ネタ*1-2

  清一 「飛んでけ〜」

と、ピンポン球を舞台の方に向って放り投げるジェスチャーをする清さん。キクさんだけでなく、清さんまでご機嫌斜めになってしまい、おかみさんにまで顔を背けられ、完全に凹む町田君。

  町田 「・・・失敗だ」

しょぼんとして、仕方なくちゃぶ台の周りに座る町田君でした。しかも、おカミさんがみんなにトロロ作りを頼みますが、キクさんと清さんがすり鉢とスリコギを受け取り、町田君を無視して居間の真中で作業をし始めます。寂しい気持ちを味わいつつも、おカミさんに、大家さんに渡した家賃の話をするには今しかないと、町田君は意を決して(と言うほどのものではないが)台所で昼食を作っているおカミさんのところに駆け込みます 小ネタ*1-3

  町田 「あの!お話が!」
  富士子「好き嫌いがあるなら最初に言っておいてよね。後で残されたら嫌だ
      から」
  町田 「あ、じゃぁ、トマトを」
  富士子「トマトね」
  町田 「あ、いや、そうじゃなくて」

そう、そうじゃないんだよぉ〜。とっとと話の続きをしようとするものの、清さんが白々しく自分のことを話しているであろう会話が耳に飛び込んできます。台所で、陰から二人の会話に聞き耳を立て、様子を伺ってる町田君。

  清一 「キクちゃんよぉ、下宿屋って気の合わないやつもいるよなぁ。でも、
      心の扉を開けて、歩み寄る気持ちが大事なんだよな。近づく小さな
      勇気と、前に進む一歩が大切なんだけどなぁ〜」

なんて清さんにドスの利いた声で言われた日には、町田君、今が下宿人の話の中に入るチャンスとばかりに、そそくさと”すり鉢”の輪に加わり、すり鉢を押さえてトロロ作りに参加します。小ネタ*1-4

  清一 「はははは(笑)」
  町田 「(笑)」

そうして、トロロをする3人は、ここでようやく普通に会話をし始めます。

  清一 「仕事、何やってるの?」
  町田 「今は何も。そのうちアルバイトでも探そうと思ってます」
  清一 「へぇ〜」

再び、一心不乱にトロロをする3人。トロロをすりながら;

  キク 「清さん、何やってると思う」
  町田 「さぁ、ちょっと想像できないですね」

町田君が想像できないのも無理は無く、誰も何をやってるか知らないという。だが、たまに夜、出掛けるらしいく、羽振りだけはとてもいいらしい。だから、ホステスでもやってるんじゃないかという噂もあるぐらい。・・・と振られて、清さん、トロロをする手を止めて;

  清一 「『ドンペリ入りま〜す』・・・わははははは(笑)」
  町田 「・・・。あはははははははははは」

町田君、そのギャグに対し、”必死に”笑ってます。さらに;

  キク 「コミック系のキャバクラとか」
  清一 「『いや〜ん、清子でぇ〜す』」・・・わははははは(笑)
  町田 「・・・。あはははははははははは」

などと冗談を言い合いながら、トロロをする作業は続きます;

  キク 「何か言ってみろよ。何でもやってくれるから」
  町田 「あ、いいのを思いつきましたよ。女王様?!」
  清一 「???・・・・・・できっかよ(--;)」

清さん、さすがに女王様には反応できず、またまたいやーな空気に。清さんもキクさんもすり鉢を放り出し、仕方なく町田君が1人ですりすりしています(いじけ具合がまた何とも可愛いというか…(*^^*))。

そこで、ふと、大家さんが金庫からお金を持ち出したのではないかと不安になるおカミさん。奥においてある金庫を見に部屋に向おう・・・というところで、ようやく町田君の発言;

  町田 「あのぉ〜、それ僕が渡したお金だと思うんですけど…」
  キク 「何が?」
  町田 「大家さんのトランプ」
  富士子「お金を渡したのあの人に?」
  町田 「いや、家賃の前払いだと言われて」
  富士子「いくら?」
  町田 「2か月分」
  富士子「嘘!!!私言わなかったよ」
  町田 「僕もそう言ったんですけど、おカミさんが忘れたんだと言われて…」

ようやく言えたのもつかの間、町田君は逆にみんなから責められてます;

  キク 「何ですぐに言わなかったんだよ!!!」
  町田 「いや、何度もチャレンジはしてたんですけど

今月の生活をどうしようか、いや、それ以前に。借金がまたふくらんでしまうかのうせいもある…どんどんおカミさんの不安は膨らんでいきます。

  キク 「きみ、大変なことをしてくれたな!何で大家に家賃払うの!!」
  町田 「それ、当たり前のことじゃないですか!」
  富士子「それにあの人は大家じゃないの!」
  町田 「???」

と、町田君にとっては当然のことでも、この下宿屋にとっては、大家さんにお金を渡す事はタブー中のタブーなのだ。しかも;

  町田 「たぶん、競馬だと思いますよ。電話で、借金取り返すとか言ってま
      したから」
  清一 「よっちゃんだ」
  キク 「よっちゃんだ」
  町田 「その人だ!」

と大家さんが「よっちゃん」のところに言ったことが判明すると、さぁ、大変。おカミさん曰く、よっちゃんというのは駅前にいるノミ屋で、商店街の人間もみんなカモにされているような人だったのです。しかも、風間杜夫似で、腹巻に札束を突っ込んでベンツを乗り回しているような人らしい。

  町田 「ちょっと待って下さい、イメージします」
  キク 「いいよ、イメージしなくても」

2階の部屋から瑛子ちゃんも降りてきて、さらに混乱は拡大。このままじゃぁ、大家さんがよっちゃんに身包み剥がされちゃうと、清さんはバッド、キクさんは靴べら、暎子ちゃんは救急箱、おカミさんはすりこぎを持ってよっちゃんの所に向かおうとします。

すると空が一転にわかにかき曇ってきて・・・。そして、町田君も:

  町田 「僕も行きます!そのよっちゃんっていう人にも会ってみたいし」
  キク 「君は最前列に立って戦えよ!君が原因なんだから!」
  暎子 「あんたも災いを呼ぶタイプかもね。多いんだよ、うお座のAB型。
      ・・・人生の雨男つーの?

町田君もなぜか足踏みミシンの上に置かれた物差し(30cm竹製のやつ?)を手に、後を追おうとします。皆は玄関から出て行き、町田君は玄関から出ようとする前に;

  町田 「僕もすぐにいきます!」

と、中庭に脱いだ靴を取ろうとしたところで、帰ってきた大家さんと鉢合わせ。

  町田 「おかみさーん、キクさーん」(絶叫)

これから駆けつけようとした肝心の張本人の大家さんが町田君の目の前にいるではないですか。小さな紙袋を手に中庭に現れた大家さん。大家さんは何か町田君だけに話したいことがあるようです;

  満男 「君に話したいことがあるんだ」
  町田 「僕だってありますよ!家賃なんて嘘だったじゃないですか!」
  満男 「まぁ、いいから俺の話を聞いてくれ!」

が、町田君にしたって話したいことは山ほどあります。渡した家賃を競馬につぎ込むのはあんまりだと怒って話す町田君に、何か嬉しげな大家さん。冷蔵庫からビールを取り出し、機嫌よくちゃぶ台の前で飲み始めます;

  満男 「俺ね、この年までいいことが一つも無かったの」

学生時代の友人はどんどん会社で偉くなっていく、屋根の上からおしっこの飛ばしあいっこをした下宿人たちもどんどん偉くなっていく。一方、自分は、父親が株でもうけた下宿屋をつぎ、シガナイ大家をやっているという現状を見たとき、自分も偉くなろうと思った大家さん。あれこれやってみたが、今まで何をやってもダメだったと過去を振り返って語り始めます。最初は『都電最中』。飲み屋で知り合ったお菓子屋(?)と一緒に、都電沿線で最中を売り出した。

  満男 「都電に乗ると、最中をお土産に買いたくなるよね?」
  町田 「いや、どうかな…(汗)」

だが、まるで売れない『都電最中』。次にチャレンジしたのが都電昆布;

  満男 「都電に乗ると、昆布を食べたくなるよね?」
  町田 「いや、どうかな…(汗)」   満男 「都昆布と間違えたりしてさ」

だがそれも失敗し、借金を重ねるだけの結果に。それでも;

  満男 「でもね、俺、信じてたの、この年になるまで。人間、自分のことを
      信じないと生きられないよね?」
  町田 「はぁ…」
  満男 「そこに君がやってきたのよ。君が早く到着するという電話を、たま
      たま俺がとって」

と、話が本題に入るか、ということろで、よっちゃんの所に行こうとしていたキクさんが町田君が来るのが遅いと迎えにやってきます。茶の間に大家さんがいるのに気づいたキクさん、慌てて外に待っているおカミさん&その他下宿人を呼び戻します。

  満男 「あっ」
  富士子「あんた!!」

話があるという大家さんの言葉など聞く耳持たず、大家さんと対峙するおカミさん。清さんたちと一致団結、大家さんを中庭に追いやり;

  富士子「追い出しちゃって」
  暎子 「あいよ!」

と、部屋に上がる扉という扉を閉めてしまいます。おまけにカーテンまで閉めちゃって(いや〜、下宿人の皆様、ナイスコンビネーションです)。

  町田 「何か話があるんじゃないですか?」

と、大家さんをフォローするコメントをする町田君でしたが、中庭に追い出された大家さん、中庭に置かれたハシゴを使い、2階の部屋の窓から日の出荘に侵入。それに気づいた下宿人たちは、大家さんを捕まえるために2階へと上がっていき、大追走劇(←オーバー)が始まります。

おカミさんと二人っきりになった町田君;

  富士子「また、からっけつ…あの人、お金が無くなって心細くなると、また
      人にお金を借りてキンツバを買って、私の気をひこうとするの。ま、
      そこがかわいっちゃぁ、かわいんだけどさ。あれ、あの歌、何だっ
      け…?女房を泣かせる芸人の歌…」
  町田 「『浪速恋しぐれ』ですか?」
  富士子「♪芸のためなら〜」

と、雰囲気出して歌い始めたおカミさん小ネタ*1-5。そこに2階からこっそり大家さんが降りてきて、こっそり町田君の袖を引っ張って影で話をしようとしますが;

  富士子「いたー!!!!」

と、おカミさんに発見されたため、今度はおカミさんも加わっての再び大家さんの逃走スタートです。町田君だけは、茶の間に取り残されて、その様子を見てます。そして、散々、逃げ回った後に、息を切らせながら台所の奥から現れた大家さん;

  満男 「町田君、君に話があるんだ…」
  町田 「話なら、おカミさんとした方が…」
  満男 「君が運を運んできてくれたんだ!返すよ!」

そう言って、ポケットからお金を取り出し、町田君に渡します;

  町田 「競馬、やらなかったんですか?」
  満男 「俺にも運が回ってきたんだよ」

町田が下宿にやってきてから運が巡ってきたと感謝感謝の大家さん。とゆっくり話をしようと思ったのもつかの間、またまた下宿人たちに取り囲まれます。大家さん、手にした紙袋をおカミさんに差し出し;

  富士子「あんた!」
  満男 「富士子、俺に3秒だけ時間をくれ。これを見ろ!」
  富士子「キンツバなんか要らないよ!!!」
  満男 「いいから見ろ!」

大家さんはおカミさんに紙袋を渡し、町田君に抱きつきます。小ネタ*1-6
一方、大家さんの言う通りにおカミさんが紙袋の中身を見ると、そこには束になった一万円札がいくつか入ってるではないですか。

  満男 「あ、は、は、は、は、は・・・」

ようやく自分に運が巡ってきたと、高笑いしながら勝ち誇る大家さんでした。

 

* 第二幕へ *

 

* home *