リーダーおよびタイトル 演奏者および演奏曲 コメント


BUD POWELL

”THE AMAZING BUD POWELL vol.1”

bluenote LP
p) BUD POWELL
b) CURLY RUSSELL
ds) MAX ROACH

1. UN POCO LOCO #1
2. UN POCO LOCO #2
3. UN POCO LOCO #3
6. IT COULD HAPPEN TO YOU
7. A NIGHT IN TUNIJIA #1
8. A NIGHT IN TUNIJIA #2
12.PARISIAN THOROUGHFARE

rec 1949.08.08


tp) FATS NAVARRO
ts) SONNY ROLLINS
p) BUD POWELL
b) TOMMY POTTER
ds) ROY HAYNES

4. DANCE OF THE INFIDELS #2
5. 52ND STREET THEME
9. WAIL #2
10.ORNITHOLOGY
11.BOUNCING WITH BUD #3

rec 1951.03.01
バド・パウエルの最高傑作といえば、第一に出てくるのが本アルバムとroost盤の「THE BUD POWELL TRIO」の二枚であろう。録音はroost盤のほうが2年早く、トリオのパーソネルはバド、カーリー・ラッセル、マックス・ローチと全く同じである。
どちらも甲乙つけがたい出来栄えだが、スリリングな演奏ということでこのアルバムのUN POCO LOCOの三つのテイクは必聴である。
当時、このものすごいバドのスピードについていけるのはローチだけだったといわれている。
テイク1、テイク2でローチはシンバルをスティックで激しく打っているが、それがバドにはしっくりこなかったようで、テイク1では唐突に演奏を中断している。
三つのテイクの違いを何度も聞きなおすのも楽しい。
考えてみれば、私が生まれた頃の演奏であるが、少しも古さを感じない。まさに、芸術の生命は永遠である。


SONNY ROLLINS

”SAXOPHONE COLOSSUS”

prestige LP
ts) SONNY ROLLINS
p) TOMMY FLANAGAN
b) DOUG WATKINS
ds) MAX ROACH

1. ST. THOMAS
2. YOU DON'T KNOW WHAT LOVE IS
3. STRODE RODE
4. MORITAT
5. BLUE SEVEN


rec 1956.06.22

ソニー・ロリンズの最高傑作というより、ジャズの最高傑作といえるアルバム。
ロリンズはアドリブという瞬間芸術に命を懸け、それ故に好不調の波が結構激しく、また時により自信を喪失して雲隠れしたりすることもあったが、ここでのプレイはそういった迷いとは無縁の、なんとも豪放で、思い切り歌っている。
マックス・ローチの小気味よいドラムのイントロに続いての豪快なカリプソメロディに始まり、最後のブルー・セブンまで、全曲が素晴らしい出来栄えであり、またサイドメンもそれぞれが最高レベルの演奏をしている。
正にジャズは楽し、この世に酒とよい音楽があれば他には何もいらないという気にさせてくれる。
(最も、今の私は酒はやめてしまったが)


MODERN JAZZ QUARTET

”NO SUN IN VENICE”

atlantic LP
p) JOHN LEWIS
vib) MILY JACKSON
b) PERCY HEATH
ds) CONNIE KAY

1. THE GOLDEN STRIKER
2. ONE NEVER KNOWS
3. THE ROSE TRUC
4. CORTEGE
5. VENICE
6. THREE WINDOWS


rec 1957.08.23
JAZZを聞き始めた頃は、はっきり言ってMJQなんてJAZZじゃない、って思っていた。
最初にMJQを聞いたのは、ATLANTICから出ていた「LONLY WOMAN」で、憂いを含んだ美人がジャケットになっていた。オーネット・コールマンのLONLY WOMANと聞き比べ、メロディははっきりとしているが気の抜けたビールのように感じたものだった。

このアルバムはヴェニスを舞台にした映画「大運河」のため演奏されたもので、映画にはMJQも出演していた。はっきりとしたストーリーは覚えていないが(というより、そんなにストーリーがはっきりとした映画ではなかったように思う)ミルト・ジャクソンのヴァイブの音が印象的で、このアルバムをきっかけにMJQの音楽を聞く気になった。

これを名盤に入れるかどうか疑問もあるところだが、こういった清涼剤的なJAZZも疲れを癒してくれて良いものである。


ART PEPPER

”THE ART PEPPER QUARTET”

tampa  LP
as) ART PEPPER
p) RUSS FREEMAN
b) BEN TUCKER
ds) GARY FROMMER

1. ART'S OPUS
2. I SURRENDER DEAR
3. DIANE
4. PEPPER POT
5. BESAME MUCHO
6. BLUES AT TWILIGHT
7. VAL'S PAL


rec 1956
西海岸派(ウエスト・コースト・ジャズ)の実力者であったアート・ペッパーは、当時の多くのジャズマンと同様、麻薬に侵されて何度も入退院を繰り返し、ていた。
このアルバムは、久しぶりに第一線に復帰したペッパーが、つかの間のきらめきを放った演奏を捕らえている。
サイドメンの好演に支えられて、ペッパーは朗らかに歌い上げているが、中でもベサメ・ムーチョの演奏が素晴らしい。
普通、アート・ペッパーの代表盤といえば、マイルス・デヴィスのリズムセクション(当時、ザ・リズム・セクションと呼ばれていた)と共演した、「MEETS THE RHYTHM SECTION」を挙げる人がほとんどだと思うが、私は敢えてマイナーなこの盤を「癒しのジャズ」として挙げたい。
1956年というのはジャズの豊作の年で、ソニー・ロリンズの「SAXOPHONE COLOSSUS」、マイルス・デヴィスの「COOKIN’」他マラソン・セッション、チャーリー・ミンガスの「直立猿人」等、ジャズの歴史に残る名盤が沢山生まれている。
このアルバムは目立たないアルバムだが、そういった有名な名盤に内容ではまったく引けをとっていない。
ペッパーはこの演奏の後も麻薬から離れることが出来ず、長い療養所生活を送っているが、もし彼が麻薬をやっていなかったら、もっともっと沢山
の名演を残してくれただろうにと惜しまれる。


FATS NAVARRO

"THE FABULOUS FATS NAVARRO VOL.1"

blue note LP
tp) FATS NAVARRO
as) ERNIE HENRY
ts) CHARLIE ROUSE
p) TADD DAMERON
b) NELSON BOYD
ds) SHADOW WILSON

1.2. OUR DELIGHT #1,#2
3.4. THE SQUIRREL #1,#2
5.6. THE CHASE #1,#2
10、11..DAMERONIA #1,#2

tp) FATS NAVARRO
ts) SONNY ROLLINS
p) BUD POWELL
b) TOMMY POTTER
ds) ROY HAYNES

7. WAIL #1
8. BOUNCING WITH BUD #1

tp) FATS NAVARRO
tp) HOWARD McGHEE
as) ERNIE HENRY
p,vib) MILT JACKSON
b) CURLY RUSSEL
ds) KENNY CLARKE

9. DOUBLE TALK #2

rec. 1947.9〜1948.8
モダン・ジャズのトランペット奏者として、開祖ディジー・ガレスピーから鬼才クリフォード・ブラウンまでの間をつなぐ天才トランペット奏者と評価されるナヴァロであるが、その活躍できた期間はあまりにも短かった。

ファッツ・ナヴァロ。1950年死去、享年26才。
クリフォード・ブラウン。1956年死去。享年25才。
ブッカー・リトル。1961年死去。享年23才。
神は、人並み外れた素晴しいトランペット奏者に対して、あまりにも冷酷な運命を与えている。

このレコードはナヴァロが残した数少ないレコードの一つで、7,8の曲は”THE AMAZING BUD POWELL vol.1”に収められている同曲の別テイクである。
目を閉じて激しいバップの響きを聞いていると、彼らが新しいジャズを作り出している瞬間の息吹が浮かんでくる。


DUKE ELLINGTON

"MONEY JUNGLE"

united artist LP
p) DUKE ELLINGTON
b) CHARLIE MINGUS
ds) MAX ROACH



1. MONEY JUNGLE
2. LE FLEURS AFRICANES
3. VERY SPECIAL
4. WARM VALLEY
5. WIG WISE
6. CARAVAN
7. SOLITUDE

rec. 1962.9.17
このレコードはエリントンにとっての代表作でもないし、ミンガスにとってもローチにとっても同様である。
彼らの名演は他にいくつもあるのだが、このレコードの価値というか面白さは、モダン・ジャズの巨人であり、どちらかといえば政治的急進派のカテゴリーに入るミンガス、ローチが、クラシック・ジャズ(スイング・ジャズ)の巨匠のデューク・エリントンと共演した、というミスマッチ的なところである。
それも、オールスター的な共演でなく、ピアノ・トリオという、余分なものを一切排したシンプルな構成であるところが興味深い。
演奏曲は全てエリントンのオリジナルであり、普段はアクの強いミンガスが,尊敬するエリントンの前ではかしこまって、すっかりおとなしい演奏をしているところも面白い。


SONNY CLARK

”COOL STRUYYIN'

blue note LP
tp) ART FARMER
as) JACKIE McLEAN
p) SONNY CLARK
b) PAUL CHAMBERS
ds) PHILLY JOE JONES


1. COOL STRUTTIN'
2. BLUE MINOR
3. SLIPPIN' AT BELLS
4. DEEP NIGHT


rec. 1958.1.5
ジャズ喫茶華やかなりし頃の超人気版で、いわゆるハード・バップを代表する一枚でもある。軽快なソニー・クラークのピアノに乗って、アート・ファーマーが美しく唄い、マクリーンも独特の「マクリーン節」で唄いあげる。
ファーマーとマクリーンのユニゾンからソロの交換の部分は、何度聴いても飽きない、スインギーな中にも都会の哀愁を感じさせる独特の世界を作っている。

ソニー・クラークのピアノそのものは、Blue NoteとTimeでの2枚のトリオが最高であるが、ここでは彼の作曲面が特に際立っているといえるだろう。

ハード・バップの香りを楽しむのには最適の一枚であり、ジャケットを見ているだけで、よき時代が蘇って来るようだ。


ART BLAKEY

"LES LIAISONS DANGEREUSES(危険な関係)"

fontana LP
tp) LEE MORGAN
ts) BARNEY WILEN
p) BOBBY TIMONS (except 2)
p) DUKE JORDAN (2)
b) JIMMY MELITT
ds) ART BLAKEY

1. NO PROBLEM #1(危険な関係のブルース)
2. NO HAY PROBLEMA(危険な関係のサンバ)
3. PRELUDE IN BLUE #1
4. VALMONTANA #1
5. MIGUEL'S PARTY
6. PRELUDE IN BLUE #2
7. NO PROBLEM #2(危険な関係のブルース #2)
8. WEEHAWKEN MAD PAD
9. VALMONTANA #2


rec. 1959.7.28
アート・ブレイキーと彼の率いるジャズ・メッセンジャーズの代表作といえば、ブルーノート版の「A NIGHT AT BIRDLAND」、パリでのコンサート「サンジェルマンのジャズ・メッセンジャーズ」、「オランピア・コンサート」等があるが、映画「危険な関係」のためにフランスの新人テナー奏者バルネ・ウィランと吹き込んだこのレコードも、「もう一枚」の傑作である。
「危険な関係」はド・ラクロ原作のフランスの古典小説で、18世紀フランスの貴族社会の爛れた情景を描いたものであるが、華やかではあるがどこか哀愁を帯びたメロディは映画のストーリーと見事にマッチしている。
デューク・ジョーダンの作曲になる「危険な関係のブルース」1,2と、トリオで演奏される「危険な関係のサンバ」が全体のハイライトとなっており、映画を見ているような興奮を覚えさせてくれる。
どの時代にも聴衆をひきつける演奏に長けたブレイキーの面目躍如のアルバムといえる。


JULIAN "CANNONBALL" ADDERLEY

"SOMETHIN' ELSE"

blue note LP
tp) MILES DAVIS
as) CANNONBALL ADDERLEY
p) HANK JONES
b) SAM JONES
ds) ART BLAKEY

1. AUTUMN LEAVES
2. LOVE FOR SALE
3. SOMETHIN' ELSE
4. ONE FOR DADDY-O
5. DANCING IN THE DARK


rec. 1958.3.9
その巨体から「CANNONBALL」という愛称を持つ、ジュリアン・「キャノンボール」・アダレイの傑作LP。但し、実質的にはマイルス・デヴィスがリーダーではあるが。
何といっても、一曲目の「枯葉」が素晴らしい。ハンク・ジョーンズの意表をついたイントロから、マイルスとアダレイのユニゾンに続き、ハンクとサム・ジョーンズのブリッジの後に素晴らしいミュート・トランペットでのテーマが出てくる。もうこのあたりで、背筋がゾクゾクとしてしまう。
この演奏で、シャンソンの名曲がジャズの名曲に変わった、という、枯葉の決定的な演奏である。
他の演奏も水準以上の出来で、キャノンボールは実に綺麗なメロディを聞かせてくれる。でも、敢えて「枯葉」一曲だけでこのレコードは素晴らしい価値がある。
ジャズ(のLP)は一曲だけのために買え、という名言があるが、なるほど、と納得してしまう。そうして、一曲だけのために買ったレコードを繰り返し聴くうちに、それぞれの曲のよさが徐々に感じてくるものである。


CLIFFORD BROWN

"THE BEST OF ROACH & BROWN IN CONCERT

GNP  LP
tp) CLIFFORD BROWn
ts) HAROLD LAND
p) RICHIE POWELL
b) GEORGE MORROW
ds) MAX ROACH

1. JOR-DU
2. I CAN'T GET STARTED
3. I GET A KICK OUT OF YOU
4. PARISIAN THOROUGHFARE
5. ALL GOD'S CHILLUN GOT RHYTHM
6. SUNSET EYES
7. CLIFFORD'S AXE


rec. 1954.4
ブラウンとローチの双頭クインテットは、ハードBOPを代表する名コンボであった。約2年間の活動の間幾多の名アルバムを生み、駄作が一つもない素晴らしいレベルの演奏を続けていたが、このアルバムは唯一のライブ版である。
まず一曲目のJOR-DUの緊張感が素晴らしい。ライブ特有の雰囲気の中、ブラウニーのトランペットは素晴らしいメロディを刻み、リッチー・パウエルのピアノもスインギーに刻まれる。ローチの知的なドラムワークは彼らを支え、そして引っ張っていく。こうして一夜の素晴らしい演奏が続いていく。

ローチが理想としたこのクインテットは、結成して2年後リッチーの妻の運転する車の事故により、同乗のブラウンとリッチーが同時に死亡し、突然に終焉を迎えた。誠に残念至極なことであった。
私とJAZZのことなど