非常に主観的なjazzの名盤です。おおむねオーソドックスな名盤と思いますが、あえてヘテロドックスなものも含んでいます。 学生運動に染まっていた昔、こんな状態ではまともに就職できなくなるかもしれないが、ジャズと酒さえあれば、あとはどうにでもして生きていけるだろう、なんて真剣に考えていた。あのころはjazzを聞くことで何もかも癒された。
戻ろうと思ってもあの時代には戻れないが、今でもそのころ買ったレコードを眺めていればあのころの日常を思い出すことがある。
リーダーおよびタイトル 演奏者および演奏曲 コメント


Charlie Parker

"BIRD SYMBOLS"
musidisc LP

personel:
tp) MIles Davis
as) Charlie Parker
ts) Luckey Tompson
p) Dodo Marmarosa

and others
MOOSE THE MOOCHE
YARDBIRD SUIT
ORNITHOLOGY
A NIGHT IN TUNISIA
BIRD'S NEST
COOL BLUES
BIRD ON PARADISE
ENBRACEABLE YOU
MY OLD FLAME
SCRAPPLE FROM THE APPLE
OUT OF NOWHERE
DON'T BLAME ME


rec:1946.3〜1947.12
まず最初にJAZZの巨人といえば、チャーリー・パーカーをおいてはないであろう。
パーカーが残した代表的なアルバムとして、ダイヤルレコードのセッションとSAVOYレコードのセッションがあり、ダイヤルセッションはダイヤルレコードの倒産後、数社からバラバラに発売されていた。
現在はどちらのセッションも吹き込み順に整理されているが、40年ほど前は散逸したそれらのアルバムを探し出すのが又楽しみの一つであった。
このアルバムはダイヤルレコードの初期の吹き込みが比較的まとめて入ったもので、当時パーカー入門の代表的レコードであった。
若きマイルスの好演も聞き物である。


Billie Holiday

"BILLIE HOLIDAY"


COMMODOA LP
vo)Billie Holiday

STRANGE FRUIT
YESTERDAYS
FINE AND MELLOW
I GOTTA RIGHT TO THING THE BLUES
HOW AM I KNOW
MY OLD FLAME
I'LL GET BY
I COVER THE WATERFRONT
I'LL BE SEEING YOU
I'M YOURS
EMBRACEABLE YOU
AS TIME GOES BY
SHE'S FUNNY THAT WAY
LOVER COME BACK TO ME
I LOVE MY MAN
ON THE SUNNY SIDE OF THE STREET

REC 1939.04~1944.04
ビリー・ホリデイ。ジャズボーカルで彼女をおいて話すことは、ジャズに対する冒涜であろう。
若くして娼婦に身を落とし、黒人故に差別を受け続け、麻薬と酒に命を削った彼女の、代表的なアルバムである。

南部の木に奇妙な果実が実っている。葉にも幹にも血が滴り、黒い死体が南の風に揺れている。飛び出した目玉、ねじれた手足、・・・・怒りを抑えて淡々とうたう「奇妙な果実」、これを聞かずにjazzを語ることは出来ない。
「奇妙な果実」に続いて吹き込まれた「イエスタデイズ」(ビートルズの「イエスタデイ」とは全く別の曲)も、余韻が残っていて興味深い。
サニーサイド、恋人よ我に帰れ、波止場にたたずみ、等、珠玉の名唱が詰まっていて、密度の高いアルバムになっている。


Mal Waldron

”MAL-1”
prestige LP
personel

tp) Idrees Sulieman
as) Gigi Gryce
p) Mal Waldron
b) Julien Euell
ds) Arthur Edgehill

STABLEMATES
YESTERDAYS
TRANSFIGURATION
BUD STUDY
DEE'S DILEMMA
SHOME


REC 1956.11.09
ビリー・ホリデイの晩年(1957〜59年)に伴奏ピアニストを勤めた、マル・ウオルドロンの初リーダーアルバムである。
彼のピアノは、ある意味で計算されたミストーンが独特の緊張感を醸し出している。
このアルバムでは特に「イエスタデイズ」が最大の聞き物である。シュリーマンとグライスの描く美しいメロディと、マルの訥々と語りかけるピアノが、聞くものをマルの内面世界に引き込んでいく。
ビリーの同曲と聞き比べてみるのも興味深い。

誰が言ったのかは忘れたが、ジャズに名曲なし、ただ名演奏あるのみとは名言であるが、名曲を名演奏すればそれは更に歴史に残る一曲となる。



Ornette Coleman

"THE SHAPE OF JAZZ TO COME"

ATLANTIC LP
cor)DON CHERRY
as) ORNETTE COLEMAN
b) CHARLIE HAIDEN
ds) BILLY HIGGINS

LONELY WOMAN
EVENTUALLY
PEACE
FOCUS ON SUNITY
CONGENIALITY
CHRONOLOGY

rec 1959.05.22
JAZZを聞き始めてまだ日が浅い頃、友人がこのレコードを買ってきて、私の下宿で一緒に聞いた。
「これは何ジャー」「このレコード、音がおかしいよ」というのが、最初に聞いたときの率直な印象であった。
まだ当時私は前衛ジャズを全く知らなかったのだ。

今このレコードを聴いても、あのときに感じた違和感は全く感じなくなった。逆に、何と綺麗なメロディだと感じている。
特にロンリー・ウーマンの曲で、オーネットとドン・チェリーが築きあげていく不協和音のメロディラインは、JAZZの輝かしき明日の第一歩となったといえるだろう。


Charlie Mingus

"MINGUS PRESENTS MINGUS"


CANDID LP
tp) TED CURSON
as,bcl) ERIC DOLPHY
b) CHARLES MINGUS
ds) DANNIE RICHMOND


1. FOLK FORMS NO.1
2. ORIGINAL FAUBUS FABLES
3. WHAT LOVE
4. ALL THE THINGS YOU COULD BE BY NOW IF SIGMUND FREUD'S WIFE WAS YOUR MOTHER


REC 1959.05.05〜12
今ではたやすく手にはいるようになったが、当時は噂に聞くだけで、JAZZ喫茶にもなかなか置いておらず、最大の幻の名盤といわれていた。  あのころは幻の名盤と呼ばれるレコードが沢山あり、時間さえあれば輸入盤を扱っている店や中古盤を扱っている店を漁ったものである。

人種差別のフォーバス知事を痛快に批判した「フォーバス知事の寓話」は、ミンガスのスタンダードナンバーのようにその後なってしまったが、やはりここでの演奏が一番迫力もあり、名手ダニー・リッチモンドとの掛け合いもスリリングである。
ミンガスの音楽はアクが強く、とても万人向きとは言えないが、最強のベーシストであり、優れたピアニストであり、何よりも優れた作・編曲家であったミンガスの異色アルバムである。


Eric Dolphy

"AT THE FIVE SPOT Vol.1"


PRESTIGE LP
tp) BOOKER LITTLE
as,bcl) ERIC DOLPHY
p) MAL WALDRON
b) RICHARD DAVIS
ds) ED BLACKWELL


1. FIRE WALTZ
2. BEE VAMP
3. THE PROPHET

REC 1961.07.16
天才ドルフィーと夭折の天才トランペッター、ブッカーリトルのコラボレーション、それは文字通り火のつくような激しい、スリリングナものであった。
このファイブスポットでの実況録音盤は、燃え尽きようとする二人の天才の最高の瞬間を、特に鬼才ブッカー・リトル最後の夜を、奇跡的なタイミングで記録している。
五人のメンバーそれぞれが入神の演奏をしており、全曲素晴しいできだが、中でもマル・ウオルドロン作曲のファイア・ワルツはここでの演奏が決定版といえるだろう。
これに続く第2集も劣らぬ素晴しい名盤であった。

このような天才たちが受け入れられなかった当時のアメリカ、リトルは満足な治療も受けられず尿毒症でこの演奏後まもなくわずか23才にて死亡、ドルフィーもアメリカでは満足に食べていけず、このあと「ちょっと昼食に行ってくる」・・・OUT TO LUNCHの好演を残してヨーロッパに渡り、この演奏の3年後に36才で客死した。


Jhon Coltrane

"A LOVE SUPREME"

IMPULSE LP
ts) JOHN COLTRANE
p) McCOY TYNER
b) JIMMY GARRISON
ds) ELVIN JONES


1. ACKNOWLEDGEMENT
2. RESOLUTION
3. PURSUANCE
4. PSALM


REC 1964.12
聖者コルトレーン。その一生は、努力の積み重ねであった。
初期のコルトレーンは平凡なテナーマンであったが、マイルスの「オリジナル・クインテット」に参加した頃から徐々に力量をつけ、頭角を現した。
その後、GIANT STEPS、MY FAVORITE THINGS、等の傑作を立て続けに吹き込み、このアルバム「至上の愛」で頂点に登りつめた。それは神の領域であり、修道者コルトレーンが神にもっとも近づいた瞬間である。
このアルバムはコルトレーンの集大成であり、JAZZの名盤の十指、いや五本の指に入る重要なものである。
メロディは聴いていて美しく、崇高でいて、それでいて耳になじみやすい。
このアルバムのあと、コルトレーンは前衛に進み、コールマンとはまた異質の前衛JAZZを作り上げていった。そうして、死の直前に再び神の世界へ帰ってくる。


Miles Davis

"WALKIN'"


PRESTIGE LP
tp) MILES DAVIS
tb) JAY JAY JOHNSON
ts) LUCKY THOMPSON
p) HORACE SILVER
b) PERCY HEATH
ds) KENNY CLARKE

1. WALKIN'
2. BLUE 'N' BOOGIE

REC 1954.04

tp) MILES DAVIS
p) HORACE SILVER
b) PERCY HEATH
ds) KENNY CLARKE

3. SOLAR
4. YOU DON'T KNOW WHAT LOVE IS
5. LOVE ME OR LEAVE ME

REC 1954.03
第2次大戦後経済的に発達したアメリカ西海岸では、白人が主導する「WEST COAST JAZZ」が全盛であり、東海岸の黒人たちはそのあおりで不遇をかこっていた。
このアルバムは、そういった時代背景の中で、東海岸の黒人たちが復権ののろしを上げた記念すべきアルバムである。
この高らかな「ウォーキン」を聞きたまえ。マイルスの新鮮な雄叫び、J.J.ジョンソンの力強いサポート、JAZZは我々のものであって白人たちのものではない、金はなくても力強く歩いていこう、我々には輝かしい明日がある、私の耳にはそう叫んでいるように聞こえる。

後にマイルスのテーマ曲となり、何度も好んで録音された「ウォーキン」だが、後期の録音がだんだんテンポが速くなり「ランニング」に近づくのと比べ、本アルバムでは誠に力強く、自信にあふれた、ゆったりとした歩みである。
JAZZの帝王と後に呼ばれたマイルスの初期を飾る重要アルバムである。


Bill Evans

"WALTZ FOR DEBBY"

RIVERSIDE LP
p) BILL EVANS
b) SCOT LAFARO
ds) PAUL MOTIAN

1. MY FOOLISH HEART
2. WALTZ FOR DEBBY
3. DETOUR AHEAD
4. MY ROMANCE
5. SOME OTHER TIME
6. MILESTONES


REC 1961.06.25
このアルバムも幻の名盤の一つであった。
ピアノ、ベース、ドラムという取り合わせを見れば、ごく一般的なピアノ・トリオであるが、この3人のプレイはピアノ・トリオというジャンルでなく、ピアノ・インプロビゼーションであり、コ・ラボレーションである。
夭折のベーシスト、ラファロをフィーチャーしたアルバムは数少なく、本アルバムはビル・エバンスだけでなく、スコット・ラファロを聴くためのアルバムといえる。中でも、レコードのタイトルとなった「ワルツ・フォー・デビー」が聴き物。
同日のライブ録音である、「SUNDAY AT THE VILLAGE VANGUARD」と併せて聴きたい。


Stan Getz

"THE SOUND"

ROULETTE LP
ts) STAN GETZ
p) AL HAIG (on1〜5)
HORACE SILVER(on6〜11)
AND OTHERS

1. ON THE ALAMO
2. GONE WITH THE WIND
3. YESTERDAYS
4. SWEETIE PYE
5. HERSHEY BAR
6. TOOTSY ROLL
7. STRIKE UP THE BAND
8. IMAGINATION
9. NAVY BLUE
10.PENNY
11.IT MIGHT AS WELL BE SPRING
12.DEAR OLD STOCKHOLM
13.STANDINAVIAN
14.I'M GETTING SENTIMENTAL OVER YOU
15.I ONLY HAVE EYES FOR YOU
16.PRELUDE TO A KISS
17.NIGHT AND DAY
18.MELODY EXPRESS
19.YVETTE
20.POTTER'S LUCK
21.WILDWOOD

REC 1950.05.17〜1951.08.15
「クール・ジャズ」の第一人者スタン・ゲッツの吹くメロディは優しく、女性的にも聞こえるが、非常に歌心にあふれ、黒人の好むプロテストJAZZやパーカー、ガレスピー、パウエル等のBOPとは又異質の楽しみがある。
彼も当時の大方のジャズメンと同様、麻薬に苦しみ、服役生活も送るが、ここでの演奏はまだ彼が麻薬にむしばまれる以前の演奏である。
”DEAR OLD STOCKHOLM”がなかでも好演で、何度聞いても心にしみる音楽である。

ゲッツは後年ボサ・ノバに一時転向し、ジョアン・ジルベルトやアストラッド・ジルベルトとの好演を記録しているが、またそれ故にJAZZフアンからは軽視される傾向があるが、彼の音楽を一貫して支えていたのは、豊かな歌心である。

彼をJAZZの巨人の一人に推薦することに躊躇は感じない。
私とJAZZのことなど