■ 第五幕

 

そして、2週間後の9月のとある日・・・。下宿は既に引越し準備中。茶の間の品のいくつかも片付けられ、ダンボールの中に納まっています。

そこに、貴子と安西が、それぞれ貴子は手にボストンバッグを持って、安西はダンボールを持って、2階の貴子の部屋から降りてきます。世の中には6回も同じ人と結婚を繰り返した人の話を貴子にしている安西。

  安西 「だから、2回っていうカップルもそこら辺にいるんじゃないかな?」

と、つまり自分たちもやり直せる!と主張したいらしい。だけど;

  貴子 「私みたこと無い」
  安西 「僕も」
  貴子 「じゃぁ、何でそんなことを言うの?」

とにべもない貴子ちゃん。それにもめげず、「きっといるさ」と食い下がる安西さん。二人は嫌いで別れたわけじゃなく、むしろ好きで別れたのであって、あとは「運だと思うんだよな。その運さえよければ、またやり直せると思うんだ」。

そこにキクさんが玄関から入ってきて、残りの荷物は?と聞きます。安西は2階にもう一つ荷物があると言って、再び2階に。残された貴子に、キクさんは「安西とやり直せば?」と単刀直入に話を切り出すも、貴子は「同じことの繰り返しになるんじゃない?」と、そのつもりはないことを告げます。

奥から大家さんもやってきて、ダンボールからそばを取り出し、台所で湯で始めます。キクさんに引越し前に「そばでも食べていってよ」と。

  貴子 「それ、おかしくない?引越し前に食べる引越しそばなんて聞いたこ
      とが無いけど。ね?」
  キク 「俺に聞くなよ。俺は24年間、引越ししたことがないから分からない」

キクさんは外に出て行き、大家さんは奥へと戻っていきます(だったかな?覚えてないぞ、この辺の人の動き…(^^;))。

そこに、残った荷物であるスーツケースを持って安西が降りてきて、もう一回、貴子に最後のアプローチ;

  貴子 「記憶、が大事だと思うんだよな」

何かがあって乗り越えられるかどうかは、二人に強い記憶があるかどうか。

  安西 「それが僕たちにはあるだろ?」

と、安西はあの嵐の晩の出来事を指して語ります。

  安西 「夫婦は結局、だましだましだと思うんだ・・・」
  貴子 「・・・」
  安西 「いや、今、階段を降りてきたときにそう思ったんだけどね」

茶の真ん中で固まって、無反応な貴子。仕方なく、そのまま安西は一人でスーツケースを運び出しに玄関から外に出て行きました。それでも固まったままの貴子。そこにダンボールを持って今度は奈っちゃんが2階から降りてきます。ボーっとしている貴子を見て;

  奈津子「姉ちゃん、何て顔してるんだよ!」
  貴子 「今ね、安西がとってもロマンディックなことを言ったような気がす
      るの。夫婦はだましだましだって」
  奈津子「それ、ロマンディックか?」
  貴子 「ロマンディックだったの…」

そのまま貴子はボストンバッグを手に、玄関を出て行こうとしたときに、安西が戻ってきて、貴子が手にしたボストンバッグに手を伸ばします。が、そのときに、二人の手と手が触れ;

  貴子 「一緒に運ぼ…」

見詰め合ったまま、二人は外に出て行きました・・・。その様子をほほえましく見ている奈津子。すると、奥から出てきた大家さんが引っ越しそば用のワサビを摩り下ろす金具がどこにあるか聞かれ、奈津子は一緒に奥へと探しに下がっていきます。


続いて登場は、瑛子ちゃんと清さん。永福町に住むと言う清さんと***に住むという瑛子ちゃんは、同じトラックでの移動です。ダンボールに、歯ブラシを閉まったり、それをガムテープで押さえたりしている最中に、目と目が合った清さんと瑛子ちゃん。

  瑛子 「ちゅっ」

うわっ、今回の舞台の唯一のラブシーンがこの二人かい!(^^;)。何とも言えない空気が流れる中、玄関で、ダンボールを運び出そうとするところで、清さん、瑛子ちゃんに一言;

  清一 「永福町まで来ちゃえよ
  瑛子 「うん」

その瑛子ちゃんの反応に清さんはダンボールを玄関の扉にぶつけたりしてますが、そのまま二人は外に出て行きました。BR>
その二人と入れ違いにまっちが玄関から入ってきて 小ネタ*5-1、居間の扇風機をつけて、服をパタパタしています 小ネタ*5-2。その反対側から奈っちゃんが台所に登場。大家さんが茹でていたおそばの様子を見ています。大家さんはそばは奈っちゃんにまかせて(?)、ちゃぶ台で一息。雑誌を括っている町田君に話し掛けます;

  大家 「今朝起きたら、水道の蛇口に光が差し込んできたんだよね。ああ、
      綺麗だな、って思ったの。こんな風に思ったの、初めてだったなぁ。
      高い買い物になっちゃったけど、今回のことが無かったら、こうい
      う風に思うことも無かったかもしれないな。結果的にはいいことも
      あったんじゃないかと思って」
  町田 「(^-^)」

そこに、おカミさんが中庭からやってきて、ご近所さんが挨拶に来ていると大家さんを呼びにきます小ネタ*5-3。大家さんはおカミさんと一緒に外に出て行きました。



そして、台所の奈っちゃんが気になりつつも、居間の辺りに残った雑誌を束ね始める町田君。一方の奈っちゃんも町田君のことが気になりつつも、そのままおそばを茹でてます。

  奈津子「何か、手伝おうか?」
  町田 「じゃぁ、雑誌を…」

二人並んで、仲良く(?)雑誌を束ねてます。

  奈津子「・・・」
  町田 「・・・」

  奈津子「私ね、高円寺のブティックに勤めることにしたの」
  町田 「ええ、いいじゃないですか」

その店は、年配の女性が開いているのだが、奈津子はその店では暖かいぬくもりを感じ、その店で働くことに決めたと言う;

  奈津子「代官山で看板が立たなくても、こういうのでいいんじゃないかぁ、
      と思ったの」
  町田 「奈津子さんには、染み付いているんですよ、この下宿屋の持ってる
      幸せみたいなものが。
      そういう奈津子さんに、僕はひかれて…
  奈津子「?!」
  町田 「・・・」

微妙な空気になったところで、大家さんとおカミさんが再び登場(だったかなぁ、誰が登場したのか、忘れてるよぉ(涙))。おそばが出来上がり、外にいるみんなを呼びに行く奈っちゃん。一方の町田君はおかみさんに言われて器を並べる手伝いをします。みんな玄関から次々に戻ってきて、ちゃぶ台の周りに全員が着席。引越しトラックの運転手さんが、渋滞に巻き込まれる前に発車させたいということらしく;

  貴子 「じゃぁ、ちゃっちゃ、と済ませましょう」

ということで、おそばを食べるお椀を右から左へと全員で回して、そばつゆを入れてまわしてます小ネタ*5-4

  全員 「ちゃっちゃ、ちゃっちゃ、ちゃっちゃ、ちゃっちゃ、ちゃっちゃ…」
  キク 「チームワークいいよね、俺たち、一人を除いて」
  満男 「俺のこと?(^^;)」

などと、冗談を言いながら;
  全員 「じゃぁ、戴きます!」

と、揃って食べ始めますが、直後、一同、沈黙。

  キク 「不味い・・・」

折角大家さんが茹でたおそばでしたが、若干、茹ですぎたらしい。

  キク 「不味いおそばって、人の気持ちを暗くするよね?」
  一同 「・・・」

  貴子 「でも、量が少なかったのが救いよね!」
  一同 「そうそう、救い、救い」
  一同 「・・・」

  大家 「ごめんね、最後の最後まで・・・」
  一同 「・・・」
  全員 「ごちそうさまでした」

と、何はともあれ、全部残さず食べ終わったところで、外から「ブーーーーーー」と、トラックのクラクションが鳴り響きます。先発部隊の貴子&安西,清一&瑛子の4人が出発します。後発の町田&奈津子,キク,満男&富士子が彼らを見送ります。

にぎやかだったのが、静かになった下宿。雑誌の片づけを続ける町田君。おそばを食べた後片付けをしちゃおうと、奈津子は食器を片付け、キクさんはテーブルを拭きます。おカミさんは、キクさんに、お肉屋さんが引っ越し前に立ち寄って欲しいといってたと告げ、おカミさんは大家さんと一緒に2階の最終点検をするために階段を上がっていきます。

  満男 「富士子、急ぐなよ。一緒に昇ろう」
  富士子「そうね・・・」

その二人の様子をほほえましく見ている奈っちゃんは、町田が雑誌の片づけをしているのを手伝いながら、キクさんにどこに住むのか尋ねます。一つ先の駅で住むつもりだが、また来年、ここにアパートが出来たら戻ってくるつもりだというキクさん。こうなったら、ずっと下宿人続けて、「♪燃焼系〜」とか言いながら、公園で子供たちに鉄棒を教えるのもいいかなぁ、何て言ったりして…。そして;

  奈津子「ねぇ、キクさん、このちゃぶ台、もらってくれない?」
  キク 「えっ?!いいの?!嬉しいなぁ〜」

と、喜びながら、先ほどおカミさんに言われたように、お肉屋さんに挨拶のために出かけます。

残った町田君と奈っちゃん。微妙な空気が流れる中、奈っちゃんがステレオで音楽をかけます。

  奈津子「我が家のテーマ曲。おかあさんが大好きなの」

  町田 「いいんですか?ちゃぶ台、あげちゃって」
  奈津子「いいのよ、私はこれでいいの…」

そう言いながら、壁に貼り付けていた小学校のときに作ったちゃぶ台柄の巾着袋を手にします。

  奈津子「染み付いてるから、この家の匂いが。だから、いいんだ」
  町田 「・・・」

そして、町田も、思い切って奈津子に心に引っかかっている思いを告げます;

  町田 「僕にもあったんですよね」
  奈津子「田舎にちゃぶ台が?」
  町田 「いや…」

若干、躊躇いつつ、ジーンズのポケットから、あるものを取り出します。

  奈津子「私のバンダナ!!!・・・どうして?」
  町田 「・・・。
      今年の春、下北沢の古着屋で、これを見つけました。ちょうどその
      頃の僕は、精神的に参っている頃で、ふと、この懐かしいデザイン
      に惹かれて。毎日使っているうちに、こういう暮らしがしたくなっ
      て、会社を辞めてここに辿り着きました。
      だから、最初、巾着袋を見たとき驚いたんですよ。あのバンダナを
      デザインをしたのが、奈津子さんだと知って」
  奈津子「・・・」
  町田 「僕はきっと、このちゃぶ台をデザインした人の気持ちに惹かれてる
      と思うんです。それはつまり…奈津子さんに惹かれてると
      言うことですよね?
      これからも、時々、会ってもらえますか?」

そう言われて、黙って頷く奈っちゃん。

  町田 「(^o^)」
  奈津子「(^o^)」

と、二人がいいムードになったところで、出かけていたキクさんが大きなかぼちゃを抱えて戻ってきます。

  キク 「奈っちゃん、かぼちゃもらってきたよ!だけど、どうして、肉屋で
      かぼちゃかな?」
  奈津子「似てるんじゃない?」
  キク 「そうかな?」
  町田 「そうですよ、瓜二つですよ」
  キク 「かぼちゃで、うりとはこれ如何に・・・なんてな」

そんな冗談を言いながら、そして町田君と奈っちゃんは仲良く雑誌の片づけを続けてます小ネタ*5-5。日ノ出荘には夕日が差し込み、その夕日を2階から大家さんとおカミさんが眺めていたのでした。


Fine

 

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