プレミアムステージ特別企画 |
1945年 ビルマ戦線 焦げるような太陽の元、逃げる日本兵の部隊。そのうちの一人が塹壕の中に落ち込み、顔を上げると、そこに敵兵の火炎放射器が。炎にまみれる男。 終戦から二年後 昭和二十二年八月十八日 犬神邸・大広間 床に伏せる老人と、そばに付ききりの医師。そして、その医師と反対側には、その一族が一列に座している。 松子 「お父様、ご遺言は?ご遺言は?」 一族のうち、最も上座に座る女性・松子が床の老人・佐兵衛に向かって尋ねた。 佐兵衛「・・・」 松子 「お父様、ご遺言が御座いましたら、仰って下さいまし。みんな、 お父様のご遺言をお伺いしたいと待っております」 老人は、無言のままゆっくりと下座に座る弁護士の古館を指差す。 古館 「遺言状ならば、確かに顧問弁護士の私がお預かりいたしており ます」 遺言状が既に作成されていたことに驚く一族の面々。古舘は翁から預かっている遺言状について、本人の意思により、松子の長男 佐清が復員したとき、もしくは翁の一周忌に発表することに指示されていると、また、それまでの間は犬神家の事業および財産は犬神家奉公会いにて管理することに成っているということを告げる。 その古舘の宣告を聞きながら、ニヤリとした表情を示す老人。そうして親族の表情を順番に伺い、最後に末席に座る珠代の顔を見た。そして・・・ 医師 「ご臨終です」 プレミアムステージ特別企画 犬神家の一族 「犬神佐兵衛死去」・・・このニュースはテレビのニュース、新聞で全国に報じられた; 〜犬神佐兵衛は、2月18日。心臓衰弱のため83歳で死去。 生前は、那須神社で育てられる。 明治22年、犬神製糸会社を設立し、犬神財閥を一代で築きあげた人物で シルクエンペラーとも呼ばれる・・・〜 そういう人物の死であるから、遺産相続に関しては、国民的関心事であっても過言ではない・・・ 汽車・客室 汽車の客車。そこには、那須へと向かう金田一耕助の姿があった。彼宛てに届いた手紙を読む。 『お願いと申すは別送した犬神佐兵衛伝の主人公犬神佐兵衛の遺族に関する ことなのです 近くこの犬神家の一族に容易ならぬ事態が勃発するにあら ずやと憂慮に耐えぬものがあるのです 容易ならぬ事態−それ尊大の領分 に属する血みどろな出来事なのです』 金田一「一族の中に、幾人も幾人も、犠牲者が出るのではあるまいか。 それを考えると、小生は目下、夜も眠れぬのです。なお、この こと必ず、必ずご他言無用のこと・・・若林豊一郎」 と、まじめに読んでいると、汽車がトンネルに入ったのか、その真っ黒な煙が客車の空いた窓から入ってきて・・・と、当時はそんな状態なのだわ(苦笑)。 那須・町並み そうして、颯爽と・・・でもないけど、那須の地を闊歩する金田一。身だしなみというものに無頓着なのか、先ほどの汽車での真っ黒な煙を浴びたまま、顔中、ススだらけであるのも気にせず、歩いている。 とある旅館にたどり着き、その玄関のドアをあける。 女中 「いらっしゃいまし」 金田一「どうも、お世話になります」 そうして、カバンを地面に置き、マントをバタバタ、バタバタ・・・と。すると、着物の隙間に入り込んだ先ほどのススが、もうもうと立ちのぼり; 女中 「(>_<) ゴホン、ゴホン・・・」 いい迷惑です。そんな相手の気持ちを知ってかしらずか、金田一はにっこり笑って; 金田一「あはは(笑)。金田一です (^-^)」 か、可愛ええ〜〜〜(*^^*)(←ドラマ忘れてるし…(汗)) 那須旅館 部屋に案内された金田一は、真っ先に部屋の窓を開け、目の前に広がる那須湖を眺める。 金田一「うわぁ〜、いい眺めだぁ〜」 女中 「お客さん、お風呂どうするかいね。入ってもらわねーと困るん だけど」 と、女中はススまみれの金田一に迷惑そうに告げるが、そんな言葉も聞かずに、金田一はまとっていたマントを女中に向かって放り投げた(^^;)。 女中 「・・・うわっ」 金田一「君、君。金田一だから。僕の名前、金田一耕助」 女中 「あ、はい」 金田一「知らないのか…」(←ちょっとがっかり) 女中 「で、お風呂、どうすべ?」 金田一「あれが犬神さんのお宅かい?」 女中 「え?犬神様のお宅なら、向こうに見えるあれだけどね」 金田一「なるほど、立派なお屋敷だ」 ちょうど、湖を挟んで反対側に、屋根が何層にも重なるような大屋敷が見える。その、屋敷の水辺にある小屋から、手漕ぎのボートが一艘、漕ぎ出てきた。 金田一「あの婦人は犬神の人?」 女中 「ああ、珠代様かいね。犬神のお身内の方じゃないけどね。何で も亡くなった佐兵衛様の恩人のお孫さんで、身内が無くて引き 取られたっちゅーことだがね。それはそれは、綺麗なお方だで ねぇ。たぶん、あんな綺麗な人は、日本に二人といないだね」 金田一「へぇ〜、そんなに美人?」 女中 「うん」 金田一「どれどれ、それじゃぁひとつ、お顔を拝見といこうか」 と、金田一は(下心ミエミエで?)鞄の中から双眼鏡を取り出した。 金田一「おほほ、おぉ〜〜〜」 と、鼻の下を伸ばしながら、眺めていると、そのとき、珠代の表情が変わるのが見て取れた。改めてよく見ると、珠代がボートの上に立ち上がり、手を振ってるのが見える。その様子を見て、急ぎ旅館を飛び出していく金田一。一方、その対岸では、もう一人、毛むくじゃらの男性が珠代の様子を見て湖に飛び込んだ。 湖 金田一は、珠代の乗るボートの方を見ながら、湖岸を駆ける(吾郎君が走ってるわぁ〜(*^^*))。そして、旅館のボートに飛び乗り、一直線に漕ぎ始めた(吾郎君がボートを漕いでるわぁ〜(*^^*) 共に貴重な映像かも)。 金田一が珠代のところに到達したときには、先に湖に飛び込んだ毛むくじゃらの男が到達しており、湖に浮んで珠代を抱きかかえていた。 金田一「さぁ、早く!」 玉世 「すみません」 金田一「君、君も速く、ボートに乗りたまえ」 金田一に手を駆りながら、珠代と、珠代が猿蔵と呼んだその男性は、金田一のボートに乗り込んだ。 猿蔵 「お嬢さん、だから言わんこっちゃない。これで三度目じゃねー か」 珠代 「だって、ボートに穴が開いていたなんて!」 金田一「ボートに穴が開いていたんですって?」 怯える珠代。それを覗き込む金田一。珠代の視線を感じて、その視線を外す…(この辺、探偵として覗き込んでるのか、恋心みたいなのを抱いて覗き込んでるのか、どっちなんだろうなぁ…。もちろん、前者だと思うのだけど、後者の展開も捨てがたく…(苦笑))。そして、我に返った金田一; 金田一「じゃぁ、お宅までお送りしましょう」 珠代 「ええ。ありがとうございます」 そうして、犬神家のボート小屋に乗りつける。猿蔵は珠代を抱きかかえ船着場に立った; 金田一「では、お気をつけて」 金田一がそう声をかけても、二人はそのまま何も言わずにさるぞうは珠代を連れて、引き上げていった。 金田一「・・・」 その二人の関係を金田一は不思議に眺めるのだった。 那須旅館 再び那須旅館の玄関口。「♪ふんふんふん〜ふふふんふん〜」と、鼻歌なぞを唄いながらご機嫌で旅館に戻ってくる金田一。先程の女中が出迎える; 女中 「あの〜お客様で見えましたでね。お座敷の方に案内しといたで…」 金田一「あ、そうだった!ありがとう」 と、慌てて下駄を脱いで、部屋に駆け戻った。部屋の扉を開けて; 金田一「お待たせし・・・」 と、客人に顔を見せた、つもりが; 金田一「???」 部屋には誰もいない。ただ、その客人のものであろう帽子と、机の上の灰皿に置かれたタバコからは、いまだ煙が上がっている。事情がよく飲み込めないでいると、「きゃーーーぁ!」と、女性の悲鳴が飛び込んできた。 金田一がその声の方に向かうと、その声の主は先程の旅館の女中で、トイレの入り口のところでそのまま硬直している。 金田一「君、どうしたんだ?」 女中 「ああ・・・」 女中が指差す方向を見ると、トイレの中には、口から血を吐いて倒れている男性の姿が。女中以上に慌てる金田一君(笑)。 金田一「き、き、き、き、君。この人に見お・・・見覚えは?」 女中 「若林さんです。古館先生のところの若林さんです」 金田一「・・・」 その言葉を聞いて、金田一は絶句した。 那須警察署・取調室 二人っきりの取調室。金田一と、その向かいに座るのは、那須警察署の橘署長である。ここでは署長自ら取り調べなのね… 橘 「金田一耕助?見かけない名前だな。で、職業は?」 金田一「探偵です」 橘 「探偵?」 金田一「ご存知ありませんか。結構、有名なんですよ」 そう言って、金田一は立ち上がって自らの鞄を机の上に置き、そこから大きなノートを取り出し、署長の前に広げた。 金田一「これは今まで僕が解決した数々の難事件の切り抜き帳です」 そこには、金田一の写真が添えられた『本陣殺人事件』,『獄門島』,『黒猫亭事件』の数々の事件記事が貼り付けられていた。そのスクラップを見て、続いて金田一の顔を見上げる署長。加えて金田一は、大量に鞄の中に入れて持ち歩いていた『本陣殺人事件』の小説の中の一冊を取り出し、署長に差し出した; 金田一「それからこれは僕の友人が僕の話を元にして書いた小説。まぁ、 ちょっと良く書かれすぎている所もあるんですけどねぇ〜(^^;)。 あははは(笑)」 そう言って、金田一は右手で髪をボリボリとかきむしった。と、同時に金田一の頭から、大量のフケが雪のように署長が手にしていた小説の表紙に降りかかった。 橘 「・・・(絶句)」 金田一「あ、差し上げます。たくさん持ってますから。あっ、一冊じゃ 足りませんか?じゃぁ」 と、もう一冊、鞄から取り出す。がもちろん橘署長はそんなことで絶句したわけじゃなく; 橘 「いや・・・」 と言うのがやっとの様子。しばしの沈黙。そして今度は金田一の方から署長さんに向かって唐突に1つの申し入れをします; 金田一「署長さん、できたら僕を雇ってもらえませんか?」 橘 「え?」 金田一「それ読んで頂ければ分かりますが、仕事なら結構できます。僕 は悔しいんです、自分の依頼人が殺されてしまったことが。こ れは、犯人から僕への挑戦なんです、お願いします!」 と、先程、フケを大量放出させた頭をぐっと署長に向かって突き出すようにして、頭を勢いよく下げた。署長が何も言えないでいると、そこに取調室の扉が開く音がした。きちんとした身だしなみの、眼鏡をかけた老紳士が中に入ってくる。 橘 「あっ、古舘さん、この度は・・・」 と、署長がその老紳士に向かって挨拶をすると、老紳士は署長への挨拶もそこそこに、金田一の正面に立って、内ポケットから名刺を取り出し挨拶をした; 古舘 「あの・・・わたくし、若林の上司の・・・古館と申します」 金田一はその名刺を受け取り、替わりに先程、署長に差し出そうとしたもう一冊の小説を古舘に向かって差し出した。 古館 「???」 金田一「(笑)」 やっぱりかわええーよなぁ、この笑顔…(^^;) 那須警察署・廊下 金田一は、古館と二人っきりになったところで、若林からの手紙を見せた。その手紙を読み終わった古舘は、大きなため息を一つついた。 金田一「僕は不思議でならないんですが、犬神家で何か起こる気配があ るとしても、若林さんはどうしてそれを知っていたのか?この 手紙を見ると、若林さんはそのことについて、酷く確信がある ようですが…」 古舘 「実は・・・私の事務所の金庫には、犬神佐兵衛の遺言状がある んです」 金田一「その遺言状がどうかしたんですか?」 古舘 「誰かに読まれた気配があるんです」 金田一「それが若林さんだと?」 その金田一の質問に、古舘は黙って頷いた。 古舘 「金庫は私と、助手の若林君しか開けられなんです。私はかねが ね、あの遺言状が発表されると、何か一騒動起こらねばよいな と、胸を痛めていたんですがね。しかし、とうとう、佐清君が 復員してしまった」 金田一「何か、変わったところがあるんですか、その遺言状に?」 古舘 「非常に!!!亡くなった犬神佐兵衛翁が遺族の人々をお互いに 憎しみ合うように。はっ!!!」 金田一「・・・????」 そうして、古舘は、静かに犬神家の現状を金田一に語って聞かせた。 古舘 「現在、犬神家には、長女の松子様奥様を筆頭に、腹違いの妹で 次女の竹子さんとそのご家族。そしてこれまた、腹違いの三女 梅子さんとそのご家族がおります」 正しくちょうどその頃、犬神家にいる竹子とその家族は、佐清が復員してから、すぐに那須に戻らず、松子と二人で東京の別邸に籠もったままであることに不満を漏らしている。さらに、娘の小夜子が妹である梅子の長男 佐智と懇意にしているため、財産分与の事を考えると面白くは無い。 一方のその梅子とその家族も、遺産相続の話を、維持の悪そうな表情で話をしている。相続額は単純に等分しても一人一億は下らない。そこに小夜子が佐智の所にやってくると、その遺産の分け前を期待する梅子達は、彼女を丁重にもてなす・・・ そんな互いの駆け引きばかりが行われているのが犬神家の真の姿なのである。 話は戻って、警察署の廊下の金田一と古舘弁護士。 古舘 「若林君は犬神家の誰かに頼まれて遺言状の写しを取った。とこ ろがその結果、養女の珠代さんの命が狙われるようになった。 若林さんはそれをあなたに・・・」 金田一「珠代さん???あの、ボートの一件ですね」 古舘 「3回目なんです」 金田一「3回目?」 古舘 「1度は珠代さんの夜具の中に蝮が。2度目は自動車のブレーキ に細工され、危うく崖から落ちそうになりましたところ、毎回、 間一髪のところで、下男の猿蔵に助けられているんです」 金田一「それと、あの珠代という女性が、遺言状の中で何か?」 古舘 「珠代さんは、絶対、有利な立場なんです。ですから、彼女が死 ぬでもしないかぎり、犬神家の相続者は、あの人の意思一つで 決まることなんですよ」 金田一「・・・」 犬神邸・中庭 その頃、犬神家の屋敷の中庭で、網の修理をしている猿蔵の元に、先程の礼を言いに珠代がやってくる。亡くなった佐兵衛から「命に換えてもお嬢様を護れと頼まれたんだ」と告げる。そう言われた珠代は; 珠代 「お前の作る菊は、いつも綺麗ね…」 と言い、その言葉に、猿蔵は嬉しそうに笑った。 那須警察署・廊下 金田一と古舘の二人が、那須署から引き上げようとしたところに、ちょうど署長が所長室から(?)出てきて、金田一に話しかけた。(ということは、既に金田一をある程度信頼しているってことなのかしらん?ここでは新聞記事の効果ってことでいいのかな?); 橘 「金田一さん、解剖の結果が出ましたよ。被害者の肺臓から毒物 が発見されました」 金田一「肺から?」 橘 「座敷に残っていた吸いかけのタバコに薬物を仕込んでたんです なぁ…」 金田一「他のタバコは?」 橘 「他の?いや、毒物が検出されたのは、その1本きりです」 金田一「ふーん…。(頭をかきながら)ふーん。犯人は、被害者がいつ 死んでも良かったわけだ…」 橘 「で、金田一さん、犯人は誰です?」 金田一「署長さん、いくら僕でも、まだ分かりませんよ」 橘 「えっ?分かんないんですか?!あんた本当に名探偵なんですか?」 金田一「ふふ、ふふふふふ・・・」 金田一は、笑ってさらに頭をボリボリとかき始めた。 |