消費者問題

 

1.様々な事例

 消費者問題の具体例としては次のようなものがある。これらの事例はいずれも消費者が十分な商品情報を持つことができないということから発生した。

森永ヒ素ミルク事件 1955年  12000人が発熱・嘔吐。133人死亡
スモン病発生 1955年  整腸剤キノホルムを飲んだ11000人が手足のしびれ、運動傷害。500人以上死亡。個人的な話ですが、私の父も被害者の一人でした。
サリドマイド事件 1962年  睡眠剤を飲んだ妊婦から、1000人を超える身体障害者が生まれた。
HIV訴訟 1989年  血液製剤を投与された患者2000人がHIVに感染。
その他の事例    カネミ油症事件(1968年)、サラ金問題、霊感商法、キャッチセールス、催眠商法、振り込め詐欺(2004年)、耐震強度偽装(2005年)、船場吉兆などの産地偽装(2008年)

1962年、弱い立場にある消費者に対して、ケネディは次のような「4つの権利」が確立されるべきことを説いた。

(4つの権利)

安全である権利 「飲んだら死んじゃった」では困ります。
知らされる権利 偽装はだめですよ。
選択できる権利 競争的サービス・競争的価格であること。
意思が反映される権利 政策に消費者の声が反映されること。

 この後、消費者運動が活発に展開されるようになった。

 

 

2.消費者保護政策

  次々と現れる新手の事件に対して、日本では消費者を保護する次のような立法がなされた。

消費者保護基本法 1968年 弱い立場にある消費者を保護し、強い立場にある事業者と台頭にする精神で作られている。これにより、国民生活センターや、全国に消費生活センターが設立された。→ 消費者基本法(2004年)
クーリングオフ制度 1972年 Cooling-offとは、「頭を冷やす」という意味。訪問販売などで商品を買った場合、購入した後8日間以内であれば契約を解約できる。ただし、自分で電話やインターネットで申し込んだ場合や、通信販売では適用されjない。
製造物責任法
  (PL法)
1994年 今までは民法709条により、相手方の過失により損害が発生した場合のみ賠償責任が認められた。これに対して、PL法は製造者に過失がなくても、製品に欠陥があったことを立証すれば賠償責任が認められるようになった(無過失責任制度
消費者契約法 2000年 次のような場合は契約を解除できる。
・「必ず値上がりします」と断定的な言い方をされ 契約をした場合。
・重要事項に嘘の説明があって契約をした場合。
・「帰ってください」といっても帰らないでやむなく契約をした場合。

 

 

3.これからの消費者 

 これからの消費者に求められるのは次のような消費者である。

@契約をするという行為の持つ重要性を再認識する。

Aコマーシャルに踊らされない確かな目を持つ。

Bグリーンコンシューマーとして環境問題にも配慮する。

 万が一トラブルに巻き込まれたら、
「決して泣き寝入りしない」
「消費生活センターに相談する」
「弁護士の無料相談を利用する」(ちなみに弁護士に対する相談料は有料でも30分5000円である)、
といった対策を取ることが大切である。

 これからは、保護される消費者ではなく、資源配分を決定する力を持つ「自立した消費者」となることが大切である。なお、消費者保護基本法(1968年)は、2004年に「保護」の2文字がはずされ、「消費者基本法」となった。

消費者保護基本法(1968年)→消費者基本法(2004年)

 

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