各国の政治制度


 これまで述べてきた民主主義の原理が、実際にどのような政治制度として生かされているのであろうか。大きく議院内閣制と大統領制に分類できる。

 

1.イギリスの議院内閣制

 議院内閣制はイギリスで発達した。憲法によって手足を縛られた国王は、当然の成り行きとして次第に政治に興味を失っていく。「政治のことはおまえたちに任せる。よきに計らえ」と言ったかどうかは知らないが、ともかく政治の第一線から退いていく。そこで国王に代わって政治を任されたのが、議会の多数派によって組織される内閣である。こうして18世紀の中頃、ウォルポール内閣のとき議院内閣制が成立した。 イギリスの議会は、上院と下院から構成される。


イギリスの議会

上院
 貴族院とも呼ばれる。首相の助言に基づき国王が任命した一代貴族、世襲貴族の一部など、約800名ほどの非民選議員で構成される
下院
 小選挙区制で選ばれた議員650名(任期は5年)で構成される。選挙で選ばれるわけだから、上院より下院のほうが優位にあるべきだが、下院優位の原則が確立したのはようやく1911年に議会法が成立してからである。2大政党として保守党労働党がある。

 議院内閣制には重大な欠陥がある。議会の多数派が行政をも担当することから、立法権と行政権が癒着を起こし、三権分立が不徹底になる点である。

 

 

2.アメリカの大統領制

 この点、大統領制は三権分立を徹底させ、互いの権力の「抑制」と「均衡」をはかっている。

アメリカの政治制度

立法権
立法権は議会に属し、行政の長である大統領といえども法案提出権はない。その代わり、議会の作った法律が気に入らなければ大統領は拒否権を発動することができる。これはアメリカ人には、独立以前から高い税金をかけるイギリス議会に対する不信感が根強く、議会を信用しない雰囲気があったからである。ちなみに、日本の国会で成立する法案の約9割が政府提出法案である。
行政権
各省の長官は議員を兼ねることはできず、大統領にのみ責任を負うとされ、ここでも立法権と行政権の分離が徹底している。大臣の過半数が国会議員でなければならなず、しかも連帯して国会に責任を負う日本の議院内閣制とこの点でも大きく異なる。
司法権
司法部には違憲立法審査権が与えられ、立法権の行き過ぎをチェックしている。違憲立法審査権はイギリスにはなかった制度である。
政党
2大政党として、民主党と共和党がある。民主党は中道左派ともいわれ、労働者や進歩的知識人の支持が強い。一方、共和党は中道右派ともいわれ、資本家の支持が強く保守的である

 

 

その他の政治制度

 国によっては大統領と首相の両方がいる場合がある。その場合は実質的権限は一方のみにあって、他方は象徴的存在(飾り?)と思えばよい。例えば、フランスでは実質的権限は大統領にあり、ドイツでは首相にある。

 また、中国のように三権をすべて共産党が握っている国もあるが、このような国を民主主義国家と呼べるかは疑問であろう。共産党がすべての権限を握る根拠は、共産党こそが歴史の真理を知っており、民衆を誤りなく導くためにはその共産党がすべての権力を持つべきだからとされる が、果たしてそうか。

中国の政治制度

立法権
全国人民代表大会(全人代)。毎年1回開く。1院制で解散はない。議員の任期は5年。
行政権
国務院が日本の内閣に当たる。
司法権
最高人民法院


講義ノートの目次に戻る


トップメニューに戻る