内閣

 

1、権能

 行政とは、国の統治権から立法と司法の作用をを引いた残りと定義される。
内閣の仕事として憲法第73条は、

1,法律の執行
2,条約の締結、 
3,予算の作成 
4,政令の制定、

 などを定めている。このほか、最高裁判所長官の指名(6条)や長官以外の最高裁判所裁判官の任命(79条)、下級裁判所の裁判官の任命(80条)なども内閣の権能とされる。

 閣議は週2回、火曜日と金曜日に開かれる。首相官邸の閣議室で非公開で行われる。テレビニュースでよく映るシーンは閣議室ではなく、閣議の前の応接室での様子である。閣議の実質的な議論は前日の事務次官レベルで事前に調整されており、閣議そのものは10分程度で終了する。花押を押すだけのサイン会になっている。

 

2、国会と内閣の関係

(1)立法国家の時代
   憲法は、国王の専断政治を抑制するところから生まれた。この経緯からも明らかなように、本来、立法権と行政権の関係は立法権の方が上位にあるべきだと考えられていた。それにより初めて行政を民主的にコントロールすることが可能になるからである。こうした考え方は立法国家と呼ばれる。

 現在の日本国憲法では、「内閣総理大臣は、国会議員の中から国会の議決で、これを指名する」(67条)と定められ、内閣は「国会に対し連帯して責任を負ふ」(66条)ことになっている。そして、もし衆議院が不信任決議をすれば、内閣は総辞職をするか、または10日以内に衆議院を解散しなければならない(69条)。

 

(2)行政国家の時代
 もともと議院内閣制は、国会の信任を基礎として内閣が行政権を行使する制度である。したがって、本来の趣旨からすれば、議会のほうが内閣よりも大きな力をもっていなければならない。しかし、次のような理由から、しだいに内閣が力をもちはじめた。

 第一に、国会で内閣不信任決議がなされる見込みはほとんどない。これまで30数回の不信任案が出されて、実際に可決したのは4回だけである。

(注)不信任決議による衆議院の解散
 1948年 慣れ合い解散 、 1953年 バカヤロー解散 、 1980年 ハプニング解散(大平首相不信任案に対して、前回の首相争いに敗れて福田派などが欠席したため可決された)、  1993年 うそつき解散(宮沢喜一首相が政治改革の約束を果たせず、自民党内の対立から不信任案が可決された) 。

 第二に、社会が複雑化するにつれ、法案の大半は専門化した官僚が立案し、内閣から提出されることが一般化した。この結果、国会議員の法律を作る能力が著しく低下してしまい、国会の地位低下を招いた。

 第三に、19世紀末になって社会の変化が激しくなるにつれ、法律は一般的な目的だけを定め、具体的な内容は行政機関が出す政令・省令などの命令や規則などで確定することが一般化した。この結果、国会より内閣の力が著しく増大した。  以上のような理由から、今日、国会と内閣の力関係は行政権が優位に立っている。このような社会は行政国家と呼ばれる。

 

(コラム)7条解散
 内閣総理大臣には、国会をいつでも好きなときに解散できる権限が与えられている。憲法第7条には、内閣の助言と承認により、天皇の国事行為として衆議院を解散することがうたわれており、これを用いるのである。このような解散のしかたを7条解散という。
 一般に、国会議員は解散を嫌がる。
お金はかかるし、体力は消耗するし、下手をすれば落選してただの人になるかもしれないのである。よく、「衆議院を解散する」と宣言されたとたんに、「バンザーイ」などとカラ元気を出して叫んでいる姿がテレビに映し出されるが、あれは自分に気合いを入れるため以外のなにものでもない。

 

 

 

.行政委員会について
 行政委員会、独立行政法人、特殊法人についてわかりにくいという意見が毎年寄せられるので、Q&Aの形で以下に示しておきます。

(Q1)普通の行政機関と行政委員会はどう違うのか?
 普通の行政機関とは、簡単に言えば公務員試験を受けて合格した人たちが行っている仕事です。たとえば、市役所の人、大阪府庁の人、財務省の人、文部科学省の人、厚生労働省の人・・・などです。

 一方、行政委員会は、これらの組織とは別に、
@政治的中立を必要とする分野(選挙管理委員会、教育委員会、国家公安委員会、など)
A専門的知識を必要とする分野(公正取引委員会、公安審査委員会など)
B利害関係の調整を必要とする分野(公害等調整委員会、中央労働委員会など)
 に設けられます。

 選挙管理委員会や教育委員会が一般の行政と隔離されるのは、政治の横やりを排除し、中立性を保つためです。理由は説明するまでもないと思います。
 


(Q2)合議制とは何か?
 これらの委員会のメンバーは、数名で構成され、その下に実務を担当する膨大な人数を抱える事務局が存在します。
 たとえば大阪府教育委員会の教育委員は、 全部で6名で構成されています。この人たちは、基本的には公務員試験を受けることなく、知事に推薦されてこの地位につきます。

 (参考)
 大阪の教育のあり方をどうするかは基本的にこの6人が決めていきます。たとえば9学区制を1学区制にするとか、工業高校を工科高校にするとか、どこそこの高校に 文理学科や国際科を設置するとか・・・・などです。この6人 で構成される教育委員会の下に教育委員会事務局があり、実務を担当しています。一般の人が教育委員会といっているのは、この事務局のことです。

 ほかの行政委員会も同様です。公正取引委員会や選挙管理委員会などについて、ネットでいろいろ検索してみるといいでしょう。



(Q3)準立法的機能とは何か?
 代表的なのは人事院ですね。人事院は公務員の給料、勤務条件、採用試験などさまざまな仕事をしていますが、「人事院規則」を作ることができます。人事院規則は給料・採用その他のことを法律の委任を受けて自由に作ることができます。つまり、準立法的な機能を有しているわけです。



(Q4)準司法的機能とは何か?
 公正取引委員会が一番わかりやすいでしょう。公正取引委員会は企業の行動が独占禁止法に違反していないか目を光らせています。先日も、鉄鋼や液晶パネルで価格カルテルがあったと新聞報道されていました。調査をして、もし独禁法に違反していれば摘発や刑事告発を行います。法律に違反しているかどうかを判断するという意味で、準司法的機能を有していると表現するのです。


 

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