北アイルランド紛争

 

 北アイルランド問題は宗教戦争ではない。領土問題である。17世紀、イギリスのクロムウェルはアイルランド島を植民地にした。その後、スコットランドなどから多くのイギリス人が移住した。
 しかし、もともとアイルランド島は原住民のものである。やがてイギリスに対して土地の返還を求める運動が起きた。その牽引役となったのがIRAである。その結果、1949年、アイルランドは独立を達成した。ただし、その際イギリス移民の多い北部はイギリス人のために残すという条件付きであった。

 ところが、その北アイルランドでまた問題が起こった。 対立点を要約すると次のようになる。

原住民(カトリックの人々)  北アイルランドの35%しかいない。イギリス移民の人々(プロテスタント)によって差別や不公平な扱いを受ける。そこで、アイルランド派の人々は1969年にテロ組織としてのIRAを結成し、北アイルランドからイギリス派の人々を追い出し、アイルランド共和国に統一する運動を展開した。
イギリス移民の人々(プロテスタント) 北アイルランドの65%を占める。アイルランド派のテロ組織に対して、イギリス派の人々もテロ組織を作って対抗し、果てしない殺戮が繰り広げられた。


 アイルランド派の人々とイギリス派の人々との抗争は、すでに30年以上続いている。しかし、お互いに「カトリックだから」とか「プロテスタントだから」とかいった宗教上の理由で殺しあいをしているわけではない。問題の本質は、土地の領有権をめぐる争いである。

 1998年、イギリスとアイルランドの間でベルファスト合意が結ばれた。しかし、まだ完全な問題解決には至っていない。

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