金融政策 資金が余っているところから足りないところへ融通することを金融という。資金が余っているところは家計であり、足りないところは政府と企業である。 家計から企業・政府への資金の流れには二つのルートがある。 経済理論の習得のためには、常に現実と理論を対応させて考えることが大切である。日本の銀行の資金量を大きいものから並べると次のようになる。 (データは2019年)
ちなみに2007年に民営化された「ゆうちょ銀行」の資金量は195兆円である。 (補論)株式と債券はどう違うか? 株式と債券の違い
通貨 (M1)=現金+預金
2024年7月現在の統計は以下の通りである。 (注)CD(譲渡性預金)とは、他人への譲渡が可能な無記名の預金。日本では最低預金額は5000万円以上で、企業の決済用に利用される。 これから (これらのデータは、日本銀行のホームページから最新のデータを得ることができる) なお、マネーストック(=M3)のうち、日銀が直接コントロールできる通貨量(=ハイパワードマネー)は、現金通貨113兆円と、支払い準備のための通貨 (預金量の約1%)にすぎない。通貨の大半を占める預金は、基本的に日銀は操作できない。なぜなら、貸し出しが増えないと信用創造がおこなわれず、通貨は増えないからである。
ところで、113兆円のお金は銀行に預金され、また貸し出しされる。こうして預金と貸し出しを何回も繰り返すことによって、銀行全体として膨大な預金が蓄積され
ていく。これを信用創造という。 信用創造額=(最初の預金額/預金準備率)−最初の預金額
4.金融政策 金融政策とは日本銀行が行う政策であり、具体的には次の二つの方法がある。
さらに、金利は需要と供給を反映せず大蔵省の指導で一定に定められ、銀行間の金利競争は制限されていた。預金金利に差がないから、預金獲得競争は預金者への粗品で行なうほかない。しかし、その粗品ですら大蔵の指示で決められていたという笑い話のような本当の話がある。 この結果、競争力のない非効率な金融機関は淘汰されることなく温存された。しかし、国際化の進展とともに、ビッグバンで鍛えられたアメリカの金融機関との競争が激しさを増すと、日本の金融機関は苦況に立たされた。動物にたとえれば、日本の銀行は保護されたペットであり、アメリカの銀行は弱肉強食の野生動物である。ペットと野生動物が同じ檻の中に入れられればどうなるか。国際競争に勝ち抜くためには、日本も金融の自由化に踏み切らざるをえなくなった。 こうして1980年代に入り、まず金利の自由化が行なわれ、さらに1996年の日本版金融ビッグバンにより業務範囲の自由化が一気に進んだ。1998年からは、それまで証券会社でしか買えなかった投資信託が銀行の窓口でも買えるようになった。また、金融機関の再編が旧財閥の枠を超えて急速に進み、三井住友 銀行、三菱UFJ銀行、みずほ銀行の3大メガバンクが誕生した。。さらに、金融持ち株会社も解禁された。 ところで、金融システムは社会的なインフラとしての役割を担っている。もし、金融システムが損なわれれば、経済活動は大混乱に陥る。そこで、1971年に、銀行が倒産(破綻)した場合でも預金者の預金を守るための預金保険制度(ペイオフ)が導入された。ペイオフとは「払い戻し」という意味である。これは金融機関が破綻した場合、預金保険機構が 決済用の当座預金の全額と、預金者一人につき元本1000万円とその利子を保証しようというものである。これにより、いざというときの信用秩序の維持を図ったのである。 しかし、バブルが崩壊し、経営破たんが噂される金融機関が増えると、政府はペイオフを凍結した。これにより預金は全額保護されることとなった。理由は、ペイオフ制度の下では、預金が元本1000万円とその利子までしか保護されないため、預金者が中小の金融機関から、より安全な大きな金融機関に預金を移し、基盤の弱い金融機関が経営破たんに追い込まれることが心配されたためである。 その後、不良債権の処理が終わって金融システムが安定した2005年に、ペイオフ凍結は全面解除されている。
6.バブル崩壊後の金融政策 一般に、金融政策が効果があるのは、
金融を緩和することで日本全体のマネーストックが増加し、最終的にはそれが企業の投資活動を活発にするからだと考えられる。しかし、金利にたいして企業投資がどのように反応するかは、その時の経済情勢による。
2024年3月、日銀は11年間にわたる大規模な金融緩和策を終えると発表した。マイナス金利を解除して17年ぶりの意利上げに踏み切った。その背景には、円安の進行を食い止め、国内の物価上昇を抑え込む狙いがあった。しかし、金利の引き上げは国内経済を悪化させる。日銀の今後の政策に注目が集まる。 (補論) マイナス金利とは何か? https://blog.goo.ne.jp/minami-h_1951/e/3a9539c4671f7c47bb24404797b09a89 (補論)日銀の金融政策と株価 https://blog.goo.ne.jp/minami-h_1951/e/21cee9cb502327a969b17630f1a5b2b5 (補論)MMTとは何か? https://blog.goo.ne.jp/minami-h_1951/e/c55ec05e53a8baaccc451b166099e43c 講義ノートの目次に戻る トップメニューに戻る |