法の下の平等

 

  近代に入って初めて人間の平等を説いたのはルターである。彼はそれまでの領主と農奴という身分制度を否定し、「神の前の平等」を説いた。日本国憲法は第14条で、すべての人間は法の下に平等であるべきことをうたっている。しかし、憲法でこのような規定があるということは、現実はその逆だということでもある。

 

1、(判例)尊属殺人事件

事実と争点  実父から10年以上にわたって夫婦同様の生活を強いられ、5人の子供まで生まされた女性が、ある日思い余って実父を絞殺し、尊属殺人に問われた事件である。刑法200条尊属殺人の規定が適用されれば、「死刑または無期懲役」である。尊属殺に関する刑法200条の規定が、刑法199条の普通殺より量刑を重くしているのは、憲法14条「法の下の平等 」に反するかを巡って争われた。
最高裁判決  最高裁は多少のニュアンスの違いはあるが、結局14対1で、刑法200条は違憲であると判決を下した(1973年)。これは最高裁が下した戦後初の違憲判決であった。

 刑法200条は、その後22年間改正されず放置されたが、1995年ようやく削除された。

 


2、さまざまな差別と法の下の平等

外国人差別 (1)増加する外国人
 日本には、韓国・北朝鮮人(63万人)、中国人(49万人)、ブラジル人(29万人)など、日本国籍を持たない人たちが約197万人いる(2004年)。これは日本の人口の1.6%にあたる。彼らの中には、日本に定住し、日本人と同じように税金を納め、日本人と変わらない生活を送っている人も多い。

(2)憲法の規定
 
このような外国人にたいして日本国憲法は、どのような形で人権保障をしているのであろうか。
 もちろん、憲法が個人を個人として尊重するとしていることから、思想・良心の自由や学問の自由などは当然に認められし、また、人種・信条などによって差別されないことも当然である。判例もそのような立場に立っている。

 しかし、憲法14条には次のように書いてある。
 「すべて国民は、法の下に平等であって、人種、信条、性別、社会的身分または門地により、政治的、経済的または社会的関係において、差別されない。」
 注目してほしいのは、主語と述語である。「すべて国民は・・・差別されない」となっているのだ。このことはその反対解釈として、「国民でないものは、・・・差別されてもしようがない」ということを憲法自身が容認していることを意味する。

(3)外国人に保障されない人権例
 「国民」には認められている権利が、日本国籍を持たないために認められていない権利として次のようなものがある。、

 @外国人に対する参政権(選挙権・被選挙権)は公職選挙法で認められていない。
 Aまた、多くの費用をともなう社会権についても外国人には認められていない。
 B日本国籍を持たない人が公務員への就職を希望しても受験資格がない(国籍条項)場合もある。
 
C就職アパートの入居をめぐる差別事件などは依然として残っている。また、差別落書も後を絶たない。

 (注)最高裁判所は、国政選挙への参加は憲法15条があるから認められないが、地方選挙について 憲法は外国人の参政権を禁止していない(93条)としている。
 

同和問題  全国でいまなおいわれなき差別に苦しむ人々が100万人以上いる。就職や結婚での差別は、いまもって少なくない。とくに結婚をめぐる差別は深刻である。人間としてみんなが平等であるという当たり前のことがなぜ実現できないのか。それがこの問題の持つ歴史の根深さかも知れない。問題解決のために、息の長い運動が必要であろう。
アイヌ民族  日本が単一民族であるというのは誤解である。アイヌ民族は、独自の 言語と文化を持つれっきとした一つの民族である。アイヌ民族は、現在北海道だけでも約2万4000人いると言われる。この人たちに対する差別をなくすることも、緊急の課題である。
男女差別  女性の社会的地位を見ればその国の民主主義の度合いが分かるといわれる。年令階層別労働力率を国際比較すると、日本はM字型カーブを描き、まだまだ子育ての負担が女性に集中していることをうかがわせる。男女雇用機会均等法(1985年)ができて、男女別定年制や結婚退職制といった不合理な差別は同法第11条で明確に禁じられた。女性の社会進出がますます進む中で、これを支援する社会的体制の整備が望まれる。
一票の価値  衆議院定員訴訟で最高裁は1976年、一票の価値の格差が5対1に達しているのは憲法14条に違反するという画期的判決を下した。しかし、その後の判決で3対1までを許容する趣旨の判断を示したが、これには合理的な根拠はない。学説で広く支持されている2対1を越えるものは違憲とすべきであろう。

 人間には、他人よりも抜きんでたいという心情の裏返しとして、他人に対する優越感を持ちたいといういやらしい気持ちが、心のどこかに宿っている。ホッブズは「人間は優越感以外の何ものをも楽しむことはできない」と述べているが、差別との闘いは私たち一人一人の永遠の課題といえる。

 

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