若者が就職できない理由

 

 


1.若者の2分の1が非正規雇用という現実

 現在、日本の労働力人口は約6600万人。そのうち働いている人が6200万人余り、、失業している人が300万人余りである。働いている人のうち、自営業などをのぞいた雇用者数は5 200万人(正社員など正規雇用者3300万人、非正規雇用1900万人)である。

 この統計からもわかるように、実に働いている人の約3分の1以上が非正規雇用(パート、アルバイト、フリータ、派遣社員、契約社員、嘱託)であり、とくに若者においては約2分の1が非正規雇用といわれる。

 非正規雇用は収入が少なく、身分も不安定である。年収300万円以下では結婚もできないという内閣府の統計もある。教育現場では生徒一人ひとりに「努力して正社員になれ」と発破をかけるが、そうした激励もむなしく響く。なぜなら、それでは社会全体の問題の解決にはならないからである 。

 自分が正規雇用にありつけば、ほかの誰かがはじき飛ばされる。少ない椅子を巡る椅子取りゲームなのである。なぜ、こうした社会になってしまったのか。

 

 

2.雇用減少の背景

 雇用機会が少ない根本原因は日本の不景気にある。そんなことは誰でも知っている。問題は、日本がなぜその長期不況から脱出できないかである。

 ケインズによれば、国内の雇用量を決めるのは有効需要(=総需要)の大きさである。このサイトをごらんの方には常識だと思うが、念のためおさらいをしておくと、

有効需要=消費+投資+政府支出+(輸出−輸入)

で示される。現在の日本経済は、20兆円程度(?)のデフレギャップが生じていると言われる。すなわち、完全雇用を達成するには、あと20兆円 程度(?)の有効需要が必要だというわけである。

 政府がこれだけ財政赤字で需要を注入しているにもかかわらず、なぜデフレギャップが生じるのか。その最大の理由は、企業の海外進出である。日本企業が海外展開する理由として一般に言われるのは、円高対策・海外の安い労働力の確保・消費者に近いところで生産するため・・・、といったところであろうか。いずれの理由にしろ、企業は日本国内で設備投資をしないで海外で生産活動を行う。その結果、企業の利益は増えても、日本国内の雇用環境はいっこうに改善されない。

 

3.これからの日本社会

 競争は消費者にとって善である。価格が下がり、品質が向上する。しかし、生産者の側からみると競争ほど残酷なものはない。日本が高度経済成長を謳歌し、人口ピラミッドが富士山型をしている間は、国際貿易における日本の優位性が保たれていた。後から後から若くて安い労働力が 労働市場に参入してきたからである。

 しかし、団塊の世代は次第に高齢化していった。しかも、労働組合が終身雇用と年功序列型賃金 を既得権として死守してきたため、限られたパイの中で、結局は若者が労働市場からはじき飛ばされることとなった。

 国際化が進展し、競争が激しくなるなかで、世界の情勢に対応していかないと、日本の活力はますます失われ、若者の雇用機会はますます厳しくなる。

  今の日本には、長期的視点に立った政策が重要である。しかし、それを主張する骨太の政治家が見あたらない。その背景には、もちろん国民の意思がある。

授業こぼれ話に戻る

トップメニューに戻る