首相公選論について
首相を国民が決めるようにすべきだという考え方を首相公選論という。現在の議院内閣制のもとでは、国民の大多数がその内閣を支持していなくても、与党がこれを支持するかぎりは内閣は居座り続けることができる。
こうした政治のしくみが国民の政治的無関心を引き起こしているのではないか、という指摘が以前からあった。そこで、こうした事態を改善するためには、首相公選制を導入すべきだと主張される。首相公選制は是か否か?
首相公選制のメリットとデメリット
メリット |
@首相公選によって国民の政治意識を高め、政治的無関心を克服できるという期待がある。 A現在の制度では、首相になるためには派閥を形成し、派閥の領袖になる必要がある。その結果、政治は国民のことより派閥や、派閥を支持する後援会に重きを置いたものになりがちである。首相公選制を導入すれば、こうした弊害を解消できるのではないか。
B首相を国民が選ぶことによって、首相は自信をもってリーダーシップを発揮できるようになる。 |
デメリット |
@首相も議会もともに国民が選んだものであり、両方とも正統性をもつようになる。特に、首相が少数派政党の場合は、政治が不安定になる。 A首相は「わたしは国民に選ばれた存在である」ということから、舞い上がって自信過剰になり、独裁に走る危険がある。
B 国民が直接選ぶと、結局、演説がうまく人気のある人物が当選してしまい、ヒトラーのような独裁を生み出す恐れがある。ドイツ国民がヒトラーを選挙で選んだという歴史的事実の持つ意味は重い。
特に民主主義が未成熟の国では、大衆迎合的な政策(これをポピュリズムという)が支持されやすく、本当の意味での国民のための政策が行なわれにくい。 |
イスラエルは、世界でただ一つ首相公選制を導入した国であったが、首相と議会の関係が安定せず、首相公選制は3回実施されただけで、2001年に廃止されてしまった。
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