市民革命のポイント

 

 

1.市民革命の意義

 絶対王政下の人の支配(=国王の支配)を倒し、国王も法に従わせる法の支配を確立し、近代市民国家が誕生した。その契機となったのが市民革命である。その意味で、市民革命は政治を語る上で非常に重要な事件である。

 ところが、生徒のほとんどは市民革命の本質が全く分かっていない。
・名誉革命(1688年)、
・アメリカ独立革命(1776年)、
・フランス革命(1789年)
という三大市民革命の名前や、その経過について詳しく知っていても、

「では、市民革命の歴史的意義は?」

と聞くと答えに窮する生徒がほとんどである。
 これはおそらく、世界史で詳しく習いすぎて(フランス革命だけで10時間くらいかける進学校もある)、一番大切なことが何か理解されないままになっているからと思われる。
 一般的にセンター試験で出題される知識と、本当に学ばなければならない知識の間にはギャップがあるが、そのギャップがこれほど大きい例も珍しい。

 では、市民革命の意義とは何か。簡単に言えば次のようにいえよう。

 

(市民革命の意義)

市民革命によって社会の政治構造が人の支配から法の支配に変わった。

 

  

 このことを図示すると次の通りである。

(人の支配 )

国王⇒法⇒人民      

(法の支配

法⇒国王⇒人民   


 つまり、民主主義国家とは、最高権力者を法に従わせる政治形態であり、その法(=憲法)を国民が作った国家のことである。したがって、憲法を最高権力者が作ったものであったり、憲法の上に最高権力者がいたりする国家は、民主主義国家とはよべない。

 

 

2.革命の意味

 革命を英語で言うと revolution である。この動詞は revolve である。
revolve とは「ひっくり返す」「回転させる」という意味である。すなわち

 

支配するものと支配されるものがひっくり返る

 

 これが革命の意味である。
上の図を見ていただきたい。国王と法の位置が入れ替わってひっくり返っている。だから「革命」なのである。ロシア革命(1917年)も革命である。なぜなら、支配していた資本家と、支配されていた労働者の関係がひっくり返り、労働者が権力を掌握したからである。

 一方、クーデターは「回転しない」点で革命とは異なる。たとえば支配している兄を弟が殺し政権の座についた。これは革命ではない。支配するものと支配されるものが回転していないからクーデターである。

 

 

3.自然法と憲法

 国王の発した命令が即法となっていた絶対王政に代わって、なぜ国王も法には従うべきとされたのか。
 その最大の理由は

 「自然界に法則があり、みんながそれに逆らえないように、人間社会にも自然法という見えない法がある。人を殺すな、他人のものを盗むな、などは代表的な自然法である。だから、国王も自然法に従わなければならない。」

 ということである。
そして、憲法とは自然法を発見し、実定化したものなのである。これが英米法基本的な考え方であり、日本では東大法学部が英米法の流れをくむ。(ちなみに、法は人が作ると考えるのが大陸法の特徴である。)

 

4.アメリカ独立革命が市民革命である理由

 市民革命によって、「王政を倒し市民が政治権力を握る社会を作った」というのは、名誉革命やフランス革命についてはよく分かる。しかし、アメリカの独立が なぜ市民革命の一つに加えられるのか。

 理由はこうである。18世紀のアメリカはイギリスの植民地であった。ところが、イギリス名誉革命の果実は植民地には及ばず、権利章典の恩恵は受けられず、議会へ議員を送ることも参政権も与えられていなかった。植民地アメリカはイギリス国王の私有地であり、実質的に絶対王政の頃とかわらない統治が行われていた。

 ところが、アメリカは独立によって、英国王の政治をはねのけ、市民が権力を握り、憲法を制定し、法の支配を実現した。これは立派な市民革命である。このような理由から、アメリカ の独立も市民革命の一つといわれるのである。

 

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