大阪刑務所見学記

 

 2006年11月12日、大阪刑務所(大阪府堺市田出井町)で関西矯正展が開かれた。受刑者が作った木工製品、工芸品、靴、衣類などの展示即売がおこなわれる一方、刑務所の中をバスで案内してくれる という。さっそく参加してみた。バスツアーはすごく人気があり、1時間以上も待たされた。

 午前11時、刑務所の門が開かれ、待機していたバスに乗り込む。1台のバスに約40人。バスは敷地の中をゆっくり廻る。刑務所の広さは南北400メートル、東西300メートルあり、周囲は高さ4メートルほどのコンクリートの塀で囲まれている。

 もちろん、バスから降りることは許されない。時々止まって案内係の人がマイクで説明をしてくれる。現在、この刑務所には日本人2600人、外国人400人、合計約3000人あまりが収容されている。

 定員は2700人なので、常に満杯状態が続いているという。受刑者を受け入れるために、ここには刑務官を中心に、作業技官、教育や心理学の専門官、語学専門官、医師、看護士、管理栄養士など約500人の職員が働く。

 大阪刑務所は、何回も犯罪を重ねるいわゆるBに分類される人が収容される。一人の平均入所回数は4.4回で、中には30回服役している人もいる。受刑者の平均年齢は45歳、最高齢は83歳である。

 外国人の受刑者で一番多いのは中国人で、全体の4割を占める。第二位のイラン人を加えると全体の半分以上になる。刑務所内で話される言葉は28言語。中には全く日本語を話せない 受刑者もいる。日本人の平均懲役年数は3年3ヶ月。一方外国人の平均懲役年数は5年7ヶ月だという。

 刑務所内には10棟の細長い2階建ての建物があり、その中には29の工場がある。建物はすべてグレーの色で統一されている。土日祝祭日は作業が休みのため、敷地内には人っ子一人見あたらない。全員、居住棟に収容されているのだろう。

 バスが運動場の前に止まった。刑務所内には、2カ所の運動場と 2つの体育館がある。運動は毎日30分と決められている。毎年、運動会も開かれ、みんな楽しみにしているらしい。

 受刑者の食事は毎日のべ9500食にのぼる。これらを管理栄養士の指導のもとで受刑者が作る。朝食はパン。一人当たりの予算は1日最大411円。イスラム教徒には豚肉を出さない。菜食主義者には野菜だけで作る 。

 風呂は夏は週3回。冬は週2回。60人入ることができる風呂が5つ備えられている。1回の風呂の時間は15分。ランプ を使って後10分、後5分と残り時間を知らせる。下着は朝回収し、その日のうちに洗濯して夕方には届ける。その数、1日1万5000着。これらの仕事も受刑者の仕事である。もちろん、刑務所内には洗濯工場がある。

 わずか20分ほどの見学であったが、生まれて初めて見る刑務所の中は、映画やテレビドラマには見られない重苦しさがあった。見学を終えて外に出ると、野外の特設ステージでボランティアの人が坂本九の「見上げてごらん、夜の星を」をトランペットで演奏していた。塀の中から見る星 空は、彼らにはいったいどんな風に見えるのだろうか。

                          

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