大きな数字の教え方

 

2011年7月


1.小学校で躓く

 『分数の計算ができない大学生』という本が、かつて話題になった。高校教員にとっては、何を今更という感じもする。そんな生徒 は高校生の中にわんさかいる。
割合の計算ができない。パーセントを小数にできない。大きな数字のかけ算ができない・・・・

 嘆いてばかりでは前に進まない。小学校の算数で躓いているなら、それをきちんと教えるのも高校の役目であろう。ここでは、高校の現代社会に出てくる代表的な数値の処理について私見を述べる

 

 

2.大きな数字のかけ算

 大きな数字のかけ算を、どうやって計算したらいいかわからない生徒が少なくない。たとえば、

 1株20円の配当とした場合、3000万株を所有している人は、年間いくらの配当金額を得ることができるか   

 といった計算は、たとえ、全国偏差値が50を越える生徒でもお手上げの生徒が少なくない。私はいつも、次のように計算することを推奨している。

  20円 × 3000 =60000万円

 すなわち、万はそのまま万としておき、数値の部分だけを計算するのである。そうすれば、桁数間違いが少なくなる。
 もっとも、この場合、20を10×2、として まず3000万を10倍して3億円、その2倍だから6億円とするほうが直感的にはわかりやすいかもしれない。

 

 

 

 では次の問題。

   1万×1万は ?

  10,000円 × 10,000円  = 100,000,000 円  (→答 1億円)

  ふつうに計算すれば、上の通りである。ところが、これを実際にやらせるとゼロの数を間違えて、うまく計算できない生徒が少なくない。

 そこで考えた。
1万円札が1000枚なら → 1000万円
1万円札が1万枚なら   → 1億円

したがって、

  1万×1万=1億

 となる。これを覚えておくと、たとえば、

 1坪100万円の土地が1万坪あります。このとき地価総額はいくらか。

  といった問題もたちどころに答えることができる。(答え100億円)

 

 

 

3.土地の広さのイメージ

 ここで、1万坪という数字が出てきたが、これも数値だけではわかりにくい。

    1万坪 = 3万3000平方メートル

とやってみてもやっぱりイメージしにくい。そこで、

 

 1ha =野球場1個の広さ

    =100m × 100m

    =1万平方メートル

    

 と覚えておくのである。そうすれば、3万3000平方メートル=約3ヘクタールは、
野球場3個分くらいかな、とイメージできる。

 ちなみに、皇室が栃木県に持っている専用農場の広さは25haである。

 

 

 

4.お金の量

 われわれが実際にイメージできるお金の量は、100万円くらいのものである。新券の1万円札で、ちょうど1センチになる。それ以上の金額になると、想像するしかない。生徒には次のように説明するとよい。

 

 1万円札を並べると

   100万円 = 1センチ

  1000万円 =10センチ

     1億円 = 1メートル    (生涯所得で2メートルほどか・・・)

  1000億円 = 1キロメートル

     1兆円 =10キロメートル

   700兆円 =7000キロメートル (日本財政の累積債務残高)

   ちなみに、日本列島の長さ(北海道から沖縄まで)が約3000キロメートル

  である。

 

 これは、私が財政を語るときに使う得意ネタである。みなさんも使ってみてください。ついでに、

 

   毎日100万円使って、1兆円を使い切るには何年かかるか?

 

 という問いかけもおもしろい。答えは? 計算してみてください。


 最後に、「日本の財政赤字は国内でファイナンスされているから大丈夫」なんていう俗流評論家の意見がちまたに横行しているが、私はそうしたトンデモ論とは明確に一線を画するものであることを明らかにしておきたい。

 

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