為替レートの話

 

 

 為替レートを説明できる有力な理論は購買力平価説である。 これは、通貨の価値は購買力によって決定されるという通貨の本質を根拠にした考え方である。例えばハンバーガー1個が日本で100円、米国で1ドルなら、為替レートは1ドル=100円と考えられる。この考え方によれば、もし、日本でデフレが発生して物価が2割下落すれば、為替レートは1ドル=80円となる。
 なるほど、バブル崩壊後の20年間に生じた円高は、このような日米の物価変動を考慮すれば納得できる。龍谷大学の竹中正治教授によれば、為替レートはこの購買力平価を中心に、ちょうどゴルフボールがフェアウェイをあっちへ行ったりこっちへ行ったりするように変動するのだという。

 

 為替レートの変動を理解する上で、もうひとつ重要な話がある。今までは日本のファンダメンタルズが改善すれば円が買われて円高になると教えられてきた。したがって、日本の景気が回復すれば円高になるはずだった。しかし、これも現実と異なる。日本がずっと不景気であったにもかかわらず円高は進んだ。実は、景気が良くなれば円高になるという考え方も間違った考え方なのだ。
 世界的にみれば、日本円は世界が不景気の時に買われ、世界が好景気になると売られるという「法則」があるらしい。日本は世界最大の純債権国である。だから、世界経済が不景気になると、世界の投資家はリスクを避けるために日本円を買い円高になる。一方、世界の景気が上向き始めると、円を売って有力な投資先に資金を移動するため円安になるというのだ。

 以上をまとめると次にようになる。

法則@
 長期的な為替レートを決定するのは「一国の国力」などではなく、物価の動向である。日本がインフレになれば円安になり、デフレになれば円高になる。

法則A
 日本円は世界が不景気の時に買われ、世界が好景気(従って日本も好景気)になると売られる。

 

 それにしても、輪転機でドルを刷りまくって、毎年多額の貿易赤字を続けるアメリカ のドルが、なぜ依然として国際取引で使われるのであろうか。長年の疑問であったが、最近ようやくこの謎が解けた。その理由とは、いったん基軸通貨として広まった通貨にはある種の「慣性の法則」が働くからだという。
 貨幣には、交換手段としての機能と価値貯蔵手段としての機能があるが、ドルは価値貯蔵手段としては不適格でも、交換手段としては優れた機能を持っている。ひとびとは、価値貯蔵手段よりも交換手段としての機能を優先しているのだ 。

 為替レートの動きは緩慢である。上下を繰り返しながら、ゆっくりと変動し、気がついてみると大ヤケドいう事がしばしばある。カエルを熱湯に入れるとすぐ飛び出して助かるが、ぬるま湯に入れて徐々に熱すると逃げるタイミングを失って死んでしまう、というたとえ話に似ている。為替レートの変動幅が1円というと大したことがないように思われるかもしれないが、トヨタ自動車が1円の円高で約 300億円の損失が出ると聞けば、やはりただ事ではない。

 米ドル/円相場は、1ドル75円までいった後、120円台まで円安になった(2015年3月末現在)。今後の円相場はどうなるのか。 日本の物価の動向、世界(特にアメリカ経済)の動向が注目される。

 

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