相続税率のあり方

2006年12月16日
六麓荘
六麓荘(ろくろくそう)といえば、芦屋市(阪神間)にある日本を代表する高級住宅街である。日本で初めて送電線を地下に埋め、電柱をなくした地域であり、以前、都市科学研究所の研究員をしていた頃、都市景観の勉強のために見学に行ったこともある。
六麓荘一帯は広大な敷地の割には世帯数がたったの252世帯しかない。どれも目がくらむような豪邸である。各家に共通するのは、敷地入り口の「大きな門」(アルミサッシで出来たちゃちな門ではない!)から玄関までの距離が非常に長いという点である。「家の格式というのは、門から玄関までの距離によって決まる」とそのとき思った。
クリスマスに訪れたときは目を見張った。色とりどりの見事なイルミネーションが町全体に飾られているのだ。今と違って25年も前の日本では、一般家庭でイルミネーションを飾るなど見たことも聞いたこともない。ある家の前で、高級車から家族が降りる姿が目に留まった。まるで、この世の幸せを全部集めたような光景に思えた。
異変発生
ところが、その六麓荘で今、異変が起きている。新聞報道によると、芦屋市は六麓荘町では敷地400平方メートル以上の一戸建てしか新築を認めない新たな条例を設置するのだという。つまり、豪邸以外お断りということである。一体なぜこういう条例が必要なのか?
そもそもこういう条例が制定されたということは、現実はその逆の現象が起きていることを意味する。日本の最高相続税率は、2003年(平成15年)まで75%であったが、これだと親の遺産は3代もたてば1割も残らない。そこで、2003年からは小泉内閣のもとで金持ち優遇政策がとられ、最高相続税率は50%に引き下げられた。しかし、それでも3代たてば親の遺産は4分の1に減ってしまうことから、結局、六麓荘では今、相続税が払えず土地を切り売りする例が多く出ているのだという。
そこで芦屋市は六麓荘の持つブランド力を維持するために上記のような条例を制定したということである。つまり、「相続税を払えない人は、さっさと豪邸を売って、別の金持ちと選手交代をしなさい」ということだ。
相続税のあり方
ところで小泉内閣は2003年に最高税率を50%に引き下げた。しかし、この政策は正しいのだろうか?
日本国憲法は第14条で法の下の平等を定めている。もし本当に人間が生まれながらにして平等だというならば、税率を引き下げるのではなく、むしろ、最高相続税率を90%くらいに引き上げるべきではないのか。平成16年度の相続税収入は1兆3800億円である。90%にまで引き上げれば、2兆円くらいは見込める。そして、そのお金を目的税化し、すべての子どもに「子育て支援金」として毎年一定額配分する。そうすれば「機会の平等」ばかりではなく、「少子化対策」としても少しは役に立つ。出来ない政策ではないと思うのだが・・・・
本人の才能と努力でいくら稼ごうと勝手だが、親の七光りで甘い汁を吸える社会は決して健全な社会とはいえない。
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