「億」の細道      

2007年7月10日

 

1億円のパック
 以前、社会科の教員で淀屋橋にある日本銀行の中を案内してもらったことがある。そのとき、1億円の札束(全部1万円札)を初めて見た。床から積み上げればちょうど1メートル、重さは10キログラムである。係りの人の了解を得て、実際に抱えさせてもらったが、ずしりと重たかった。 われわれサラリーマンの生涯所得は約3億円。しかし、マイホームを買い、子供を育て、普通に生活をすれば、いくらも残らない。1億円という金額はサラリーマンにとって「見果てぬ夢」ともいうべき憧れの数字である。

         
           1億円のパック(日銀のHPより)

 

「億の細道」達成をした人の話
 その憧れの金額をうまく手にした知り合いがいる。この人は、4年前に住友金属の株を、一株40円で10万株買ったそうである。住友金属の額面は50円であるから、一株40円というのは、会社が大赤字でいつ倒産してもおかしくない状態にあったと想像される。そんなボロ会社(失礼)の株に400万円も投じるのであるから、たいした度胸の持ち主といえる。まあ、倒産して全部失ったとしても 、たったの400万円かという「生活のゆとり」がないと、なかなかこうした株は買えない。

 それから4年たった今、住友金属の株は一株750円、つまり10万株で締めて 7500万円に値上がりしている。ほかの会社の株も買っているから、合計すると軽く1億円は越すそうである。「億の細道」(笑)達成である。お見事。1億円がこんなに簡単に手に入るものだとは夢にも思わなかった。まさに、「人の行く 裏に道あり 億の細道」である。


      住友金属の株価の推移 (yahoo ファイナンスより転載)

 

もうけているのは1割
 私が初めて株を買ったのは大学2年生のときだった。経済学部の学生なら、株のひとつも知っておけと父親からいわれ、親から借金をして株を買ったのが最初である。それ以来、儲かった経験はごくわずかで、大半はばかりである。原因は簡単。値上がりし、利益が乗っているときに売ればいいものを、過去の高値が忘れられなかったり、もっと上がれば「もったいない」という意識が働いて売ることが出来ない。やがて買値を下回り、急落し大損いうパターンである。
 私のように「損切り」ができないタイプは、株には向いていないのかもしれない。今までに、中古の小さなマンション1戸買える分くらいの損をしている。株式投資では、もうけているのは1割で、2割がとんとん、あとの7割は損をしているとも言われる。株は難しい。

 それでも株式投資をやめないのは、仕事をする上でメリットがあるからである。高校とはいえ、政治・経済を教えることを職業としているものにとって、常に現実の経済に敏感であることは必要不可欠である。その点、株を買っていると、いやが上でも敏感にならざるを得ない。
 株式投資をやってきて、失ったものと得たもの、果たしてどちらが大きいか。私の場合、得たもののほうがはるかに大きかったように思う。株式投資は仕事の片手間にやって儲かるような甘い世界ではない。今は仕事に専念し、定年になったら、今度は本気で株の勉強をして、「億の細道」に挑戦してみたい。
 

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