高校生の内職

 

高校生に「授業中に内職をする自由はあるか」と聞いたら、ほぼ全員が「ある」と答えた。まあ、無理もない。私も身に覚えがないわけではない。幸いにして、私の授業で内職をする生徒はほとんどいない。たまに、一人か二人いる程度である。しかし、一生懸命授業をやっているのに内職をされると、「あなたの授業は聞くに値しない」と言われているようで、あまり気分のいいものではない。

映画館で自分で料金を払って、居眠りをするというのならわかる。しかし、大阪では高校の授業料はほぼ無償化されている。料金を払わないで内職をする「権利」があるというのは筋が通らないのではないか、とも思う。ただし、こんなことを説いてみたところで内職をやめさせることは難しい。

先日、授業で行政権の話をした。その際、ちょうどいい機会だと思って公務員試験についても紹介した。試験には「教養試験」と「専門試験」があり、難関なのは「教養試験」のほうである。これはセンター試験より少し易しいレベルで、高校で習う「ありとあらゆるジャンル」から出題される、というような話をした。

だから、「この科目は大学受験にいらないといって内職をしていると、たとえ希望する大学に合格できても公務員試験を突破できない。高校の授業に無駄なものは一つもないから、授業だけは一生懸命聞いてほしい。内職をして自らの進路を狭めるようなことはしないほうがいい」と諭し、実際の教養試験の問題の一部を印刷して生徒に配った。

実際の試験問題を印刷した効果は抜群だった。「内職をするなと言う先生はたくさんいるが、今日の話は説得力があった。もう内職はしません」「今まで内職をすることもあったが、これからはしないでおこうと思いました。」という声が多数寄せられた。

高校までの勉強は「幕の内弁当」みたいなものである。全部がセットで提供される。これに対して、大学の授業は「回転寿司」である。自分の好きなものを選んでとることができる。高校までは、バランスよく栄養を吸収してほしい。

 

エッセーに戻る

トップメニューに戻る