憲法に対する
「憲法とは人民を入れておく檻ではなく、政府を入れておく檻である」といわれるが、今日、実に多くの人が「憲法とは人民を入れておく檻である」と誤解しているのには驚くばかりである。そもそも憲法とは、国家権力を制限し、国民の人権を守るものとしてスタートしたはずなのに、なぜ、多くの人が「憲法を守らなければならないのは国民である」と誤解をしているのであろうか。 第一の理由は、これまで日本人自身が権力に抵抗し、憲法を勝ち取ったという経験がないことに大きな原因があると思われる。明治憲法は「お上」から与えられた。日本国憲法もアメリカから与えられた。こうした歴史を持つ国民に、「憲法とは権力を制限するためにあるんですよ」といっても理解されにくいのは当然かも知れない。
ある高校生が、「中学校で憲法を暗記させられたのは、私たちが憲法を守る義務があるからだと思っていました」と語ってくれたのは、こうした教育の現状を物語っている。もちろん、これには憲法の本質を詳しく紹介しない教科書の記述のあり方にも問題がある。憲法の一番重要な立憲主義(権力を憲法で制限し、その憲法に基づいて政治を行うこと)という観念について、もっと多くのページを割くべきではないだろうか。
そのほか、第二次世界大戦の敗戦をきっけかに、日本の憲法が大陸法から英米法に変わったにもかかわらず、いまだに明治憲法という大陸法の発想から抜けきれないせいもあるかもしれない。
「憲法とは国家権力を拘束するために作られたこと」、「憲法の目的は人権保障にあること」、「統治機構の規定は人権保障のための手段であること」。 (2003年8月5日) |