自分流の分析(2)


 

 一方、中西輝政京都大学教授(国際政治)は、考える視点として、次の三つを提案している。( 『本質を見抜く考え方』サンマーク出版 2007年 )

@作用反作用の視点
 物事には必ず一つの動きに対して、その反対の動きがある。「動あれば反動あり」と言い換えることも出来る。特に政治の動きではそれが顕著に出る。
 たとえば、米の輸入自由化をしようとすれば、農民の反発がある。公共投資を減らして財政赤字を削減しようとすれば、道路族が反対する。郵政民営化を進めようとすれば、それに反対する人が出てくる。作用反作用の視点は、このように物事を一つの視点からだけ見るのではなく、反対側の立場に立って見てみて、その上で自分流の分析をするのである。
 また、文章を作成する場合、
ネガティブ・チェックという方法がある。たとえば、こういう表現を使えば、相手はそれに対してどういう反論をしてくるだろうかと考えるのである。これも基本的には作用反作用の視点と同じと考えてよい。

A慣性の法則の視点
 第二に、「慣性の法則」で考える。物事には、一端動き出したら容易には止めることが出来ないものがある。典型的な例は地球温暖化問題である。便利な生活を求めてわれもわれもと化石燃料を使えばどうなるか。結果が分かっていても、誰もそれを止めることが出来ない。そこには強烈な「慣性の法則」が働いていると言える。戦争も、ある時点を越えると「慣性の法則」が働く例かも知れない。

B鹿威しの視点
 竹筒に少しずつ水が溜まって、ある限界を超えるとその重みでひっくり返って水がこぼれる。もともとは鳥獣を追い払うためのものだったと言うが、これを社会現象の分析に使うと、さまざまなことに応用できる。
 
たとえば、サブプライム・ローン問題。低所得者に住宅資金を貸し付けて、それが不動産バブルを生んだ。アメリカでは数年前から不動産価格が上昇し、バブルだバブルだと言われて久しい。それが昨年の8月に一気に表面化し、世界の金融市場は激震に見舞われた。
 このように、水面下で徐々に水が溜まっている視点をもてば、「そろそろ来るぞー」という自分流の分析が可能となる。

 以上の三点を社会現象に応用してみると、どんな質問がなされても一応それなりの回答をすることが出来るという。

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