はなしにならない話

 

 40代になってから急速に歯槽膿漏で悩むようになった。歯と歯茎(はぐき)の間にポケットができ、歯茎を押さえると白い食べかすが出てくる。放っておくと、それが歯石となり、やがて歯茎が赤く腫れ、歯肉炎になる。さらにひどくなると、歯茎から血や膿が出てくるようになる。

 ポケットは段々深くなり、ついには歯を土台で支えている歯肉や骨が溶け出し、歯がグラグラになって抜けてしまう。歯槽膿漏は虫歯のような痛みを伴わないため、ついつい放ったらかしにしておくことが多く、(だれだって、歯医者に行くのは気が進まないと思うが)、気がついたときには手遅れになるという怖い病気である。

 一般に、歯を支えている周囲の組織に関する病気は歯周病といわれるが、歯槽膿漏は歯周病の一つである。歯医者に行くたびに歯科医からは、「一生懸命歯を磨いてください」とアドバイスされる。また、「時々歯石を除去するのに来てください」とも言われる。

 しかし、いったん歯槽膿漏になると、歯茎が腫れていて痛いため、歯磨きもついついいい加減になる。なまじっか、一生懸命磨いたりすると、よけい出血がひどくなったりする。また、歯医者さんに行って歯石を取る際も、歯茎からいっぱい血が出て、結構痛 い。それで、よけいに歯医者さんを敬遠するようにもなる。

 そんなことから、知らず知らずのうちに歯槽膿漏がだいぶ進行してしまったらしい。そして歯がグラグラし始めているのが、自分でも解るようになった。たまには歯医者さんを変えてみたこともあったが、状況に変化はなかった。
 

 そんなある日、たまらなく歯が痛くなった。どうにもこうにも我慢できない。職場の近くにどこか良い歯医者さんはないか。同僚に聞いてみると、三国丘高校の卒業生で、中百舌鳥で開業をしている奥田歯科医院が良いと教えてくれた。同窓会名簿で調べてみると、大阪大学歯学部卒業とある。年齢は、私より3歳上である。早速電話をして、駆け込んだ。これが奥田先生との最初の出会いであった。

 治療が終わった後、奥田先生から歯槽膿漏がだいぶ進んでいることを説明され、さらに、歯槽膿漏の予防には、歯間ブラシと薬用液体ハミガキを併用すると効果があると教えていただいた。

 その後、1年ほどたった。奥田先生に言われたとおり、歯間ブラシと薬用液体ハミガキを併用し歯磨きをした結果、 歯茎の調子が驚くほど良くなった。歯肉の腫れは治まり、歯のぐらつきも無くなった。それに、歯を磨いても歯茎が痛くないので、ますます歯磨きをするようになり、、歯垢もたまりにくくな った。すべてがよい方向に循環し始めたのである。

 一般に、病気を治療してくれる先生は名医と言われる。しかし、最高の名医は病気にならないように予防法を教えてくれる先生ではなかろうか。歯間ブラシも薬用液体ハミガもテレビでジャンジャン宣伝している。しかし、その二つを組み合わせ、歯磨きの仕方をちょっと工夫するだけで驚くほど効果があることは、どの教科書にも書いてないらしい。

 これを考案された奥田先生は、間違いなく名医である。奥田先生との出会いがなければ、遠からずして私の歯は全部抜け落ちていたかと思うと、いくら感謝してもし足りない。これで当分は、大好きな漬け物も美味しく食べられる。

 

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