アラビア半島はどこか?

2006年12月18日

 

 「アラビア半島がどこにあるかなんて、そんなもん常識じゃん」
と、普通は思う。
ところが、今の高校生にはどうもそうではないらしい。

 実は、今回の高校1年生「現代社会」の定期考査問題に、世界地図を書かせ、そこにアラビア半島、インドシナ半島、イスラエルを記入させる問題を出してみたのだ(配点20点)。もちろん試験問題を予告したり、授業中にアラビア半島の1をわざわざ教えたりはしていない。中学校までの知識を試してみようと思ったのである。
 やってみれば分かるが、真っ白のところに世界地図を描くのは決して易しくはない。それにもかかわらず、多くの答案は5大陸や赤道の位置など、概略はそれなりに描いていた。


 しかし、驚いたことに、中東を正しく書けた答案は159枚中、数枚しかなかった。アラビア半島アラスカにあったり(ギョッ)、アフリカ大陸の内陸部にあったり(ウヘェー)、極端なものは北海あたりだとする答案まであった(ヤメテケロー)。
 また、インドシナ半島をインドネシアと混同し、「島」だと記述している答案や、西インド諸島と錯覚した答案もあった。一所懸命書いてくれたのは分かるが、抱腹絶倒、悶絶した(ゴメン)
 なぜ、学区のトップ校にこんな珍答案が続出するのか。


 結論的にいえば、彼らはゆとり教育の犠牲者である。学校週5日制の実施に伴い、教育内容が削減され、中学校の地理は世界全部を学ぶ必要がなく、日本に関連する何カ国かを学べばそれでOKということになった。その結果がこれである。
 もし本当に「生きる力」を育てたいなら、小・中学生の記憶力の優れているときに「漢字」「計算力」「地名」くらいはたたき込むべきである。最近は、分かるように教えることが重視されているが、特に小学校の教育では分かろうが分かるまいが、ともかく大切なことは「詰め込む」ことを旨とすべきである。後に成人してから、その意味が分かればよい。


 理解教育が重要などというが、そもそも小学生に理解できる範囲などたかがしれている。それよりは、「意味が分からなくても記憶できる」という小学生の特性を最大限に生かして、日常生活に必要なことは徹底的にたたき込むべきである。「生きる力」とは「自分で考える力」のことである。そのためには基礎・基本の学習が絶対に必要だ。

 文部科学省のトップが変わるたびに、官僚が自分の手柄にしたいため新たな教育改革に取り組む傾向があるといわれる。しかし、それが本当の改革になっているのか。教育は「国家百年の計」である。手柄がほしいために制度いじりをしてもらっては困る。

 

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