献辞

ジローラモ様の子息、サン・マルコ修道会代表マルカントニオ・ジュスティニアーノ閣下

類い稀なる高名な閣下に申し上げます。暑い日が続くなか、小生は気晴らしのため友人と共にペルシアの言葉からイタリア語へ拙作を翻訳しました。印刷、出版のことなどまったく考えませんでしたが、小生を並々ならず贔屓にしてくださる方の薦めに従い、作品を世に出すことに致します。小生の祖国でもよくありますように、この地にも批判や悪口を言う人たちがおります。そうした人たちは、己の才能の成果を世に示せないのに自分にも判断能力があると思われようとして、大抵、他人の労苦を罵って自分が偉いように考えるのだと聞いたことがあります。小生のこのささやかな書物を彼らの言から少しでも守るため、弁護しなくてはと思いました。そのために、常に優れた者を支援し類い稀な才能で名高い閣下にこの書物を捧げ贈ることにしようとすぐに思い立ちました。そうすれば彼らはきっと悪口を取り下げることでしょう。それにはさらに小生にとって都合の良いこともあります。つねに閣下から受けている御好意と御愛顧をとても感謝しており、我がわずかな財では到底感謝の意を表しきれないのですが、この労作を閣下に献じることで、小生の感謝の気持ちは他に示しようもなく心底から恩義を感じているということをせめて閣下に伝えようかと存じます。従いまして、小生のつまらぬ贈り物を、そこにこめたわたしの謝意と共にお受取りなされるよう謹んでお願いする次第でございます。もし受けて頂けますならば、これまで様々な機会に示していただいた御好意についてもこれに合わせてありがたく感謝し、非力な小生ではありますが、この町でも、また世界中のどの町に行きましても閣下の数多くの功績を絶えず数え上げ、その名高い名誉ある御名を天にまで高めるよう努めることを閣下に御約束いたします。謹んで御手に接吻を。一五五七年八月一日

閣下の献身的で恭順な下僕、クリストフォロ・アルメーノ


[序」へ続く→