プレミアムステージ特別企画

犬神家の一族 〜誰も知らない金田一耕助〜


04.04.03 Sat 20:03〜22:54 フジテレビ系列 にて ON AIR

 



那須警察署・取調室

  『我が告白
   犬神家における連”続”殺人事件の
   犯人はすべて私犬神佐清である
   私以外の何人もこの事件には関係
   が無い 自決の直前に”当”たってこのことを
   告白す
                  犬神佐清』

橘署長は、復員服の男=つまり佐清が持っていた告白書を読み上げる。

  橘  「お前が書いたんだな」
  佐清 「はい」
  橘  「お前が全ての事件の犯人なんだな」
  佐清 「はい」

そこに金田一が口を挟んだ。

  金田一「ねぇ、佐清君。あなたが全ての事件の犯人だなんて、不可能で
      すよ。11月12日に博多へ復員してきて、どうして、10月18日に
      起きた若林豊一郎殺しの犯人でありうるのです?」
  佐清 「それは、それは・・・若林事件のことは僕も知りません。僕が
      言っているのは犬神家で殺された3人のことです。若林事件は
      この事件に何も関係が無いんです」
  金田一「しょ、しょ、しょ、署長さん。今の佐清君の言葉をお聞きでし
      たか?!佐清くんは暗黙のうちに博多に復員してきた山田三平
      と柏屋に現れた山田三平が共に自分である事を認めたんですよ!」
  佐清 「!!!」
  金田一「あなたは博多に復員してきたときに、偽者の佐清君が犬神家に
      入り込んでいることを新聞で知ったんですね。あなたにはその
      偽者に心当たりがあったのでしょう。あなたと入れ替われる程
      似ている人間なんて、そうそういませんからね。だから、密か
      に入れ替わって、事を穏便に済ませようとした。しかし、結果
      から言えばそれがいけなかった」

そうして、金田一は佐清に決定的な推理=事実を告げる;

  金田一「偽者は青沼静馬君ですね?」
  佐清 「・・・」
  金田一「あなたはビルマで静馬君と一緒だったんですね?」



(回想シーン)

ビルマ戦線。佐清の部隊は追い詰められ、撤退を余儀なくされている。

  佐清 『静馬君、早く!』
  静馬 『佐清君』

だが、静馬はそこで敵兵に襲われる。




  佐清 「違う!違う!!!!!」

佐清が否定しようとも、金田一は推理を続ける;

  金田一「あなたは博多から那須へ入ると、顔を隠して柏屋へ行き、夜の
      10時頃犬神家に忍び込み、静馬君を呼び出した。仮面の静馬君
      に会って、初めて人知れず入れ替わるのが不可能な事を知った。
      なぜなら静馬君の顔は二目と見られないほどぐずぐずに崩れて
      いたからだ」



(回想シーン)

犬神家のボートハウス。夜、二人が密会している。静馬は佐清に素顔を見せ;

  静馬 「佐清君、もう手遅れだ。僕が犬神佐清で、君は山田三平だ」

佐清の指揮のせいで、部隊が全滅し、自分も顔もこのようになった。このぐらいのことは当然だと言い切る静馬。




  金田一「あなた、そこで見たんでしょ、犯人が佐武君を殺すところを?」
  佐清 「・・・」
  金田一「そのことで、あなたと静馬君の主客は完全に転倒してしまった。
      あなたが犬神家にやってきたのは、犯人をかばって自分が犯人
      の役を買って出るためだったんでしょ?派手な立ち回りをして、
      この告白書を残して、警察の前で、自殺をするつもりだった…。
      そうですよね?」
  佐清 「・・・」
  橘  「誰です、その犯人というのは?」
  佐清 「・・・」

  金田一「松子夫人です」

金田一のその一言に、佐清は絶叫した。



犬神邸・大広間

一人、琴を弾いている松子の元を金田一が訪れる;

  金田一「失礼します」
  松子 「何か御用でしょうか?」
  金田一「はぁ」

そうして、松子の前に座し、金田一は少しずつ用件を話し始める。

  金田一「昨日の発砲騒ぎはご存知ですか?
  松子 「ええ、復員服の男が捕まったとか。今朝方、警察の方から報告
      がありました」
  金田一「現在、その男は、犬神家連続殺人犯として取調べ中です」
  松子 「そうですか」
       :
       :
       :
  金田一「しかし、本当の犯人はあなたですね?」

松子は琴を弾く手をとめた。

  金田一「若林さんを買収して遺言書の写しを取らせたのもあなたですね。
      そして、あなたは珠代さんが絶対的に有利な立場であることを
      知り、珠代さんを殺そうとした。そのことを気づいた若林さん
      を毒殺したのも、あなたです」
  松子 「何を馬鹿な事を。若林さんが亡くなったとき、私は博多にいた
      んですよ」
  金田一「現場にいなくても殺人は行えるんです。毒タバコは、あなたが
      博多に立つまえに、若林さんに渡したのでしょう」
  松子 「失礼です!やめなさい」
  金田一「あなた、若林さんの次に佐武くんを殺害しましたね?」



(回想シーン)

犬神家の展望台。珠代と猿蔵が引き上げた後、ふらふらと立ち上がった佐武に対し、松子は背後から短刀で一突きにした。




  金田一「そのとき、ボートハウスの中に、静馬君と、復員服の男がいた
      ことをご存知でしたか?」
  松子 「え?」
  金田一「あなた、見られていたんですよ、殺人現場を」
  松子 「そんな・・・どこの馬の骨とも分からない男の証言なんて、誰
      が信じるものですか!」
  金田一「ところがですね、復員服の男は佐清君だったんです」
  松子 「佐清?・・・佐清!生きてるんですか?」
  金田一「佐清君は静馬君に脅迫されていたんです」



(回想シーン)

窓の隙間から、展望台が見えるボートハウスの中。

  静馬 「これもみんなお前のお袋を救う為だ。犯行が残忍であればある
      ほど、女に疑いは掛からないからな」

そうして、静馬と佐清は入れ替わり、片や死体をボートに乗せ運び出し、片や首を持って屋敷に戻った。




驚きのあまり体が震え、言葉が出ない松子。そんな松子ににじり寄り;

  金田一「松子奥様、話して下さるでしょうね。いいえ、きっとあなたは
      話して下さいます。あなたのなすったことは、みんな佐清君の
      ためだったんですからね。その佐清くんに犯人の役を買って出
      られたのでは、あなたのご苦心はみんな水の泡になってしまい
      ます」


そのとき、部屋に掲げられた佐兵衛の遺影からその像が消え、松子の目の前に佐兵衛の幻影が立っている。怯える松子。

  佐兵衛「斧・琴・菊…菊乃の??遂げられた。静馬とおまえの手によっ
      て。これ以上望めないほど、素晴らしい形で。ふははははは」

放心状態の松子。

  金田一「松子奥様?」
  松子 「あ〜あ、あはは。佐清に、お願いです、佐清に会わせて下さい。
      お願いです!」



犬神邸・正面門

雨が降る中、車が犬神家に到着する。そこから、橘署長らと、拘束されたままの佐清が降り立つ。

犬神家の一族&珠代に迎え入れられ、屋敷の長い廊下を進む佐清。



犬神邸・松子の部屋

佐清一人が松子の待つ部屋に入ってくる。

佐清は、戦地で自らの過ちで部隊を全滅させただけでなく、捕虜となったことを恥し、山田三平という偽名を使ったことを告白する。しかし、松子は、佐清に、佐清が生きて帰ってきてくれればそれで良かったと言い、「母さんを許しておくれ」と松子は佐清の体にすがるように泣き崩れた。



犬神邸・大広間

広間に今回の全ての関係者…もちろん、生存者のみだがが集合している中、金田一が今回の事件の全ての話ている。

  金田一「佐武君殺害の翌日に手形比べがあったのですが、あの手形比べ
      こそ、僕にとっては致命的な盲点となったのです。手形を押し
      たのは入れ替わった佐清くんだったのですから、手形が一致す
      るのは当然のことです」

  金田一「しかし、珠代さんは気づいてましたね?あなたは2度まで何か
      を言いかけてましたよね?」
  珠代 「・・・。私は言いたかったのです。仮面を取ってお顔を見せて
      下さいと」
  佐清 「・・・」
  金田一「あの晩、また佐清君は静馬君と入れ替わったのですね?」

佐清は黙って頷いた。

  金田一「では、第2の事件に移ろうじゃありませんか。松子奥様の血液
      型はO型ですね?」
  松子 「ええ」

それを確認して、金田一は例のボタンを懐から取り出した。

  金田一「これはあなたが佐智くんを殺害したときにはずれたものです。
      このときあなたはこのボタンで左手の中指に怪我をしましたね」
  松子 「・・・」


(回想シーン)

その佐智殺害の晩。椅子に縛り上げられた空家から何とか逃れ、ボートで戻ってきた佐智。そのときボートハウスにやはり佐清と静馬は、再び入れ替わるために密会していたわけだが、結果、松子の殺人を目撃する。



  梅子 「ああ!!(叫び)」
  金田一「そして再び琴の練習に戻った、その間に佐清君たちは・・・」
  佐清 「静馬は三種の家宝の呪いだから菊の次は琴だと言って、私は空
      家へ佐智くんの死体を運ぶと、静馬の言う通りに椅子に縛り、
      琴の糸を巻き・・・。それから身を隠すために東京へ立ったの
      です」
  橘  「なぜ、犬神家に戻って来たんだね?」
  佐清 「佐清殺しを新聞で見て、珠代さんのことが心配で」
  珠代 「・・・」
  金田一「つまり、この事件で真犯人である松子夫人は、ちっとも技巧を
      凝らしてはいなかったのです。それを影の共犯者たちが後ろへ
      回っては技巧を凝らしていたのです。そこに、この事件の面白
      さと難しさがあったのですね」

(と、ここで金田一の推理は全て終了。この最後の台詞は、これまでの金田一像とはかけ離れていたようで、反感買ったんじゃないかしらん?実際、私も「えっ」と思ったし。でも、「面白さ」という表現は、ちゃんと原作にあるんですよね。原作物って難しいのが良く分かる部分かも。)


  松子 「私は二人を殺しさえすればそれでよかった。その後で捕まろう
      が、死刑になろうが…そんなことはどうでもよかったんです。
      それが・・・」


(回想シーン)

静馬が松子の前で正体を明かしたそのとき、松子は、部屋にあった(花瓶?)で静馬の後頭部を殴りつけた。



  松子 「は・・は・・・はははは」
  珠代 「嘘です!そんなこと、松子おば様がそんなこと!嘘だと言って
      下さい!」

その珠代の問いかけに、松子は懐中時計を取り出し、それを珠代に向かって滑らせることで答えた。

  松子 「これはあなたにお返しするわ。佐武の服から落ちたのを、私が
      隠しておいたのです」

  金田一「青沼菊乃の『斧・琴・菊』、の呪いは、息子である静馬に引き
      継がれ、犬神佐兵衛の遺言によって、その舞台が用意された。
      そして、それは皮肉にも松子夫人によって演じられ、最後に、
      静馬自身の肉体をもって見事に完成されることになったのです。
      『斧・琴・菊』・・・」

一同はその金田一の言葉を黙って聞いた。



  松子 「署長様、佐清は、刑に問われるのでしょうね?」
  橘  「あ、それは・・・やむを得んでしょうな」
  松子 「それは、酷く重いのですか?」
  橘  「さぁ」
  松子 「まさか、死刑になるようなことは、ありますまいね?」
  橘  「いや、それはもちろん。情状酌量も相当あると思いますが…」

その橘署長の言葉を聞いて、安堵の表情を示す松子。そして;

  松子 「珠代さん、あなたは佐清が牢から出てくるまで、待ってくれる
      わね?」
  珠代 「お待ちします。10年でも、20年でも、佐清さんさえお望みなら」
  佐清 「珠代さん・・・すまない」
  松子 「珠代さん、あなたにもう一つお願いがあります」
  珠代 「何でございましょう」

松子は目の前の小箱の引出しから取り出した煙草を、煙管に詰めながら話を続ける;

  松子 「小夜子は近く子供を生みます。そのこの父は佐智です。その子
      が大きくなったら、犬神家の財産を半分、分けてやって頂きた
      いの」
  武子&梅子「!」
  珠代 「おば様、いいえ、お母様。よく分かりました」

その珠代の言葉を聞き終わると、松子は煙管を一服吸った。

  松子 「古舘さん、あなたが証人ですよ!」
  古館 「はい」

  松子 「これが竹子さん、梅子さんに対する、私のせめてもの罪・滅・
      ぼ・し・・・」

松子は煙管を手にしたまま、そのまま倒れた。慌てて松子に駆け寄る金田一。

  金田一「しまった、あ。しまった!しまったしまった!」

松子の吸っていた煙管に目をやる金田一。

  金田一「キザミ煙草!若林さんを殺した毒だ!気づかなかった、気づか
      なかった!医者を!医者を!!」

金田一の絶叫が響く中、佐清は一言も言葉を発することができなかった。







那須駅

そして、数日後。

  金田一「色々と、お世話になりました」

金田一が汽車の窓から顔を出し、見送りの古館,橘らに挨拶をしている。

  古舘 「お世話になったのはこちらの方です。本当にありがとうござい
      ました」
  橘  「本当に助かりました」
  金田一「それはよかった(^^)」

と、言いながら、金田一は何かを期待しながら駅のホームの向こうに目をやる。

  刑事 「あの…」
  金田一「はい。何でしょう?」
  刑事 「サインをしてもらえないでしょうか?」

と、刑事が『本陣殺人事件』の小説を金田一に差し出したりして(苦笑)、その公私混同の行為を橘が咎めるのかと思ったら;

  橘  「こら!是非、私も・・・」

と、同じく差し出してみたり。ただ、丁度ここで、汽車が出発するベルが鳴る。

  金田一「署長さん、残念ですけど、またの機会に・・・」


そして、汽車が出る直前、金田一は駅のホームの向こうに、珠代と猿蔵の姿を見つけた。

  珠代 「金田一さん!」
  金田一「珠代さん!」
  珠代 「金田一さん、忘れ物!」

珠代は、走り出す汽車に沿って駆けながら、金田一の帽子を手渡した。

  金田一「ありがとうございます!」
  珠代 「さようなら、またいつか」
  金田一「ええ、また!!」

それに続いて猿蔵は、一輪の菊の花を。

汽車は駅から離れ、金田一はゆっくりと座席に座り、珠代から渡された帽子を再び目深に被った。

  金田一「・・・またいつか」

そのまま汽車は東京を目指す・・・





そうして、横溝邸。新聞の中に、目を引く記事を見つける横溝さん。

  横溝 「ほぉ〜」


   『犬神家の一族」事件 
     アッパレ金田一
     推理して風のように去る



その記事を見た横溝は、すぐに原稿用紙に向かってペンを走らせた。そうして、また、新しい推理小説が1つ生まれたのだった。


Fine

 



【ひとりごと】

以上、3時間のドラマの金田一パートのほぼ完全レポです。それにしても、これだけ内容が詰まってると、途中で口を挟む余裕もないというか何と言うか…(笑)。

番組全体としては、最初見たときは、やっぱり物足りなさが少し残りました。きっと最初に期待したものが大きすぎたんでしょうけど、もう少し、金田一の見せ場が欲しかったなぁ、と思ってしまって。基本的にこういうドラマは、探偵さんは事件の語り部的な部分があるのでドラマ性が薄いのはいいのですけど、最後の謎解きの部分、特に松子が犯人だと宣言する部分は、原作どおり一同が会した広間でやって欲しかったなぁ、というのが一番、残念な部分です。あとで原作を読むと、もう少し最後の大広間のシーンは延々と続いているのですよね。それが、今回のドラマでは、変化をつけるためかもしれませんが、取調室等にシーンが分散されていたのが残念に思えました。

私自身は原作はドラマを見終わってから読みました。歴代のドラマも未見。というわけで、私にとっては今回のこの吾郎君の金田一が、”初見”となったわけで、過去の作品についての先入観がまるで無い人間が今回のドラマを見た感想は、原作重視だなぁ、と。私自身が最初にドラマを見て感じた違和感(事件を楽しんでいるような部分)は、ほとんどが原作にある部分なんですね。

過去に明智小五郎を演じた吾郎君ですが、今回の金田一、違和感を感じずに見ることができました。ドラマが放送されるまでに、ある程度、映像を見ていたせいもあるんでしょうけど。人気のある原作物、しかもそれを演じる人がこれだけ沢山いると比較されるのは仕方が無いのですけど、逆に言うと、いろんな金田一があってもいいのだとも言えるかと思います。折角こうして、3時間のSPもので誕生した金田一ですから、これからも大切に演じていってくれると、それこそファン冥利につきるので(笑)、今後ともよろしくお願いします>フジテレビの関係各位。

(04.09.26)


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