2000年7月放送分


放送日 ゲスト ゲスト解説
7/28放送分 Due'le quartz 異なるビジュアルと音で二面性を持つバンド
7/21放送分 魚喃 キリコ 漫画家
7/14放送分 山崎 貴 VFXにおける日本の第一人者
7/7放送分 クラムボン 96年に結成の3人組のバンド


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◆オープニング◆

真っ赤なオープンカーを運転するキュレーター稲垣吾郎。(今回から衣装が変わりました!細かいラメの織り込まれた黒い生地でできたスタンドカラーのスーツ。足元はかかとがない靴(サンダル?)で夏仕様なのかな。それにしてはラメ入りスタンドカラースーツは暑そうですが。)都内を走るオープンカーの映像に吾郎氏のナレーションが被る。

   〜僕はどうしようもなくつまらない人間だ。
    でも、そんな僕でもアートは優しく抱いてくれる。
    だから、僕を感じさせてくれるアートを探すために今日も走る。〜

  吾郎 「『信号でフライングした車につられる車』。なんてアートなんだ。」

◆アートサウンドハウスにて◆

  吾郎 「で、あるんだろうね?僕を感じさせてくれるアートは。」
  支配人「もちろん。ねっ、ね?」

と肘でパンチ氏をつっつく内田支配人。

  パンチ「あ。はい、吾郎さん。本日のアート御覧下さい。」

と真面目に紹介するパンチ氏に対して。

  吾郎 「硬いな…。

と、ショーケースに登場したのは、スキンヘッドに和服姿の男性。

  いいぞう「はいどうもこんにちわ〜、ものまね芸人の元気いいぞうでございます。
       今日はいろんな有名人のものまねをやらしていただきます。
       手拍子よろしく〜。」

で、素直な吾郎氏はちゃんと手拍子。いいぞうさんの持っているラジカセから聞こえる曲は薬師丸ひろ子さんの「セーラー服と機関銃」。(懐かしいぞ。)

   「まずは織田信長〜」と言った割には地声で「さよならは♪」と普通に歌い出します。
   「豊臣秀吉〜」でもやっぱりそのまま普通に歌ってます。
   「豊臣信長〜」(って誰?)もちろん普通に歌ってます。
   「次のアメリカの大統領〜」どうしても普通に歌ってます。
   「その次のアメリカのプレジデント〜」 …。

  吾郎 「悪いが、私には合わないアートだ。」(結構笑ってたくせにぃ。)

「みんな〜元気〜?いいぞういいぞう!」と言いながら流されてゆく、いいぞうさんなのでした。

パンチ氏の「えー、続きましてのアート、ご覧下さい。」の声とともに登場したのは、いわゆるビジュアル系バンドのいでたちをした男性4人。色とりどりの長髪に黒い羽根とか鋲とかついてるボンデージ風の衣装を身にまとっています。

  吾郎 「うん、かなり感じる。」

☆本日のゲスト:Due'le quartz(デュール・クォーツ)

ビジュアル系と言う見た目とは裏腹に、音はジャパニーズ・ハードコアを取り入れると言う二面性を持つバンド。ネガティブな歌詞を通してダークな世界を歌い上げます。

  吾郎 「『デュール・クォーツ』と言うバンド名にはどんな意味があるんですか?
      クォーツって水晶ですよね?」

と、尋ねる吾郎氏に、ボーカルのsakitoさんが答えます。バンド名「Due'le quartz」は、フランス語デュールと英語のクォーツをくっつけた造語で、意味は「二つの水晶」。バンドのコンセプト、人間の二面性を音楽で表現していこうと言うことからつけたものだそうです。

  吾郎 「(みなさんには)二面性があるんですか?
      僕にはまだこの一面しか見えてないんですけど、インパクトありますよね。」

で、何を言うかと思えば…。

  吾郎 「代々木公園に朝マラソン行くとカラスがいっぱいいるんですよ。
     (って黒い羽根の衣装がカラスに似てるってことでしょうかね、やっぱり(^^;)。)

  支配人「歌詞もね、インパクトがあるんですよ。」

今回の演奏曲「蛻の殻(もぬけのから)」の歌詞を朗読しようとする支配人。

  吾郎 「読むんですか、内田さん。大丈夫ですか?今日は。」
  支配人「ええ。任せて下さい。」

と、内田支配人たら突然パンチ氏に「禁断症状?」なんて語りかけたりしてます。

  吾郎 「今日はちょっとお芝居調に。いつもアナウンサー的だったんで。

とゲストに状況を説明する吾郎さん。そんなこと言ってる間にも支配人はすっかり女優入ったまま歌詞の朗読を終え、吾郎氏とパンチ氏に向き直ってコメントを求めます。

  支配人「どうでしょうか…?」
  パンチ「見ないで下さいよ、こっちを。」

歌詞はかなりネガティブ。ギターの雅さんの語る、この曲の核のテーマは「現実逃避」。「これは夢の中の出来事とかでなく実際に今現実逃避したいと言う思いで作ったんですか?」と尋ねる吾郎氏ですが、雅さんは歌詞には自分がリアルに感じたことを書くと言います。「夢の中のことを書いたらフィクションかと言えば違う。夢を見て感じたことはノンフィクションだから。」歌詞で自分が感じたことを押し付けるのではなく「じゃああなたはどうですか?」と言う思いで作っているのです。

  吾郎 「みなさんの中の二面性って具体的にどこに出てるんですか?」
  雅  「今も二面のうちの一つが出てるってことですよね。」
  吾郎 「もう一つの面は?」
  雅  「お見せできません。」(^^;)

いやいや、そこをなんとかってことで質問をぶつけてみます。

  パンチ「好きな食べ物は?」
  KAZUKI「寿司が好きです。」
  パンチ「寿司の中にもいろいろあるじゃないですか。」
  KAZUKI「サーモンとアナゴ。一番はサーモン。」

いい感じになってきました。

  パンチ「好きな女性のタイプは?」
  sakito「田中麗奈さん。会ったことあります?
  吾郎 「あるよ。
  雅  「誇らし気だ。

ここで稲垣吾郎「やなやつキャラ」炸裂。

  吾郎 「会ったことない人なんていないからね。大体知ってるし〜。
  パンチ「出た、出たよ、ほら。このポーズ。」

吾郎氏、額に指を当てソファにもたれかかってます。

  雅  「アートだ…。
  パンチ「ネタかぶってますよ。」

ここまでのお話でこのバンドの持つ二面性を少し感じることができた吾郎氏、例によってつぶやきます。

  吾郎 「こんな『デュール・クォーツのサウンド』、僕の身体が欲しがっています。」

と言うことで、デュール・クォーツの演奏が始まります。

デュール・クォーツ:「蛻の殻(もぬけのから)」
歌っているメンバーの背景にある大画面に映し出された文字は、「自己否定」「現実逃避」「虚無的」「破滅的」「禁断症状」「混沌憂鬱」「絶望感」「孤独感」「拒絶反応」「蛻の殻」でした。

◆帰り道◆

愛車の真っ赤なオープンカーで線路脇を走る稲垣キュレーター。「蛻の殻」を口ずさんでます。(高音部分になると目を閉じ頭を傾けて声を出そうとしてるけど、運転中に大丈夫?(笑))

◆稲垣芸術館にて◆

  吾郎 「それではここで、我が稲垣芸術館が所蔵するグレートアートを紹介しよう。」

今回のグレートアート:「ドガ『舞台の踊子』」

  吾郎 「大胆かつ華麗に舞う一人の踊子を影から羨む他の踊り手たち。
      そのまなざし。
      まるで男子高にやってきた女性の教育実習生を見つめる生徒達に勝るとも劣らない。」

   「本日、我が稲垣芸術館に増えたアートは、異なるビジュアルと音で二面性の
    アートを表現する『デュール・クォーツのサウンド』。」


   「今日もまたアートとセッ○スしてしまいました。
    稲垣芸術館、開館まであと495日。」

◆エンディング◆

愛車を駆る稲垣キュレーター。東京ドームの近くです。

   「『キッスの世界』。なんてアートなんだ。」


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◆オープニング◆

真っ赤なオープンカーを運転するキュレーター稲垣吾郎。上り坂を走るオープンカーの映像に吾郎氏のナレーションが被る。

   〜僕はどうしようもなくつまらない人間だ。
    でも、そんな僕でもアートは優しく抱いてくれる。
    だから、僕を感じさせてくれるアートを探すために今日も走る。〜

  吾郎 「『坂道を登りきれない軽トラック』。なんてアートなんだ。」

◆アートワークハウスにて◆

  吾郎 「で、あるんだろうね?僕を感じさせるアートは。」
  支配人「もちろんです。本日のお薦めアート、感じて下さい。」

と、ショーケースに登場したのは「バンビ高橋でぇす。」と名乗る、チアガールに扮した男性。黄色いポンポンを振りながら「バンビ、バンビ、バンビ、バンビ、バンビ、オリンピックへゴーゴー!ゴーゴー!ゴーゴー!ゴーゴー!」と叫びます。

  吾郎 「悪いがあまり好みじゃないな。」

するとバンビ氏、指で鼻を押さえて形を変えて見せ、「松阪。」

  吾郎 「ちょっと面白かった…。」

「オリンピックへゴーゴー!」と叫びながら流されてゆくバンビさんでした。

  支配人「それでは、こちらのアートはいかがですか?」

次に登場したのは、シンプルな線で描かれたマンガ。原画を拡大したもののようです。

  吾郎 「かなり感じる。」

  リリー「今まで吾郎さんが夢中になって読んだマンガはどういうものでした?」
  吾郎 「新谷かおる『エリア88』」
  リリー「そのように夢中になったマンガとは、ドラマがあって感動があって
      オチがあっる、それがマンガだったと思うんです。
      でもこのアーティストのマンガにはドラマも感動もオチもなく、
      彼女自身の言葉で日常が描かれている。
      マンガの中でマンガをやらないマンガ家。
      それが本日のアーティストです。」

☆本日のゲスト:魚喃 キリコ(なななん きりこ)

漫画雑誌「ガロ」でデビュー。なめらかなタッチ、フランス映画のようなコマ割り。その文学的なセリフで漫画界に独自の世界観を確立。(ちなみに吾郎氏の一つ年上です)

  吾郎 「な、なななんきりこ。なんてアートなネーミングなんだ。
      なな、なな…。」
     (こういうのどうしても言いたくなっちゃうようで(^^;)。)

ソファに移り、お話を伺います。

  吾郎 「御自分の実体験がかなり元にはなってらっしゃるんですか?」
  魚喃 「そうですね、90%くらいは。
      実体験がそのまんまってわけではないんですけど生活の中で感じた
      ことは100%使ってます。」

私小説と呼ばれるものをマンガで表現していると言うわけです。

  吾郎 「マンガだけどマンガじゃないですね。」

テーブルの上には彼女の作品が置かれています。

  吾郎 「悲しい恋愛体験を基に描いた作品ってありますか?」

彼女が指差したのは、水色の装丁が施された長篇作品「南瓜とマヨネーズ」。

  魚喃 「ちょっといろいろと、いわくがあるんですよ。」

ここで「南瓜とマヨネーズ」のあらすじが紹介されます。主人公の女性ツチダはセイイチと同棲中。ある日ツチダは昔から好きだったハギオと偶然再会。関係を持ってしまう。その流れでセイイチとの同棲が終わり、同時にハギオとの関係も終わる。そしてセイイチとの平凡な同棲生活が幸せだったことに気付くのだった。

  吾郎 「読みました。もうね、これだけでわかります、気持ちが。」
  魚喃 「生身削って、削って。」
  吾郎 「僕はね、『セイちゃん』も『ハギオ』も嫌いです。」
  魚喃 「私は『ハギオ』は嫌いですね。」
  吾郎 「『ハギオ』嫌いですよね。僕許せないんですよ。
      何が一番許せないかって言うと、なんだっけな、あの「はあ?」って
      言う顔とか。「手つないでみる?」とか。」
      (で、マンガの一コマが写ります。ってそれだけじゃわかんないんですけど、
       「何言ってんの?」って感じの「はあ?」って言ってる場面なのかな。)
  魚喃 「でもマジックにかかってる女の子には、あの「は?」がまた魅力的に
      思えてしまったり。」
  吾郎 「残酷って言うか冷たい表情とか。わかってるけど惹かれるって言うね。」
  魚喃 「うん。」
  吾郎 「ちょっと待って下さい。実体験なんですか。」
  魚喃 「うん、まず同棲とか、割と、うん、あ、すごい焦ってる…(笑)。」

モデルとなった人はいるそうです。魚喃さんは実際に同棲をしている時に昔の忘れられない人に再会、昔は振り向いて貰えなかったのに、自分も大人になっていたせいか「今のお前はちょっと楽しい。」なんて微妙なこと言ってちょっと振り向いてくれたりし、まさにこの作品の連載中に同棲生活 が終わりを迎えてしまったそうです。その衝撃があまりに大きくて突然3ヶ月の休業に入りました。

  吾郎 「その間連載は?」
  魚喃 「何も。マンガ家も辞めるつもりだった。」
  吾郎 「だめですよ、そんなの。」
  魚喃 「でも3ヶ月も遊んでると遊んで得たことをマンガにしたくなって
      きちゃうんですよね。」
  吾郎 「魚喃さんにとってアートとは?」
  魚喃 「アートとはリアル。
      テレビとか映画とか見てて楽しいものってすごいオチや事件があったり
      するんだけど、でも私は現実をどうにかしたくて。
      現実って何も起こらないんですよね、それにこだわっていきたいですね。」

  吾郎 「う〜ん、こんな魚喃さんのアートを、僕の身体が欲しがっています。」

    と言うことで吾郎氏の愛車にみんなで乗り込み、魚喃さんのワークスペースへと向かいます。

  支配人「(魚喃さんが)不安がってますよ、どこへ連れて行かれるのか。」

お部屋に入るなり、吾郎氏「あ、なんかいい匂いする」。リリー氏も「女の部屋だなあ。」なんて言ってます。(^^;)

  吾郎 「あれ、この風景どっかで見たような。」
  魚喃 「『南瓜とマヨネーズ』の舞台になった部屋です。」

次は仕事部屋をみせてもらうことに。

  リリー「狭くて酒臭い部屋だなあ。」

デスクの上には翌日締切りの原稿が置かれています。魚喃さん「ヒーヒー言ってます。」なんて笑ってるけど大丈夫なんでしょうか。部屋の隅にいろいろと文字が書かれたティッシュの箱を発見。

  魚喃 「一人酒をして酔ってる時にマンガの構想が出てきたりすることがあって、
      手近なものに書くんです。」
  吾郎 「一人酒なんかしなくていいのに。」

そして、仕事をしている魚喃さんの姿も見せてもらいます。

  リリー「このコツコツやってる姿がきますね、ちょっとね。」
  吾郎 「ねえ。あら、ちょっと真剣な横顔。」
  支配人「では稲垣様、そろそろ…。」
  吾郎 「いや、まだ居たいんだが。」
  魚喃 「ありがとうございました。」
  吾郎 「あららら、そう言われちゃったら。明日締切りがんばってね。」

◆帰り道◆

線路脇を走る真っ赤なオープンカー。後部座席で立ち上がる支配人。

  吾郎 「ちょっと、危ないよ。」
  支配人「すごいですよ。風の抵抗を全然受けない。」

◆稲垣芸術館にて◆

  吾郎 「それではここで、我が稲垣芸術館が所有する
      グレートミュージックをご紹介しましょう。」

今回のグレートミュージック:「ゴースト・バスターズ」
                1985年 BY レイ・パーカーJr

  支配人「私も映画見ましたよ。さすが稲垣様。」
  リリー「レイ・パーカーJrがこの曲で出てくるまで黒人の歌手が
      楽しい歌を歌うってイメージがなかったので、すごく印象が強くてね。
      その後日本のミュージシャンが『どうしてましたー?』ってタイトルで
      カバーしてたんですけど、多分誰も知らないと思います。」
  吾郎 「どうしてましたー♪」

   「本日、我が稲垣芸術館に増えたアートは、『平凡な日常生活の何気ない
    1コマをアートにする、魚喃キリコのアートワーク』。」

   「今日もまたアートとセッ○スしちゃいました。
    稲垣芸術館、開館まであと500日。」

◆エンディング◆

繁華街を愛車で駆け抜ける稲垣キュレーター。

   「『後ろ髪だけ伸ばされている子供』。なんてアートなんだ。」


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◆オープニング◆

真っ赤なオープンカーを運転するキュレーター稲垣吾郎。白いパイピングの施された黒エナメルのスーツに真っ白の長いスカーフを巻いたいつものスタイルで、今日も芸術館に所蔵すべきアートを探すため出かけて行きます。
工事現場の前を走り抜けるオープンカーの映像に吾郎氏のナレーションが被る。
   〜僕はどうしようもなくつまらない人間だ。
    でも、そんな僕でもアートは優しく抱いてくれる。
    だから、僕を感じさせてくれるアートを探すために今日も走る。〜
    (なぜか笑顔で運転するゴロ様。)

  吾郎 「『工事中の道路に置かれた、車を誘導する人形の笑顔』。
      なんてアートなんだ。」

◆アートワークハウスにて◆

  吾郎 「で、あるんだろうね?僕を感じさせてくれるアートは。」
  支配人「もちろんです。本日のお薦めアート、感じて下さい。」

と、ショーケースに登場したのは、丈の短い着物を着てギターを持った男性。ギターを弾きながら「から〜いのを取って下さい♪」と歌ってます。「からいのはおいしいけどちょっと苦手♪」「ほうれんそうにからいのをのせて出来上がり〜♪」と続きます(って何のこと、これ?)。見つめる吾郎氏、

  吾郎 「コードがずっとCだな。

とつぶやいた後

  吾郎 「だめだ、感じない。」

すかさず流されてゆく「からいのが苦手な」ギターさんでした。

  支配人「では、こちらのアートはいかがですか?」

次に登場したのは、白いテーブルの上に置かれた小さなロボットとスケッチノートが2冊(ロボットは映画『ジュブナイル』のテトラ君です)。

  吾郎 「かなり感じる。」
  支配人「で、ございましょう。
      映画『ジュブナイル』のスケッチとキャラクターなんです。」

そしてリリー氏によるアーティストの紹介です。

  リリー「もし、急に仕事が無くなったとしたらどうします?
      昔はカータンにもウルトラマンにも人が入っていました。
      でもこのアーティストの手にかかると生身の人間の役者は必要でない。
      そんな悪魔的な手法を使いながら子供達にわかるエンターテイメントを
      作るのが、今日お薦めするアーティストなんです。」

考え込む様子の吾郎氏。

☆本日のゲスト:山崎 貴

故伊丹十三監督の一連の作品でVFXを担当するなど、VFXにおける日本の第一人者的存在。今回の「ジュブナイル」が劇場映画初監督作品。

  吾郎 「VFX監督という肩書きですが、これはSFXとは違うんですか?」

日本では通常SFXと一括りに言われますが、SFX(=special effects)と言うのはその場で爆発させる等現場で完結する特殊効果のことで、VFX(=visual effects)は、現場で撮影したものをコンピュータに取り込んで合成などの加工をすることを言うそうです。

  山崎 「僕たちはよく『とんち』を利かせたものと言うんですけど。」

つまり「いかに普通の人が考えつかないような方法で騙すか」と言うお仕事なのです。

  吾郎 「じゃ僕らは騙されて興奮しちゃってるわけですね?
  山崎 「『映像サギ師』ですね。

テーブルの上には「テトラ」とキャラクタースケッチが置かれています。

  吾郎 「初監督作品『ジュブナイル』では、キャラクターや人物設定を全部
      山崎さんが考えられたんですか?」
  山崎 「キャラクターやCGで出てくるものに関しては僕がデザインしています。」

吾郎氏、テトラを指して「これ、ちょっとフクロウっぽいですよね?

  山崎 「よく言われるんですけど、実はデザインのもとは『ランドセルをしょった
      小学一年生』なんです。ほら、ランドセル。」

と、テトラの背中にある四角い箱の部分を指さします。そこから細長い棒状のものが飛び出しているのを見つけた吾郎氏、

  吾郎 「あ、これ、たて笛が出てるんですね。

そこへ、突然テトラがしゃべり出します。

  テトラ「映画館で会おう!」
  吾郎 「はい…。」
  リリー「商売っ気もたっぷりで…。」(^^;)

そして、山崎監督が「ジュブナイル」で一番気に入ってるシーンを見てみることになります。それは、VFXが駆使されたエイリアンと子供達の戦闘シーン。真っ赤な外車(カマロ)の上に、『ガンゲリオン』というキャラクターが落下、車を押しつぶします。

  吾郎 「すごいですねえ。ハリウッド映画見てるみたい。」
  リリー「あの車はほんとに壊れてるんですか?CGですか?」

すかさず吾郎氏「カマロね。」と車名を指摘。(もう、車好きさん。)

  山崎 「現場で実際に大きなおもりを落としてカマロをつぶし、
      CGの重量感を出してるんです。」
  吾郎 「なるほどね。そこが『とんち』なんですね。」
  リリー「ほんとに落ちてきたキャラクターの重さでつぶれたように見えますもんね。」
  山崎 「ありがとうございます。そう見えれば責任は果たせたって感じです。」

話題は出演者へと移ります。

  吾郎 「ちなみにこの映画の主演は?」
  山崎 「香取慎吾さんです。
  吾郎 「ああ、あのユニークなキャラクターの、明るい…。
  山崎 「日本のトム・ハンクス。僕の周りではそう言ってるんですけど、
      役柄によって全然違う演技ができて、素晴らしいですね。」
  吾郎 「素晴らしいですか?ふうん…。」(笑顔ながら悔しそうな表情です。)
     「でもあのグループには他にも素敵なメンバーの方がいらっしゃると
      思うんですけど。ね、あの 稲垣君とか ね。」
  山崎 「あ、稲垣君ね。」

で、山崎さんが映画監督として考える稲垣吾郎の適役は何かを訊ねてみます。

  山崎 「正直なところで言うと、稲垣さんの適役はものすごいサイコキラーとか、
      ものすごい悪役。

  リリー「素でできますよ。」(笑)
  山崎 「あと、意外性ではなくハマリ役としてならアンドロイド。合成人間。
  リリー「一貫して血の通ってないもんですね。」(爆)

  吾郎 「こんな山崎さんのアートワーク、僕の身体にビンビン感じてます。」

と言うことで吾郎氏の愛車にみんなで乗り込み、山崎さんのワークスペースへと向かいます。和気あいあいとドライブし、無事到着。まずはコンピュータルームです。
  吾郎 「ここはどんな部屋なんですか?」
  山崎 「最終的な合成をする前の素材のCGを作ってる部屋です。」

スタッフが作業しているコンピュータ画面をのぞくと、先ほどのカマロが潰れる場面に登場したキャラクター(ガンゲリオン)のCGと、車が潰れる実写映像が映し出されています。今はガンゲリオンのアニメーションを調整中だそうです。

  リリー「よく見ると車をつぶすおもりが映ってますね。」

次に案内された部屋は、映画で使われる小道具やミニチュアが作られる場所。部屋の隅には変わった形の機械が置かれています。

  吾郎 「僕は知っていますよ。これは神崎宗一郎こと香取慎吾が発明した
      タイムマシンですね。」

と、シューっと言う音と共にタイムマシンが作動、デモンストレーションして見せてくれました。

  吾郎 「これは実際にタイムスリップできるわけですよね?」
  山崎 「(笑)まだ開発中なんで何とも言えないですけどね。」

◆帰り道◆

高速道路を走る真っ赤なオープンカー。
  吾郎 「どこ行きますか?」
  リリー「ファミレスに。」

◆稲垣芸術館にて◆

  吾郎 「それではここで、我が稲垣芸術館が所有するグレートミュージックを
      ご紹介しましょう。」

今回のグレートミュージック:「ロックバルーンは99」1984年 BY ネーナ

  支配人「存じませんでした。さすが稲垣様。」
  リリー「ネーナはドイツのバンドで初めて全米・全英で1位という快挙をなし得た
      バンドなんですが、ボーカルのネーナ・ケルナーはわき毛を生やしてビル
      ボード1位を獲得したと言う意味でもおそらく初めての人ですね。
      当時日本でもそれでしか話題にならず、それ以来ずっと『わき毛の人』と
      して記憶してます。」
  吾郎 「なるほど、『わき毛』。少しアートだな。」

   「本日、我が稲垣芸術館に増えたアートは、『とんちで独自の世界を創造する、
    山崎貴のアートワーク』。」

   「いやあ、今日もまたアートとセッ○スしちゃいました。
    稲垣芸術館、開館まであと580日。」

◆エンディング◆

交差点を愛車で駆け抜ける稲垣キュレーター。

   「『プロ野球を見に行く時、必ずグローブを持っていく小学生』
    なんてアートなんだ。」


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◆オープニング◆

真っ赤なオープンカーを運転するキュレーター稲垣吾郎。黒エナメルのスーツに真っ白の長いスカーフを巻いたいつものスタイルで、今日も芸術館に所蔵すべきアートを探すため出かけて行きます。

防衛庁新庁舎近くの商店街を走り抜けるオープンカー。

   〜僕はどうしようもなくつまらない人間だ。
    でも、そんな僕でもアートは優しく抱いてくれる。
    だから、僕を感じさせてくれるアートを探すために今日も走る。〜

  吾郎 「『絶対に白線の上しか歩かない小学生』。なんてアートなんだ。

◆アートサウンドハウスにて◆

  吾郎 「で、あるんだろうね?僕を感じさせるアートは。」
  支配人「もちろんですとも。ね、パンチ。」
  パンチ「あ、は、はい。それでは当店お薦めのアートを感じて下さい。」

と、ショーケースに登場したのは、学ラン姿の男性。でも高校生には見えません。両手の拳を上げながら「イエーイ!イエーイ!」と跳ねてます。訛りのある話し方で「えーと、3Bのハナワです。まずは現国のババ先生やります。」と言ったと思うと「こていっ!こていっ!」と叫び、また「イエーイ!イエーイ!」。で、「次は水泳大会の時のD組のアイザワヒトミさんの息継ぎやります。」と、今にも死にそうな形相でクロールの息継ぎのマネ。すかさず吾郎氏、赤ボタンをプッシュ。「感じない!」首まで振っちゃったりします。学ランの彼ってば「最後に武蔵丸の顔…。」と言ったきり流されてゆきました。

パンチ氏の「続いてのアート、どうでしょう?」の声とともに登場したのは、ショーケースの隅っこにうつむいたまま佇む女性1人と男性2人。

☆本日のゲスト:クラムボン

音楽系の専門学校で知り合った原田郁子、ミト、伊藤大助の3人が96年に結成。ピアノ、ベース、ドラムと言う最小限の編成ながら無限の可能性を秘めたサウンドを聴かせてくれます。

  吾郎 「『クラムボン』と言う名前の由来は?
      響き自体は何かおいしそうな…。

と、バンド名の由来を聞く吾郎氏に、ボーカルとキーボードのミトさんが答えます。

ミトさんが小学6年生くらいで習った宮沢賢治の『ヤマナシ』と言う童話の中に、2匹のカニが『クラムボンは死んだよ』と会話している場面があったそうなんですが、それっきり終わりまで『クラムボン』についての描写がなく、「結局なんだったのかなあ」と思った覚えがありました。そして、今のバンドを結成した当時にやっていた音楽がわけわからない感じだったため、その『クラムボン』と同じと言うことでつけたそうです。

  吾郎 「わけわからない感じって?」
  ミト 「ノイズ音楽ってわかります?」
  パンチ「アドリブでワアアアンってギターをどっかにこすりつけたりとか?」
  ミト 「まあギターいないですけど、うちは。」

バンドの雰囲気からも最初にノイズ音楽をやっていたとは意外な感じ。とにかく当時はそれが彼らの音楽だったのですが、ライブをやるようになったらお客さんを遠くに感じてしまったそうです。

  吾郎 「わかんなかったんですよ。溝ができちゃったんですね。」
  原田 「そういう感じがすごくしたから。
      その距離を埋めたくて今みたいな曲になってきたんですね。」

と答える原田さんは前髪をすごく短く切り揃えています。眉毛から5、6センチ上。

  パンチ「なんか、前髪はどうしたんですか?
  吾郎 「外して忘れてきちゃったんじゃないんだから。
  原田 「地毛です。」

今日の演奏曲の題名は「シカゴ」。なぜ『シカゴ』かと言うと作曲している時にBGMでかかっていたのがシカゴの曲だっ たから。初めは仮題だったものがそのままになってしまいました。

  吾郎 「では歌詞の『もう何もいらないよ』とかの内容とはまったく関係無いわけですね。」
  原田 「はい。」

クラムボンの敬愛するアーティストは小室哲哉氏。

  ミト 「キーボードをいっぱい積んでるのを見るだけで『かっこいい』とか思って。」

キーボーディストはいっぱいキーボードを立てなきゃダメだと思ってたくさん買ったりもしちゃったそうです。

  吾郎 「クラムボンのバンド活動としてのこだわりは?」
  ミト 「3人でやってるってことですかね。」

彼らはライブもCDも3人で出す音しか入れてないそうです。プロデューサーも立てていないので音を重ねることはありません。出せる音以外は入れないのがこだわりです。

  原田 「そのまんまを見てもらいたい。」
  伊藤 「まず自分らが面白いと感じて正直にやることが一番いい表現なんじゃないかと。」

ここでミト氏、伊藤さんから吾郎氏にカメラが切り替わる様子をモニターで見ていて感動した様子。カメラさんにもう一回やってもらいます。伊藤さんのアップから吾郎氏のアップへ。

  ミト 「いや〜、いい番組だなあ。」

ミトさんは常々、吾郎氏に対してアートを感じていたそうで。

  ミト 「稲垣吾郎さんて『吾郎ちゃん』て言われてるじゃないですか。
  吾郎 「ええ。」
  ミト 「『ちゃん』づけされるようなフェミニストな感じがある人達ってすごいかっこ
      いいと思うんですよ。それってここで言う『アート』だなって。

  パンチ「あれ?あの、『カトちゃん』は?
  ミト 「カトちゃんもアートですよね。」
  吾郎 「『ちゃん』でいきましょうよ、皆さんも。大助ちゃん、ミトちゃん。」
  パンチ「ミトちゃんて言いやすいですよ。」
  吾郎 「ミトちゃん、ぺ!」(^^;)(^^;)(^^;)
  ミト 「『ぺ』はいらない…。」

  吾郎 「こんな『クラムボンのサウンド』、僕の身体が欲しがっています。」
     (で、カメラ目線なのよね〜(*^o^*))

と言うことで、クラムボンの演奏が始まります。

  クラムボン:「シカゴ」
(メインボーカルは女性の原田さん。彼女のCHARAっぽい歌い方にポップでシンプルなサウンドがあいまって可愛らしい曲です。)

◆帰り道◆

愛車の真っ赤なオープンカーで蛙の鳴く道を走る稲垣キュレーター。「もうなにもいらないよ♪」と「シカゴ」を口ずさんでます。「でたらめしゃべり出す♪」と言う詞に合わせてお口の前で手をパクパク。

◆稲垣芸術館にて◆

  吾郎 「それではここで、我が稲垣芸術館が所蔵するグレートアートを紹介しよう」

今回のグレートアート:「葛飾北斎の『富嶽三十六景』」

  吾郎 「なんてアートなこの波のうねり。
      例えるなら、本宮ひろしのマンガの構図のような大胆さ。
      男を感じさせるアートだ!」(力入ってます。)

     「本日、我が稲垣芸術館に増えたアートは、不思議な浮遊感の中にシャープな
      センスが光る、『クラムボンのサウンド』。」

     「今日もまたアートとセッ○スしちゃいました。
      稲垣芸術館、開館まであと589日。」

◆エンディング◆

愛車を駆る稲垣キュレーター。踏切渡ってます。

   「『せんだみつおの2000年限定ネーム、にせんだみつお』。なんてアートなんだ。」


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