02.ともすれば零れそうな想いが
流れ落ちる、熱、熱、熱
何が為 誰が為
人を愛することが出来ても
たった一つの大切なものを見つければ、
それはいとも簡単にその他大勢の人形と成り果てる
何が為 誰が為
「キラ……」
長い髪を風で揺らし、海と空を見つめる眸は、背負った魂の重さに揺れていた。
「失った重さは、どれほどのものなんだろう」
唯一のもの。
それを自分は失わずに済んだ。
「僕は、正気で居られるかな」
空を見つめるその姿。
哀婉にさえ見えるキラを、ラクスは見つめた。
人が成した、その姿。
最高の──
それが何だと言うのだ。
それを願ったか?
誰が願った?
その業を背負わせるのは、罪ではなかろうか。
「あなたなら、迷わず己の抹消を望むでしょう」
「そうかな?」
くすりと、キラは何の憂いも不安も恐怖もなく、微笑む。
その姿は、余りにも哀しい。
「けれど、どうかそれだけは、望まないで下さい。どうか、それだけは。キラ……」
「ラクス……」
「この時代では、無知であることさえも罪なのです」
キラの眸が、切なさに揺れる。
それにラクスは、苦笑を零した。
「私も、我が侭な人間なのです」
「人類を滅ぼしてもと、言うの?」
「私の愛する人達が生きているなら」
世を滅する破となろうと、生きろと。
「冗談に、ならないかもしれないよ?」
「はい」
ラクスはにこやかに微笑んだ。
「お二人の幸せを願うのは、罪ですか?」
ただそれだけのことが、とても難しい。
多くの命が消え去る事。
その屍の上にある幸せが、本当に幸福を呼びはしない。
本当は誰も、死なせたくない。
「罪なのでしょうか? キラ」
キラはゆっくりと首を横に振った。
「罪じゃないよ。心の中は、自由だから。心の中だけは、自由だから、何を想っても赦されるんじゃないかな」
たとえ、誰かの死を願っても……
「ありがとう、ラクス。僕も、ラクスの幸せを願ってるから。だから、幸せになってね」
誰かの犠牲なくしては、訪れない幸福。
それに意味があるのかと思う反面、それでも望んでしまうのは人の業。
嗚呼……
何もかもから、解放されたい
アークエンジェルに大切なものだけを乗せて
誰も知らない宇宙へ
後は勝手にすれば、良い
好きなだけ殺しあって、
好きなだけ罵り合って、
好きなだけ憎みあって、
滅亡の道を好きなだけ歩めば良い
けれど、その裏で、苦しむ声を知っている
切ないほどに、哀れなほどに、名も知らない誰かの慟哭(どうこく)
力無き者は、消え去るより道は無く
けれど! だけど!
名も知らない誰かまでをも助ける力は無いからっ!
何もかもを呑み込む焔
それしか、持ってはいないから……
誰かを助ければ、誰かの血が流れ
嗚呼……
夢を見るよ
あの、桜の木の下で
学校で、公園で、お互いの部屋で
遊びに行った様々な場所で
無邪気な喜怒哀楽を浮かべていた、あの頃に還りたい
それでも僕は、どこにも逝けずに
この慟哭を聞き続けるのだろうか────
お題配布サイトさまよりお題を頂戴して、
拍手お礼小話とさせて頂いております。
分かり辛くてごめんなさいっ(><)パート2
えっと、ユニウスセブンを地球に落とす辺り。
争いなど無くなって欲しい、誰も死なせたくない。
それを真に願っているけれど、繰り返されてしまう歴史に、
「ともすれば零れそうな想い」がぽろりと零れ落ちてしまった。
という感じに仕上げてみました。
種は更新停止中ですいません。
それでも応援くださる皆様に、感謝を込めて。
本当に、ありがとうございます。
2005.11.05 UP