01.その姿は祈りに似ている
いつも、気がつけば空を見上げている。
──空⋯⋯宇宙
この目では実際に見えない、空を。
「キラ」
「アスラン⋯⋯」
呼ばれて振り向くと、そこにはアスランの姿。
「またここに来てたのか」
「⋯⋯うん」
「海からの潮風は当たり過ぎると身体に悪い。もうすぐ、陽も落ちる」
「うん、もう戻るよ」
海沿いを、二人は並んで歩き出した。
海。地球に来て、初めて見た海。
ここから生命は生まれたのだと言う。
母なる大地を知らずに生まれた命は、この海に還ることが出来ないのかもしれない。
それを嘆きと感じるのは、それでも人という生き物だという証なのだろうか。
この星に罪は無い。
ただ、誤算だったのは、人と言う愚かな生き物が生まれたこと。
「ホントに、終わったのかな」
歩きながら、キラは視線を海に向けて、ぽつりと呟いた。
アスランは立ち止まって、前を歩くキラを見る。
海に視線を向けていたキラも立ち止まり、振り返った。
「一体何が、変わったのかな」
小首を傾げてキラが見つめる先は、この目では実際に見えない、空。
「生命というカテゴリーの中で、人は異端なんだと思う。けれど、やっぱり、自らこの命を捨てることは出来ないよ⋯⋯」
「当然だ。自ら意味も無く命を捨てるなど、このソラに散っていった多くの命に申し訳が立たないだろ」
「そうだね」
キラは儚げに、苦笑にも似た笑みを浮かべた。
「何も出来ないなんて⋯⋯、思うな」
「アスラン⋯⋯」
「俺達の出来ることなど、高が知れている。けれど、無意味なことなど無いんだ。何も」
アスランはやんわりとキラを抱き締めた。
「俺は、キラと在れればそれで良い」
「うん⋯⋯」
キラを抱き締める、アスランの腕に力が籠る。
「もう二度と、お前に刃を向けるような⋯⋯そんな事はもう二度としたくないっ」
「うん⋯⋯っ」
願わくば、魂に安息を
どうか、そっとしておいて
多くの、
何ものにも変え難き命を対価として得たのが、
偽りの平和だなんて、悲しすぎる⋯⋯
大地は削れ、木々は焼かれ、術無き生き物は声も無く散り、
ただ安息を求めて剣を握りし魂は、願い叶わずソラに眠る
人が出来ることなど、ほんの少し
そう、たった独りで平和を齎すことが出来るなんて、傲慢な考えだ
世界は、人の手に委ねられてはいけない
人が動かしていると考えてはいけない
自分以外は、全て個々であり、その数だけの平和がある
絶対的な平和など、それは偽り
誰もが皆、同じものを求めているとは限らない
喜怒哀楽があって良い
いつも絶えることなき笑顔があり
ただ、頑なにならず
涙流すときがあろうと前を向いて
声を出して笑い合って
何となく、平穏に生きていける
そんな世界に、なって欲しい⋯⋯
お題配布サイトさまよりお題を頂戴して、
拍手お礼小話とさせて頂いております。
これは、種と種Dの間⋯⋯かな? 場所はオーブの海辺。
戦争がとりあえず収まって、平和へと歩んでいるように見えるけど、
キラは漠然とした不安を抱え、空を見上げてしまう。
その姿が祈りに似ている⋯⋯というわけですな。
分かり辛くてごめんなさいっ(><)
種は更新停止中ですいません。
それでも応援くださる皆様に、感謝を込めて。
本当に、ありがとうございます。
2005.09.21 UP