04. 白の暗号
nothing...
There is nothing in the phantom,too.
(幻には何もありません。)
It is meaningless to request the answer.
(答えを求めるのは無意味です。)
阿笠邸に一通の手紙が届いた。
切手も差出人も、宛名すらなく。
それは、広告の類かと思われたが、封を開けて、それは否定された。
「江戸川くん。これ、あなた宛じゃないの?」
真っ白い封筒。
それは誰かを──かの白い魔術師を──彷彿とさせた。
珍しくも自分宛に届いた予告状。
そう思って、逸る心のまま、素早く中身を取り出す。
それは確かに、かの怪盗が予告に使う紙と同じに見えた。
そう、見えただけ。
確証を得るものが何も無い。
暗号もあのマークも、何も無い。
ただの真っ白な、上質な紙。
それをテーブルの上へ、無造作に置いて、ぽすっとソファーに座り込んだ。
「……何も書いてないわね」
「ああ」
「それ自体が暗号?」
「そんなわけねぇーだろ。たぶん、来るなって意思表示」
小さな科学者は探偵を見た。
探偵は、視線をどこか、ここではない虚空へと向ける。
俺は、嬉しかったんだ
そんな自分に全く気づかなかったけど、
確かに、心振るわせるほどに、嬉しかった
それが怪盗の性だと言われれば、それまでだけれど
アイツは、見た目がガキだからって否定はしなかった
呆れることもなく、油断もなく
俺を慧眼の持ち主と言うけれど、
アイツも、何ものにも惑わせられぬ慧眼の持ち主
正体に気づいた後も、名探偵と呼ぶその響きにだけは、揶揄する気配が全く無かった。
ヤツは、俺を名探偵と呼ぶ。
俺だけをそう呼ぶ。
コナンになる前は、やたらそう呼ばれて、ただ天狗になっていたけれど。
今は
ヤツにそう呼ばれることだけが、そう呼ばれることこそが、
最高の誉れと言わんばかりに、何よりも自分を奮い立たせる。
本質を見抜く瞳を持つ、アイツが、名探偵と、俺をそう呼ぶ。
どれだけ姿形が変わろうと、その本質が変わることはないのだと、
そう、言ってくれているようで……
俺は、嬉しかったんだ
江戸川コナンであろうと、工藤新一であろうと、自分自身を偽ることはできない。
暗示でも、洗脳でもしないかぎり、完全に、全くの別人にはなれない。
江戸川コナンを演じるには、工藤新一ではないと思うところから始まる。
だから、自分自身も混乱して、見失う。
違うんだ。
誰をどう演じようと、どんな人格を作ろうと、細かい判断の一つ一つに、本来の基本的な性格が反映される。
何も変わってはいない、何も失ってはいない。
隠された謎を解き明かし、知りたい欲求に逆らえない生き物。
本来の時間を取り戻し、必ず生き残ってやる。
怪盗キッド
お前に出会って、そう強く思うようになったのは、紛れも無い真実。
そんなお前に見つけられて、認められて、嬉しかった。
だから、出来れば、自分もそんな人間になりたい。
出来ることなど何もないだろうけれど、
もしも見失うときがあるならば、俺が見つけてやる
探すのが、探偵の仕事だからな
そう、願っているのに。
それすらも、お前を切り裂く刃となるのか。
人間は、醜くも愚かな生き物だ。
けれど、希望はある。
俺は、ただ、本当に──
ただ、俺にとってのお前という存在と同じように、
俺は、在りたい
お題配布サイトさまよりお題を頂戴して、拍手お礼小話とさせて頂いております。
コKなのかKコなのか。お好きな方でご想像下さいv
拍手お礼は全て曖昧! これを売りにさせて頂いております。
01から繋がっております。そんな気はなかったのですが、03で完璧に繋がってしまいました。
これだけでも読めるけど、全部読むと続きっぽくってちょっと嬉しいかな?ぐらいのもんだと思います。
短編で終わらせられない身体のようで……はは。
コメントも本文完成後に書いてるので……今は繋がっていても問題がなくなりました。
読みきりのシリーズのように、少しでも楽しんで頂けたら幸いです。
2005.09.21 UP