02. 何もかも暴かれたら最後に何が残るんだろう

ついこの間までは、どこかに居そうな普通の人間だったのに

今では普通が、今までよりもっと遠いものになった

全てを終えたら、何が残るんだろう

困ったなぁ

君は不可能を可能にする力を持つ人間だから

納得するまで、諦めることを知らない

空っぽになっちゃうよ

抜け殻になった俺は、君にはもう捨てるしか価値のないものとなるんだろ?

いや、

捨てることさえ面倒で、

記憶の片隅に残ることさえ出来ない

忘却の彼方に押し遣られて、終わり

俺にはこれしかもう残ってないんだ

だから、諦めて?

「うわっ」

ドシンと、自分の身を支えられないほどの力ではなかったけれど、何か、小さな子供に後ろから体当たりされたような力を感じた。

振り返ると、そこには尻餅をついた、夜の衣装を身に纏ったときによく見かける小さな探偵。

少し目を見開いてしまったが、尻を押さえながら立ち上がっている途中の探偵には気付かれていなかったようだった。

「ボウズ、危ないからちゃんと前見て歩きな」

夜は怪盗、昼は高校生。

たかが17歳、されど年齢不詳の怪盗。

この程度で怪盗キッドは揺るがない。

快斗は呆れたような眼差しを向けて、探偵──コナンを見下ろした。

「あ、ごめんなさい」

心持ち腰を押さえながら、心ここに在らずな声音で呟いた謝罪は、快斗の顔を見ることも無く落とされた。

こいつ、何処見てんだ? と思った先は、遥か彼方で。

自分に鎌をかけに来た訳ではない事を知る。

そりゃそうだと思う。

自意識過剰になって警戒しすぎるのも、この探偵には危険だ。

「コナンく~~ん! ど、どうしたの?」

少年探偵団の、本物の小学生3人が息を切らせながら走ってきた。

偽者小学生その2である、優秀なるドクターは居ない。

「い、いきなり走り出したらびっくりするじゃないですか」

「わりぃ……」

もう向かう先の目的を諦めたのか、コナンは彼らを認識して謝罪の言葉を呟いた。

危ないな~

何かを見つけたら、後先考えずに追いかける癖、直した方が良いんじゃない?

「友だち無視したらダメじゃん」

「う、うん、ごめんな、さい……」

上から降ってくる声に、やっと快斗の存在をちゃんと認識したコナンは振り仰いで快斗を見る。

そして一瞬、声が不自然に途切れた。

自分の顔の作りに驚いたのだろうと思いながらも、快斗はおくびにも出さず、少し説教モードな表情でコナンを見下ろした。

「次からは気をつけろよ」

ぽんぽんとコナンの頭を軽く叩いて、快斗は歩き出した。

まだ見てる

懲りないお子様だねぇ

昼間に、疑いをかけられていなくても、出会いたくなんてなかった

この顔を見れば、嫌でも連想してしまう人物が居る

俺にとっては、探偵

探偵にとっては、元の自分だ

取り戻したくて頑張っている、本来の自分

気に掛けるなって方が無理だ

些細な切っ掛けからも真実を見つけ出してしまう君には、見せたくなかったよ

街で偶然ぶつかった高校生

何者か調べる手段が無いように見えるけれど、君なら

この近辺にある高校で、学ランで

もしかしたら校章に気づいたかもしれない

名簿なんて、簡単に手に入るし

高校生の黒羽快斗は、本籍も住民票も名前も、全て本物

完璧を目指すならば、この世から黒羽快斗を消去するべきなのだろうけれど

それはやっぱり、出来るなら最後の最後までしたくない

自分だけのものではないから

黒羽快斗を捨てるということは、母親を、父親を捨てるということ

父を捨てて、怪盗キッドになる?

それでは意味が無くなる、ような

どんどんと、そう、どこまでも、空っぽに近付いていく

だから

お願いだから、諦めて?

お題配布サイトさまよりお題を頂戴して、拍手お礼小話とさせて頂いております。

コKなのかKコなのか。お好きな方でご想像下さいv

拍手お礼は曖昧を売りに(売り?)しております♪

5のお題ですから、お題が5つあります。

微妙にリンクしてるっぽいです。ホントに、ほんの少し。

気持ちの持ちようによってどっちにも取れる、そんな感じ程度です。はい。

  2005.11.05 UP