01. 宝石を散りばめたように
宝石を散りばめたように──渦巻く、光
重力に引かれたこの身体では、ただの足掻きにしか映らない
けれど、夜を翔ける白い怪盗には、
宝石のように心奪われる、美しき光に見えるのだろうか
命限りに必死で生き抜く、魂の輝きに
自分には、怪盗こそが光に見えた
眼下に広がる、この光の渦さえ飲み込んで、我ここに在りと輝く光
その強烈な光は
己の求める光に似て────いや、そのもの
何百万という魂の輝きを、たった独りで覆す強さ
「よう、キッド」
掛けられた声に、怪盗はふっと音も無く口の端を笑みの形に吊り上げる。
気配を読めるのは、お互い様。
隠れる気の感じられない探偵。
気配を感じていながら、飄々と降り立った怪盗。
探偵はこの瞬間が好きだった。
隠れし気配は自分であると知らしめて、それでも怪盗が姿を現す瞬間。
降り立つその姿、その表情が、自分だけのモノであるかの如く錯覚できるから。
「……おやおや、こんなところでかくれんぼですか? ご友人の姿はもう見えませんよ? 闇に紛れて本物の鬼が来る前に、お家へ帰られてはいかがです?」
こんな言葉遊びにすら苛立っていたのは、遠い昔。
真実の姿を取り戻してはいないけれど、この例えようも無い望みに気づいたとき、怪盗の心遣いを読み取れるようになった。
それは自分に都合の良い夢かもしれないけれど。
「……心配は無用だ。かくれんぼじゃなくて、これは鬼ごっこ。そんで鬼は、俺だしな」
追いかけるも、止めるも、自分次第。
この光景に、何人たりとも踏み込ませはしない。
このステージは、俺だけのもの──
そう言い切る探偵に、怪盗の笑みが深まる。
「それでは、お相手させて頂きましょうか?」
「ああ」
探偵の返事を合図に、二人は同時に同じ方向へ飛んだ。
その一瞬後に、追いかけるように聞こえる、金属がコンクリートにぶつかる音。
「どちらの鬼さんでしょうかね?」
「俺はこんな形だ、あんな物騒なもんで追いかけられる心当たりはねぇな」
溜め息が上から落ちてくる気配を、探偵は感じた。
「望んで鬼になどなるからですよ……」
暗に、へたに首を突っ込むからこんな思いをするのだと仄めかす。
それを探偵は、鮮やかな笑顔で受け止めた。
「望むところだ」
「無用な闇に触れるものではありません」
「触れるも何も、探偵は闇属性だろ」
まあ、あんな無粋な奴らとは違うカテゴリーに属してるつもりだけどな
「いつか、痛い目に合いますよ。ってもう合っておられますね。ホントに、懲りない方だ」
お痛が過ぎると、それだけでは済まなくなりますよ?
「過去の汚点は参考にするさ。人は日々、成長するんだぜ?」
「成長しているようには見受けられませんが……」
怪盗は小首を傾げて、自分と探偵の身長差を確かめる。
「てめぇ! そんなからかいは他のヤツにしろっ」
この姿では分が悪すぎると、探偵は舌打ちしたい気持ちを禁じえない。
「ともかく、命はたった一つ。お身体は大切に」
弾むような調子でその言葉を探偵に投げ掛けた怪盗は、気配も感じさせずに探偵と距離を取る。
そしてにっこりと笑って──とは言え、探偵には口元しか分からなかったのだが──パチンと指を鳴らすと同時に上がった煙と共に消えた。
無粋な奴らの気配が消えたから、こいつも消えるだろうなと思っていたけれど。
今夜の鬼ごっこは終わり。
そう決めていたから、無理に魔法使いの裏側を暴き出すこともない。
とは言え、あの翼があれば、ひとっとびで休息が得られるのにと、思ってしまう。
そして
同じものが見れるだろうかと、思った。
エネルギーを消費して輝く光も、無くてはならないもので
その中のどこかにアイツが居ると思えば、それほど悪いものでもない
その中に自分の身を溶け込ませても、悪くない、そう思った
お題配布サイトさまよりお題を頂戴して、拍手お礼小話とさせて頂いております。
コKなのかKコなのか。お好きな方でご想像下さいv
どっちなのかはっきりと決めて、自分に言い聞かせながら書かないと曖昧に……。
シリアスで短編は特に、自分でも判断つきません。(^^;)ゞ
拍手お礼小話は曖昧で行こう! と思っております。
2005.09.21 UP