03.いなくならないで

あ……

配達中、偶然にも見かけた、彼の姿。

そりゃ、配達先は群大の医学部だけど……

こんな大きな学校で、人も一杯居て、そんな中、出会った確立。

それに喜ぶ心と、悲しむ心が同居する。

向こうは気づいていない。

拓海は、帽子の鍔を引き下げた。

峠で、車という同じものに携わって、夢を見て、それを現実にしようとしている。

同じものを見て、同じ先を見る。

それでも、彼は遠かった。

傍から見れば、藤原拓海は、高橋涼介率いるチームの一人。

誰もが羨む、そのポジション。

涼介さんと呼べば、彼は柔らかな笑みを浮かべて振り返る。

彼に存在を認識して貰ってるというだけでも、ギャラリーには羨望の的で。

親しげに呼び止めることが出来る人間など、そう多くない。

だけど。

それは、一時のことなのだ。

ギャラリーには、彼と同じカテゴリーに組み込まれているけれど、違う。

傍に居るなんて、違う。

最初から、彼は、彼だけは、遠い存在。

白衣を着ている涼介さんが、まるで別人のように見えるのも

当たり前なんだから……

いなくならないで

どこかに行かないで、なんて

そんなことを感じるなんて、おかしいんだ

最初から、俺の傍には居ないんだから──

お題配布サイトさまよりお題を頂戴して、拍手お礼小話とさせて頂いております。

あー……短編書けない病、継続中。

どうも、長いか、激短か、どちらかになってしまいます……。

でもこれは、何となく雰囲気は分かって頂けるのではないかなぁと。えへへ。(汗)

少しでも楽しんで頂けたなら、幸いです。

イニDはオフメインで、サイトの方は駄文更新停止中ですいません。

それでも応援くださる皆様に、感謝を込めて。

本当に、ありがとうございます。

  2006.12.28 UP