02.あの日はもう過ぎた

チームと契約して、レースに出る。

やっている事は、プロDのときとあまり変わりはなく。

それでも、新しいことの連続だった。

最初は、ドキドキして、わくわくして。

今でもそれは変わりなく、速くなることを考えてる。

なのに、何かが足りない。

ワンステップ上に進んだというのに、物足りなくて、そして寂しい。

チームの人たちは、みんな優しい。

シビヤな世界だからそれなりに厳しいけれど、孤独感はない。

きつい事を言われても、可愛がってもらってる。

恵まれてる、と思う。

周りが言う、ライバルって存在も居る。

上を目指すのに、最高の環境。

何が足りないと言うのだ。

贅沢なのだ。

あの頃の方が、楽しかったなんて

そんなこと、あるわけない

啓介さんは楽しそうに走ってる。

競争だ、なんてあの人に言われたら、負けん気が出て、楽しい。

最高のスタートラインまで引っ張ってもらって、何が足りないと言うのだ。

足りないものなんて、ない。

何も、ない。

「藤原、スタート5分前だ。行ってこい」

「はい」

いつも声をかけてくれる。

それに笑顔で応えて。

違う、なんて。贅沢なのだ。

違わない。

ここが、今、俺の居る場所……

お題配布サイトさまよりお題を頂戴して、拍手お礼小話とさせて頂いております。

長くならないように、ワンシーンを切り取った形にすると、思いっきり短く……ごにょごにょ。

片思いのまま一年が過ぎて、声も聞けなくなって、過ぎてしまったあの頃を思い出してしまうって感じに仕上げてみました。

  2005.12.02 UP