武奈ヶ岳
(小てつ NO.107) 2017.02.12


 
雪の明王殿


平成29年2月12日(日) 雪(上は猛吹雪)       小てつ単独

コース:
・葛川センター稲妻号デポ~御殿山コース ピストン





 この週末またもや大雪予報である。ただ、先月の雪よりかはいくぶんマシな様子、予報が大騒ぎで実際は大したことなかったというのが一番うれしい?パターンなので(武奈とか人気の山は入山者が少なくなるから)、ここはチャンスかもと、雪の武奈ヶ岳に行ってみようと週中考えていました。

 ただ問題は雪の降り方で、前日までは大したことがなくっても、当日朝に起きてみたらエライことになっていた先月のように娘らの運転手をしなければならず、山行自体中止にせざるを得なくなるので、そんなあやふや予定ではどなたとも約束できず、今日ははなから単独でとなる。

 朝起きて窓からまわりを見てみると、屋根雪も無く道路凍結もなさそうな雰囲気。これなら行けると準備をして、いつも通りの7時に自宅を出発する。本当はもう少し遅く、8時30分すぎに花折峠を越えるような時間に出たら除雪車とバッティングしなくて済むかもと思うが、それではデポ地からの出発時間が遅れてしまう。ここは峠の変なところでバッティングしないことを祈りながら走っていく。

 大原の雪は大したことはなく、気温もマイナス3℃と冷え込みはきつくない。ところが途中トンネルを越えると景色は一変する。今日は荷台に砂の重しを乗せてきている稲妻号は、おしりを振ることもなくグイグイ登っていくが、花折トンネルまでもう少しというところで、恐れていた除雪車が登り車線を先行している。止まったらリスタートが難しいかもということで、対向車線も見えないのに除雪車の脇を抜けて前に出る。恐怖の一瞬だ。運良く対向車はなく無事にトンネルに入れた。

大原の積雪

 トンネルを越えると積雪は一層多くなり、道路脇に除雪の雪壁ができている。近年最高の量だ。これだといつもの「牛ヶ鼻トンネル」の向こうにデポして回る権現山~坂下のループ周りで、車道を歩くのは無理な状況。

 雪は坊村に近づくにつれ、どんどん多くなる。こうなると除雪の行き届いていないだろう曙橋を渡れるか心配になるが、朝の路面は凍っていて、逆にすんなり渡れ、まだ空いていた葛川センター駐車場に駐車できた。

 となりに停まっていた車も登山準備中で、彼の仲間が前日に登り御殿山で断念したとことと、今朝は先に3人が先行していったとの情報を得る。駐車場でテントを張っていたグループがいたが、前日に来たはいいが登山を断念したグループだろうか?。

牛ヶ鼻トンネルあたり 中村橋あたり

 小てつの方が先に準備でき出発。トイレを借りて明王殿に向かう。明王殿の屋根には今までで一番の雪が乗っていて、橋も雪で埋まっている。それを見て最初からアイゼンを着けていくことにし、軒先を借りて装着。植林地の急登に取り付いていく。

 雪はあるが気温は低くなく、すぐに衣服調節することになる。植林地の中、すでに降りてくる若者三人がいて、「もう登ってきたん?」と聞くと、彼らは昨晩テント泊をし、今朝はそれより先には登らずに降りてきたということだった。「宴会部やな?」とひやかして別れる。その後すぐに、先行していったという三人に追いつく。小てつに追いつかれそうでも三人は先を急ぐこともなく、逆に追いついた小てつに道を開けてくれる。見ればこれも若者三人組で、ワカンやシューは装備していない軽装で、この先大丈夫かと心配する。

 木村先生が「モミジのコバ」と呼ばれるポイントに1時間で到着。ここまでは凍結も無く、割と歩きやすかった。ところがその先の登山道を10歩ほど入り込んでバックする。本日はファーストなのか登山道のトレース跡でも膝まで入り込んでしまうのだ。トレースは左手にもあるが、左手に進むと先で急登になるのを知っているので、ここは本当の登山道通りに進みたいところ、アイゼンからシューに履き替えて進むことにする。

 コバからP846の急坂地点は尻セード跡や駆け降り跡と思われるトレースがいくつも残り、どれが登りのトレースなのか良くわからなくなっている。あとでわかることだが、テント泊の団体さんは夏道であがったようだった。小てつは何とか冬道のトレース跡を見つけ、急坂を南に回り込んでから稜線にのる。

モミジのコバあたり 夏道分岐

 稜線のテント場には、まだ2張のテントが残るが無人のよう。武奈に向けて出立した模様。だからここからは団体さんのトレースが残っていて、ツボ足跡の歩きにくいトレースを、シューを履き替えるのも面倒で、そのまま踏んでいく。

 見晴らし台の手前で、外刃のシューの単独男性に追いつかれる。小てつは先ほどの冬道ファーストで、エネルギーが黄色点滅になっており、どうぞどうぞと先をゆずる。せっかくの見晴らし台だが、まわりは吹雪でなんにも見えない。ここから御殿山までは、まだ木々が吹雪をさえぎってくれる。(ここでカッパを羽織っておけば良かった)、テント泊の団体さんとすれ違う。彼らは御殿山までだということだった。

見晴らし台上の雪庇 御殿山直下の雪庇

 御殿山ピークに11時着。ここで三人の登山者に追いつかれる。外刃シューの男性は、「先へ行っても面白くないでしょう。降りたらまたここを登らなあかんし・・」と、アンタ小てつを抜いていった馬力者やのにご無体な・・ことをおっしゃり引き返された。あとの三人はワサビ峠へと降りていかれた。小てつはストックを仕舞い、ピッケルに持ち替えてまだ11時だし行けるところまで行こうとワサビ峠に降りる。

 今日の雪は新雪でシューの刃がきかず、御殿山の北稜を転げるように降りることになる。この時期の西南稜は凍っていることが多くて、逆に歩きやすいと思っていたのだが、先が思いやられる。しかし第一ピークまではわりと鮮明にトレースがあり、周りは見えなくても不安なく歩ける。

 武奈ピークから帰りの登山者とすれ違う。ピークはホワイトアウトだと言うことで、なんとうれしい情報・・(死ぬわ)彼の手には、ピッケルではなく、折りたたみ式携帯スコップ!冬の武奈の常連さんは装備も違うわ~と感心してしまう。(どうしてもピークまで行くぞ~の姿勢が全然違う~)。

 ところが第一ピークをあがったところからは、モロに強風と細かい雪が打ちつける。バラクラバをしていても頬が痛いし、サングラスをしてもすぐに雪が付着して前が見えなくなる。西から吹きつける吹雪を、左手で顔を隠して進む。

 トレースの上を忠実に踏んでいれば良いのだが、少しそれるとシューでもはまりこんでしまう。はまると膝まで埋まるので、西南稜でも1mを越える積雪だろう。雪庇がどれだけ成長しているのか見ものだったろうに、なんにも見えない。

西南稜(めちゃめちゃ視界のいい時)

 第二ピークの登りでさらに外刃シューの単独男性に抜かれる。ここの登りでも彼はガシガシ登っていくが、小てつは上滑りするシューで悪戦苦闘する。

 >>皆さ~ん。これからスノーシューを仕入れられるときには、絶対外刃シューにかぎりまっせ~!

 第二ピークから先は、先ほど4人に踏まれたであろうトレースも早消えるほどに吹雪がきつい。コヤマノ岳分岐の標識ほどまで来て、やっとピークに立つ先着の4人の姿を確認できた。武奈ピークに12時30分着。4人は入れ替わりでピークを跡にされた。

 ピークの杭の写真を撮り、三角点にタッチだけして折り返す。ラーメンタイムなんてもっての外。この時間差だけでも先行4人のトレースは消えている。ストックを1本取り出して、座頭市よろしくトレースをつついて探しながら進もうかと真剣に考えたほど・・。

武奈ピーク

 まあそれでも第二ピークの降りまで降りきったと思われる地点まできた時、今日一番と思われる吹雪になり、前が見えないというよりも目が開けていられなくなった。これはたまらないと逃げようとするのだが、ここは西南稜、逃げ場はない。登りならこんな状況でも登っていけばいいのだけど、降りは怖い。右手は夏でも怖いサンマイ谷、左手は雪庇。トレースを外れてウロウロするが、何をしてもダメ。トレースに戻って防風体勢をとって耐える。カッパの上着でも取り出して羽織れば良かったのだが、それを実行する気にもならない。そうとう長い時間悲愴な思いをしたと思ったのだが、そんなに長い時間でもなかったのかも知れない。一瞬吹雪がおさまった時に第一ピークの杭標識が見えた。これを逃してはいけないと磁石を取り出して方向を確認しておく。

 今度は右手で顔を隠しながら、左手の磁石で確認して前が見えなくても進んで行ける。どうにかこうにか第一ピークまでたどり着いた。時を同じくして単独男性が第一ピークに到着。標識まで来て、膝に手をあて息を整える小てつを見て、男性は「大丈夫ですか?」と声をかけてくれる。そんなに哀れだったかしら??。

 先のトレースは完全に消えていることを告げると、男性は先に進むのを即断念した。「山は逃げませんからね」と男性は言った。ほんまや!洛西何とかオヤジにもそのセリフ言ったって、言ったって!。

 すぐにもうおひと方単独の男性がやってこられた。この男性は武奈に登頂のあと、八雲を抜けて比良に降りる横断コースを予定されていたと言われるが、先の様子を話すと、やはりここで断念されることになり、(もうすでに午後1時近く、先が長すぎます)その後申し合わせることもなかったが、つかず離れず三人で折り返す。

 近づいてくる団体さんが見えて、彼らはスキー集団だった。彼らは先がノートレースだということを確認したが、迷わず先に進んで行かれた。その後彼らを見かけなかったから、八雲の方に降られたのだろう。

 その後、単独男性お一人に会いピークを目指していかれた。装備から大丈夫と思われるが、時間が遅いのが気がかり。あと単独女性に会うが彼女は2時になったら折り返すとのことで大丈夫だろう。その後は登ってくる人には会わず。

 帰りの御殿山に2時着なので、行きと同じ時間かかって帰ってきたことになる。(御殿山ピーク~武奈ピーク間1時間30分)。だからやっぱり悲愴な時間はそんなに長くはなかったのだ。(でも長かったなぁ)

 先に出会った単独男性は先に行かせてもらいますと、御殿山ピークを立たれ、小てつはピッケルを仕舞いストックに持ち直す。飲まず食わずなのを思い出すが、砂糖入りの紅茶だけ一口飲んで出立する。

稲妻号は雪に埋まる

 夏場のようにバテた~という感じではなく、もはやエネルギー切れ(腹まわりにいっぱいあるやろ)、植林地の急坂を忍者降りなんて夢のまた夢。幾筋もの尻セード跡が一番固まっていてアイゼンが効くから、そこをカカト落としでゆっくり降りていく。小てつが武奈まで行っているあいだに、多くの人が御殿山コースを、それぞれのピークまで楽しんだのがわかる。

 デポ地に3時50分着。稲妻号は雪に埋まっている。重しを載せてきていても所詮は軽、後輪はむなしく空転するので、曙橋を渡るまではとチェーンをかける。チェーンをかければ造作なく脱出できて、同じく駐車場を脱出するのにチェーンかけをしていた京都ナンバーのプリウスのカップルに、「ちょっとだけ手伝います」と言ってスコップで車の前に積もった雪をどかす。カップルは西南稜までで断念したそうで、奥様と思われる女性は「騙されてひどいところに連れて行かれた」とむくれておられるが、今日みたいな日が武奈初登りだと、後はいい日ばっかりなのでハマりますよ、夫婦で100回登った人もいますと話す。次は道満の雪も面白いですよとも・・。今日はいつもより「やさしい気持ち」で帰路についた小てつでありました。

 先生~、かわりに武奈に行っときましたよ~!。


                           【 記: 小てつ 】