イナヤ谷西俣

小滝が連続するイナヤ谷


平成28年6月2日(木) 快晴              長岡山人


コース:
大布施9:20−イナヤ谷西俣分岐9:50−H=760m谷分岐11:30−国体尾根稜線12:15−三ツ又山12:20−雲取山13:15−芹生14:20−貴船バス停15:55





 北山に、小滝が連続するこんな良い谷があったとは。 しかし谷の遡行なので、岩登りの基礎がない人には危険である。 道やテープはなく、体力を要し、雨後やヒル時は避けるとか、それなりの覚悟が必要な谷である。

 イナヤ谷は、雲取山の北にある国体尾根から北に流れ、大布施で上桂川に合流する。 井垣章二氏の『峠の地蔵−京都北山に捧ぐ』に短く紹介されていて、その紹介があまりに魅力的であるので調べ、ようやくOkaOkaご夫妻の記録を思い出した。お二人は滝登りになった場所で横の尾根に取り付かれている。(04.4.29と04.7.17参照。MAPの雲取山から検索)。

連続する滝群 高さは低いが立派な滝





 大布施で京都バスを降り、府道を500mほど周山方向に進むと、南に渡る橋がある。民家の間を通り、九輪草の群落を横に見ながら、谷を南に進む。すぐに分岐があり、右はオサ谷への林道だが、左のイナヤ谷林道を進む。

府道からイナヤ谷に向かう イナヤ谷とオサ谷の分岐

 オサ谷分岐から20分進むと、イナヤ谷は東西に分かれる。林道は東俣に続くが、その谷の広さに比べ、西俣があまりに貧弱に見えたので場所を疑ったが、地形的にはここしかない。地理院地図には破線が入っているが、それらしきものはない。テープや丸木橋もない。 しかし思い切って谷を渡り、西俣に入ると、右岸にかすかな踏み跡が発見された。 植林の下の普通の谷が続き、どこに良さがあるのか、疑問符が浮かぶ。

イナヤ谷西俣への入口 西俣に入った直後

 ところが、西俣に入って10分過ぎ、H=500mを越えると、小さな滝が現れ始める。踏み跡も薄くなり、川の中を歩くようになる。 川岸の踏み跡を歩くこともできるが、川の中を歩く方が手っ取り早い。 皮の登山靴を履き、スパッツを付けて正解だった。

小滝が連続し始める 横を登っていける

 ここ4日間は晴天が続いていたので水量はほどほどであった。 靴のくるぶし以上には水量はなく、渡渉を繰り返し、小滝を登っていった。 滝の真ん中の水流のあるツルツルしたところは滑るので、その横の岩角のある場所に靴裏の溝を噛ませて登っていく。 登れないところは脇を何とか巻いていける。

右横から登れる 流木に足をかけ中央突破

 滝と戯れる、という感じの遡行が続く。北山ではこういう場所を知らない。 砂防ダムが全く入っていないことが良さを残す原因であろう。比良の谷は僕の手に負えないし、裏六甲の石楠花谷や地獄谷、赤子谷のミニ版とでもいえようか。 沢靴でなくとも、山靴で登れる滝群である。 無理に滝横の岩を登らなくても、高巻こうとすれば可能な踏み跡はある。

双流滝の真ん中の鼻を登る 辛うじて右横が登れた
ここも右横から登る ここは左横を高巻き

 西俣に入って70分を過ぎ、H=600mを越えると、水量が減り、谷に流木が目立ってくる。 歩きにくくなるので右岸の巻道を進む。 道といえるものはなく、かすかな踏み跡で、靴の山側エッジを食い込ませて、倒木越えもしながら、バランス良く進まなければならない。 それが30分ほど続く。

谷に流木が増えてくる 気を付けて高巻いて行く

 斜面が急になってきて、H=760mで再び谷に降り立つ。 そこは砂が溜まった平地で、左右からの谷の合流地である。 一見、左が取り付きやすそうだと見えたが、そこを登ると国体尾根ではなく支尾根に出てしまう。 地図では、右に破線がついているので、細く険しい感じがしたが思い切って取り付く。 地図では、北西に曲がって登るようになっているが、それらしき場所が発見できず、それは遠回りに思えた。 直進して、国体尾根に登ることにした。

谷の合流点に降り立つ 右の谷に入る

 そこからが大変だった。 傾斜が急で、砂が溜まった谷底は滑り、浸食崖もある。谷筋を避け、山腹を右左に振って、登りやすいところを探るが、地図通り同じような急斜面である。 山腹に足を踏みしめ、木に手をかけて、力まかせに登っていった。

荒廃した谷を登る 写真の印象以上の急登

 45分の苦闘の末、国体尾根に登り付いた。 平らな尾根をそよぐ涼風が心地よい。 尾根から見下ろすとイナヤ谷は穏やかな谷に見えるのだが。 尾根筋にはしっかりとした踏み跡ができ、ここも人気ルートに昇格したようだ。 その地点は、イナヤ東西谷の中間尾根の派生点で、OkaOkaご夫妻も下りに使われている。(前記参照)

国体尾根に登りつく 見下ろすと穏やかに見えるのだが

 国体尾根を西に5分進み、H=990mピーク(三ツ又山?)まで往復してきた。 ピークの東肩にはテープがあった。 地理院地図の通りに登っておればここに登り付くはずであり、最後のツメを誤ったことが悔やまれた。

 滝登りがミニ体験できる良い谷であるが、最後のツメ部分は苦労する。 ヒル対策を講じていたためか、被害はなかった。梅雨になると出てくるのではないか。。

イナヤ谷西俣位置図

                             【 記:長岡山人 】