鏡峠(鏡坂)

 鏡峠の石仏と石柱 


平成27年9月13日(日) 晴              長岡山人


コース:
肘谷バス停下車9:00−府立大演習林事務所9:30−宮ヶ谷橋10:00−鏡峠11:05(20)−林道出合12:15−露越集落12:40−JR胡麻13:40





 鏡峠(鏡坂とも言う)は、南丹市の日吉町胡麻と美山町肘谷をつなぐ峠である。中央分水嶺でもある。金久昌業氏の『北山の峠(下)』にも紹介されているが、地域の交流のための古道である。氏は、「取り立てて個性的なものがあるという峠ではないが、良く纏まって難のない、中丹地方第一級の峠」と書かれている。古道は完全に残っており、その生命力を改めて感じた。峠道は緩やかに造られ、ほとんど息を切らすことはなかった。特別な見所があるわけではないが、初秋の一日、息抜きにのんびりと丹波高原を歩いた。

峠の乗り越し部分 『北山の峠』の写真と同じ木が残る

 JR和知駅から、日曜祝日だけ運行されている和泉行きの南丹市営バスに乗り、肘谷で降りる。バス停の向かいに、「鏡坂峠の早期開通を」という看板がある。今日歩く山道は府道50号(京都日吉美山線)の未開通区間なのである。由良川の橋を渡り、肘谷の集落を抜け、舗装道を奥に進む。30分歩くと、京都府立大学大野演習林の管理事務所があった。この奥一帯は林業教育の実習場なのであり、山や道の手入れもよくされている。

府立大学演習林事務所 勉強用に木の名前が書かれた札

 事務所から30分進むと、川が分かれ、舗装もなくなる。谷の双方に林道は続くが、その中間の尾根が峠道である。登り口は草が生えているが、中央を登るとすぐに古道が現れる。杉と檜の植林が多いが手入れが行き届き、自然林もあり、秋はきれいだろう。尾根筋中央に丁寧にジグザグ道が切られて登っていくため、息が弾まない。地理院地図の通りの位置に道は付いている。大学演習林内なので道は保存されていると予想したがその通りであった。

橋を渡って中間尾根に取り付く 道は良く残っている

 尾根を詰めていくと、右上(西方)に道は振り、稜線の手前の最後の登りとなる。向こうが明るいな、と思う間もなく、稜線に飛び出す。峠道は稜線を北東から南西に乗り越すように斜めに付けられている。峠の南方、すぐ下には丹波広域基幹林道が付けられて興醒めであるが。峠には小広場があり、石仏と石柱がある。石柱は天保二年の銘があり、「右 はた 左 のの村」と書かれている由。「はた」は日吉町の畑郷、「のの村」は美山町野々村郷のことである。金久氏の本の写真にある杉とミズナラの古木がそのまま残っているのもうれしい。

稜線に出る手前 基幹林道から見た峠の取付き

 峠から基幹林道に降り20mほど西に、日吉町側への降り口がある。こちら側は廃道になっているかと心配した。降り口は、基幹林道の造成時に階段が付けられ明瞭である。その先は、地理院地図と異なっていた。地図は谷沿いに降りていくように破線路が書かれているが、古道は真南に広い尾根をジグザグに降りていく。当然、このほうが歩きやすい作道である。上部は自然林で美しい。この部分、道跡が複数平行しているところがあり、かつての通行量がうかがえる。7〜8回ジグザグを切った後はかなり西に振り、下に谷を見る地点まで進む。その先で東に振り戻し、尾根中央まで戻す。そして2回折り返すと谷に降り着く。

日吉町側への降り口 落ち葉が溜まっているが立派な古道

 そこは標高410m地点であり、ここからは地理院地図の通りの谷沿いの道である。逆方向から来ると、谷筋から左斜め上の山腹に折り返す地点の発見がポイントとなる。谷が詰まってきたと感じたら高度計で調べるか、写真の倒木の方向に道を探すことである。この取付部分だけ道が崩れかかっているのでわかりにくい。

この倒木が左折の目印 右には岩塊があるのも目印

 谷に降りてからは右岸の少し上に道は付いている。下っていくと左(東)側に大きな岩がある。金久氏は、この大岩が「鏡岩」と呼ばれており、峠の語源と書かれている。 さらに下っていくとシダが生い茂り、道がわかりにくくなる。草陰に隠れている道を探しながら、下っていく。左岸、右岸と渡り返すが、大部分は右岸を進む。

鏡岩を見上げる 夏は草が多い

 左にログハウスが見えると、谷は別の谷と突き当たり、その手前で左に木橋を渡る。ログハウスの横を進むと太い林道に出会う。逆方向から来た場合、ここもポイントである。南から登ってきて、ログハウスが見えると、その左下の道を進んで木橋を渡り、あとは右岸を上っていく感じである。ログハウスの東側の道は地理院地図と異なり、行き止まりとなる。 そのすぐ下にも西方に川を渡る太い林道があるが、これは砂防ダムの工事をした道路であり行き止まりになる。

突き当たりの木橋を渡る この分岐を左に進む

 あとは地図通り実線の道路となる。よく手入れされた植林地の間を進んでいく。これだけ手入れされていると気持ちが良い。日吉町は森林組合がしっかりしているのである。 平地に出ると刈り取りを目前にした稲穂が美しく、柿や野菜が色づいている。露越集落から畑郷地域となる。終戦直後は開拓入植者もあったようだが、近年は、丹波高原の自然を求めて、京都からの転居者もそこそこあるようだ。のんびりとJR胡麻駅まで歩く。舗装道歩きが1時間あるが、農村風景に浸りながらなので救われる。

鏡峠南側の古道略図

                             【記: 長岡山人】