小てつのよも山話(No.101)
「禁断のインプレッション 靴編」

皆子山 東尾根 2013.02.09


2014年1月21日(火)            小てつ






 okaoka clubの中で、いつも御一緒に山行しているokaoka御夫妻、JOEさん、小てつ。okaoka御夫妻はシリオ611GTX(道子さんは552GTX)、JOEさんはマインドルのヤリ、小てつはローバーのタホーと、各社のトレッキングシューズというカテゴリーの中では、ハイエンドと思われる靴を愛用している。せっかく揃っているのだから、靴のことをよもやま話で何か書いたら?と道子さんに言われていた。そう言われてもなかなかまとまらず・・。

JOEさんのマインドル
哲郎さんのシリオ(611GTX) 道子さんのシリオ(552GTX)

 (既に登山靴について一家言持たれている方は読んでいただかなくて結構です。小てつのようにいつぞやはまりこんでしまい、初心者からステップアップを考えておられるような方にお届けいたします。)

 まず、小てつの靴遍歴から書かなければいけませんねぇ。例にこぼれずのお話で、まず初めはなぜだか家にあった以前から履いていた登山靴メーカーではないトレッキングシューズまがいの物で歩きだした。まがい物でも一応はゴアテックスが使用されていたのだが、愛宕や沢山程度の山歩きでも、いかんせんすぐに側面が破れてしまった。そこで、まがい物は所詮まがい物と、Lッジにて、今はなきライケルの中堅クラス(今のマムートならケトンクラスだろうか)の靴を買いもとめた。

 ところがその頃、ある事情で猟犬として仕込まれるハメになり、道なきただの斜面などを駆け巡ることになると、やわらかい靴底の両外側のブロックが一年持たずに磨り減ってしまうということになってしまい、ソールの貼り替えも出来ない靴では、新たに買い直しを迫られることとなる。 そこで学習すれば良いものを、初心者は見た目から入ってしまい、雑誌で見て知っていたのが店頭に並んでいたのを見て、試着もそこそこにWイルドワンにて、メレルのゴアテックスミッドなる表革の靴を衝動買いしまう。

 そこそこ硬いアウトソールだったのだが、それでも一年ほどでソールのブロックが剥がれてくるという始末で、新作の靴だったはずで加水分解は考えられないので、やはり本格的な登山靴でなければもたないということにやっと気付き、2年前の冬に今のローバーをK日山荘にて買い求めることとなる。それから2年、靴のトラブルは全く無く、そろそろソールの貼り替えをと計画中である。実は去年の春に別の理由からもう一足、ライトアルパインシューズというカテゴリーに入る靴を、新たにLッジにて買い求めることとなるのだが、そのことはあとで・・。

加水分解してはがれたソール(ライケル)

 歩き方の程度が人それぞれ違うので(誰も猟犬にはならんわな)、いちがいには言えないが、それまでの靴が2万5千円前後したのが1年でダメになり、3万5千円ほどする靴でも2年間ノントラブルだと、年単位だとはるかに安いこととなる。信頼感も歩き心地も全く上質となり得だと思う。 ただし問題は歩き始めの頃から、いきなりタホーを履いたとして、今感じるようなことがつかめたかどうかはわからない、今では足の方もトレーニング出来ているけど、最初からだとただ硬くて痛い靴だと思っただけかも知れない。かつぐ目方も変わったし。(最初は担ぐのが嫌で、軽量だった)

 ちなみにずっとシリオを履かれている哲郎さんの履歴では、ほぼ2年でソールの貼り替えをして、その後1年ほどでソール以外の場所の劣化が理由で新たに買いなおされているという。ソールの貼り替えに1万5千円前後であるから、3年で5万円の出費としても、一年あたり1万6、7千円だから実際はお得になる。 これまたずっとマインドル愛用のJOEさんにいたっては、前の靴は7年も使われ、3回ソールを貼り直されたそうだ。靴が4万5千円でソールの貼り直しに4万5千円かかっても、7年履けば一年あたり1万3千円ほどになる。登山靴に限って言えば、清水の舞台から飛び降りると、幸せが待っていると思います。

 話は戻って、それだけの靴経験しか持ち合わせていない小てつですが、靴の購入時についてひとつふたつ。 靴の合わせですが、これは出来るだけ午後遅くというのが鉄則です。午後になるにつれ、足がむくむからという簡単な理由です。大きい靴を選んでも靴下や中敷で何とかなりますが、小さい靴はどうにもなりません。試着して、本当は普段担いでいるザックの荷をそのまま担いで、しばらく店内を動き回るというのが一番です。重量がかかることで足は広がるので、決して座って履いただけでは決めないように。そんな時間をかけた試着を嫌がる店なら、買い求めるのはやめた方がいいでしょう。

 合わせる靴下はいつも履いているものというのが通例ですが、山歩きではウールの厚手の靴下というのが鉄則です。厚手のウールを履いておけば、少々当たるところがあっても、帳尻を合わせてくれます。それだけでは滑るという方なら、ナイロン製のと二重履きすると滑りません。店備え付けので試着して、同じ靴下を購入するというのも、賢いかも知れませんね。

 中敷を取り出して合わせるのもありなんでしょうが、せっかくなので実際に何足も履いてみるべきだと思います。実は小てつ愛用のタホーと、後で買い足したスカルパのトリオレでは、中敷の形は全く同じなのですが、履いてみると足を包む感じは全く違います。

タホーとトリオレの中敷はほぼ同じ形

 いつもの普段履きよりワンサイズアップの靴を選んで(小てつの場合は1インチ大を選んでいます)、靴紐を一旦全部緩めて、つま先とかかとの両方に足を当ててみると良くわかります。 ただプロのいる店では違って、トリオレを買ったLッジでは、当初ガルモントのタワープラスを狙っていたのですが、「お客さんの足の形ならこっち」と見るなり即座にトリオレを勧められ、はいてみると「ヤッパリこっちや」でした。

 でもって、一番やってはいけないのは、店で試着してインターネットのウェブショップで買い求めるという手です。電化製品ならいざ知らず、登山靴では絶対にやってはいけないと思います。まず第一に、ゴローや石井スポーツのオーダー靴なら別ですが、大量生産のメーカー靴では、一緒のシリーズでも全く一緒の靴にはならないのです。同じ靴でも微妙に仕上がりは変わってしまいます。アメリカのメーカーの靴は特に顕著です。試着して、変に当たるところがないか十分調べて、現物を求めるのがいいと思います。

 また、今の靴は、ほとんどポリウレタンと接着剤で出来ていると言っても過言ではないので、当然大敵は湿気と熱です。どこでどんな保管がなされていたかわからない靴は、全く信用できません。普通でも5年で加水分解が始まるのに、もっと寿命は短くなっていることでしょう。たかが何千円の違いなら、お店で買われることをお薦めします。

 Lッジなら、会員であればセール時でもないのに内緒パーセント引いてくれますし、使ったあとでも交換、補修のケアを、ほとんどの場合無料で受け付けてくれます。何かあった時には、逆にお得ですね。

 さて、買い足したライトアルパインシューズについてですが、完全に冬用と言う訳ではないけれど、セミワンタッチアイゼンが取り付けられるコバがついていて、シャンクという芯が入っているこの類の靴の特性は、雪道よりもガレ場や岩場で真価を発揮すると思います。靴裏のおよそ10分の1の面積がかかっていれば、安心して体重をのせられるのです。この靴は、「とある花探し」の時に、それまで愛用のタホーでは、ガレ場でJOEさんについていくのがしんどかったからで、JOEさんの愛用のヤリもライケルも、シャンクの入った靴だったのです。JOEさんが急坂を登っているのを後方から見ていると、かかとが浮いている時があるのです。(足がしんどいんちゃうの?)と思っていたのですが、それは違って、靴のかかとは地面から離れていても、体重はかかとにも乗っているのです。不思議でしょ。

 JOEさんのお話では、普段担いでいる重量に慣れてくると、軽荷になった時に、靴の跳ね返りがきつく感じて逆にバランスをとるのが難しくなるそうです。

 タホーは足を包み込むような地面の感触が伝わる感じで、地下足袋をはいているような感覚。流石に縦走用で、高島トレイルの尾根歩きなどには抜群の感触です。前は林道歩きがとても嫌だったけど、最近は河内谷川林道やマキノ林道など苦にならなくなりました。

トリオレのフック

 トリオレはシャワーサンダルと言うか、極端に言えば下駄でしょうか?こちらは難所が予想される時にチョイスしています。が、流石に林道やアスファルト歩きがあるときには、はいて行く気にはなりません。靴底が硬いのに対処してか、フックの一つが靴紐をカシメられるようになっていて、甲の部分と足首の部分の締め方を分けられるようになっています。新しいシリオのモデルもこれを採用していますね。でも、ここでキンクしてしまうと、早く靴紐がいかれないか心配はしています。(予備にいつも一本は持っているのですが)

 手入れの話しをしておきましょう。小てつのタホーや、JOEさんのヤリはオール革製でスウェード加工がしてあります。このスウェード加工というのはバックスキンと異なり、表革をオイルが染み込みやすくなるようにケバ立たせてあるので、買ったらすぐにオイルを塗らなくてはいけないのですが、JOEさんがヤリを購入されたKンダハの若い店員さんは、一回目のソール貼り替えくらいまでは、そのままではくほうが良いと言ったらしいのです。

 小てつは野球部出身で、革を見ればオイルを塗りたくなるので、購入してすぐにオイルを塗ったのですが、実はオイルを塗った靴は一度山へ行くとホコリまみれになります。軽いホコリならブラシで取るか水で洗い流せますが、ドべっとついたホコリをそのままにしておくと、細菌が繁殖して革を痛めてしまいます。小てつの推測ですが、Kンダハの店員さんは、それを危惧したのではないでしょうか?もうひとつは、マインドルの靴に使われている革は、もとの油分がしっかりしていて、数年なら品質落ちがないということなのかも知れません。

オイルを塗ったのと落とした状態

 とにかく、そんな訳でJOEさんと小てつは2年前のほぼ同時期に靴をおろしたので、一方のJOEさんはオイルを塗らず、一方の小てつはオイルを塗って、その先どうなるか実験をしようとなったのです。結果、JOEさんの靴は、小傷は見えるものの、今オイルを濡れば全部消えてしまうだろう程度で、小てつの靴もオイルを中性洗剤で洗い流せば、JOEさんと同じくらい小傷もあって、実際遜色無しというところでした。スウェード加工の靴でも中途半端な手入れなら、やらないのが懸命なのかも知れません。

 ちなみに哲郎さんのシリオはスウェードではなくヌバックで、オイルなどは塗っておられません。表の革が痛む前に他のところがダメになってしまうらしいです。

とまあ、今回は時節がら'落ち'の無い話


                        【 記: 小てつ 】