3分でわかる「共謀罪」 (2017年5月7日)


 過去3回廃案になった「共謀罪が、今度は「テロ等準備罪」と名前を変えて今国会で審議されている。共謀罪導入の狙いと危険性について探る。



1.共謀罪は従来の刑法の規定とどこが違うか

 従来の刑法は被害があらわれて初めて処罰対象になる。これは近代刑法の原則である。しかし、共謀罪はこれとはまったく異なり、犯罪が行なわれる前の段階を処罰する法律である。共謀罪の導入によって近代刑法の原則が覆されることになる。



2.共謀罪が成立すれば、私たちの生活はどのように変わるか

 共謀の事実があるかどうかを知るためには、警察は常に私たちの生活を監視し、チェックする必要がある。たとえ共謀罪という法律があっても、警察が情報を持っていなければ犯罪を未然に防ぐことができないからである。

その結果、日本は国家権力による監視社会となる危険性が高い。警察は集会にはスパイを潜入させ、密室での会話を盗聴し、日常的なメールを盗み見するかもしれない。そうなれば、政府批判もしにくくなる。共謀罪に抵触し逮捕されるかもしれないからだ。

国民の自由な議論は委縮し、天安門事件後の中国のように政治批判は姿を消す。萎縮効果抜群である。そもそも「自由」とは国家権力を批判する自由であり、政府を礼賛する自由はいつの時代にもある。



3.権力は油断も隙もない

 政府は今回の「テロ等準備罪」という名前の共謀罪の成立は、国際組織犯罪防止条約(TOC条約)の締結に欠かせないと主張する。しかし、TOC条約はもともとマフィア対策が目的であり、テロ対策を目的とした条約ではない。しかも、187カ国の加盟国の多くは、新たに共謀罪を創設せずに批准している。

共謀罪といえば聞こえが悪いが、テロ対策といえば国民の理解を得やすいと考えたか。もしそうだとすれば、姑息だとしか言いようがない。

また、政府は「一般人は捜査対象とならない」ともいう。しかし、治安維持法も当初は「一般人は対象にならない」といわれていた。法律は、運用する人が善意の人ではく悪意の人を前提に作られるべきである。

政府は、オリンピック開催のためにぜひとも「テロ等準備罪」の成立が必要だという。しかし、100年後にも禍根を残すような法律を作るくらいなら、いまからでもオリンピック開催を辞退するほうがましである。



 時事問題論考に戻る

  トップメニューへ戻る