語学力の目安

  (2008年10月)

 

1.大学入試・英検・TOEFL・TOEICの関係

 世の中に英語の実力を測るテストはいろいろあるが、それらの相互の関係が今ひとつ分かりにくい。そこで、少し大胆に、これらの試験の 相互関係について大ざっぱな比較をしてみた。比較の根拠としては、英検や各種の資格試験対策のホームページにある資料などを参考した。

単語数 英検 大学入試 センター試験 TOEIC TOEFL 洋画・CNNの理解度 企業や大学が求めるTOEICの水準
10000語以上 1級 英語の先生でもなかなか受からないレベル   900点 600点 約50% 英語の力が一流であることの証明になる。
7000語 準1級 文部科学省が中学校・高校の英語教員に要求する最低限の英語力   730点 550点 約30% 東京工業大学大学院ではTOEIC800点以上で英語の試験が免除される。
6000語   大学卒業までには取りたい資格。リスニングと会話の訓練が必要   650点 500点 約25% 一流企業が新入社員に要求する水準はTOEIC600点 、
4000語 2級 関関同立・国公立大学合格レベル、高校2年生後半か3年のレベル 160点以上 500点 450点 約5% 大卒新入社員の平均はTOEIC450点
2000語 準2級 高校1年生後半レベル   400点      

 ただし、日頃リスニングなどのトレーニングをしていなければ、特にリスニングの配点が高いTOEICで、表にあるような高得点をとることは難しいかもしれない。 表はあくまで、そうした対策をとった人が受験した場合の得点である。

 (注)ちなみに、ORT (Oxford Reading Tree)の対照表は以下のサイトで見ることができる。ORT (Oxford Reading Tree) 

 最近、週5日制の影響で高校生の英語力が低下しており、関関同立や中堅国公立大学の合格者でも3000語レベルをきちんとマスターしている学生はそんなに多くはない。一流とよばれる国公立大学でも4000語台で、5000語をマスターしている学生は少ない。

  かつて、慶應大学に入学してくる学生の平均的な単語数は、7000語レベルと聞いたことがある (ただし、これは30年前に慶應の文学部の先生から聞いた話であり、今はもっと少ないかも知れない)。

英検と比べてTOEICには次のような利点がある。

@英語の実力が点数で評価されるため、自分の英語力をきめ細かく、客観的に知ることができる。

A最初は悪くても、その後の努力の成果を点数で着実に確かめることができる。

B大学卒業後、企業が重視するのは英検よりもTOEICである。英検は、2級から準1級、そして1級までに大きなギャップがある。特に準1級と1級の間には天と地ほどの差があるため、企業が社員の英語力をきめ細かく知るには、英検よりもTOEICのほうが重視される。

 ちなみに、文部科学省が中学・高校の英語の先生に要求している英語力は、「英検準1級」または、「TOEFL550点以上」、または[TOEIC730点以上」である。

 

2.TOEIC

 「トーイック」と読む。国際ビジネスコミュニケーション協会が実施する。主な受験者層は大学生・社会人である。毎回4万人近くが受験する最も役立つ英語の資格である。 ただし、TOEICの受験者の半数以上は日本人とも言われ、海外での知名度はそれほど高くはない。

 得点は10点〜990点。試験は全部で7つのパートからなり、990点満点のうち50%の495点がリスニング 、残り半分がリーディイングに配分されている。評価基準は次の通り。

Aレベル860点以上
Bレベル
855点〜730点
Cレベル
725点〜470点
Dレベル
465点〜220点
Eレベル
220点以下

  860点以上であれば、「専門外の話題でも十分な理解とふさわしい表現ができる」とされる。また、730点以上であれば、「通常会話は完全に理解でき、応答も速い」とされる。大卒新入社員の平均点は4 50点 である。500点以上取れる力があれば、就職に際して自己アピールをするのに有効であろう。

 多くの企業が戦力とみなす英語力は600点である。大学入試に合格したからといって、その程度の英語力ではまだ「チーチーパッパ」なのだ。600点に達するには、 特にリスニングやスピーキングなどを中心に、大学卒業後もいっそうの努力が必要である。(ただし、これは受験英語を軽視しているのではない。受験勉強の基礎がその後の英語学習にとって重要なことは、いくら強調してもしすぎることはない)。

 日本IBMでは、短期の海外出張にはTOEIC、600点。長期の場合には730点以上を条件にしている。また、課長になるには600点、次長になるには730点以上取らないと昇進できないシステムを とっているという。 

 パナソニックが係長昇進試験受験者に求める水準も600点である。また、紀陽銀行の外為部門に従事するものは、800点以上が要求され、しかも一度とっても、有効期限は2年間だと聞いた。

 ちなみに、英語の先生(中学校・高校を含む)の平均点は700点弱である という話を聞いた。ただし、これはあくまで平均点であり、もっと力のある先生がたくさんいることはいうまでもない。


 

 

3.英検

 正式には実用英語技能検定という。旺文社が実施するもので、一般には「英検」として親しまれている。 主な受験者層は中学生・高校生である。はっきりいって、2級以下は取っても意味がない。普通の高校生レベルの英語力があれば、簡単に取れてしまう。

 履歴書の資格欄に書いて評価されるのは、準1級と1級だけである。とくに1級は難しい。1級と2級との差は天と地ほどもあると思ってよい。その差を埋めるために準1級が設けられたが、それでも準1級と1級との間には、まだ大きな較差がある。

  準1級と1級の間に、もう一つ級があってもおかしくはない。それほど1級のレベルは高い。「英検1級をもっています」と 言えば、就職試験などでは相当高い評価を受ける。

 ちなみに、海外旅行で必要な英語力は、英検3級並みのスピーキングがスラスラできる能力と、英検1級並みのリスニング能力があること、と言えるかもしれない。

 

4.TOEFL

 「トーフル」と読む。アメリカ・カナダ・イギリスなどの英語圏の大学に留学する時には必ずこの試験を受けなければならない。留学の際の英語力の証明として、この成績を大学に提出する。 主な受験者層は高校生・大学生である。アメリカの非営利教育機関ETSが主催し、日本では毎月実施されている。

 2000年10月からは、コンピュータの画面上で解答する新しい受験形式のTOEFLテスト(TOEFL−CBT)も始まった。こちらは300点満点である。留学先では、従来の形式の TOEFLでもTOEFL−CBTでも、いずれでも受け付けてくれる。従来型のテストの評価は、毎回の難易度を調整した数値(最低310点〜最高677点)で行われる。

  国際基督教大学(ICU)の新入生の平均は480点前後(出所、1991年、AERA) である。また関西外国語大学(外国語学部)1年生の平均が455点、4年生の平均が526点であるという(The Kansai Gaidai News 2001年4月3日号)。もちろんこれは平均点であり、中には600点を超える学生ももちろんいる。

 かつて、三国丘高校で教えていたある女子生徒は、高校2年生の時1年間アメリカに留学をし、その後3年生の時TOEFLで550点を取り、アメリカのボストン大学に進学していった。当時、自分のやりたい分野の研究が、日本の大学にマトモなものがない、というのがその理由であった。いよいよ、大学選びも国際化の時代に入ったことを実感した瞬間だった。
 

 留学を受け入れてもらえる目安は次の通りである。 なお、従来のTOEFLの500点は、TOEFL−CBT(300点満点)の173点くらいと考えてよい。

大学院 600点以上(ただし、550点以上で受け入れてくれるところもある。)
4年制大学 
500点以上(ただし、名門大学なら550点以上要求されることも)
短大 
450点以上

 ちなみに、nativeに近い発音・語学力を身につけるには、9歳(小学校4年生)頃から現地に行くのが望ましいとのことである。9歳以下だと母国語が固まって居らず、母国語を忘れてしまう。9歳 を越えて年齢が上になればなるほど、外国語を受け入れる「受容力」が小さくなってしまい、語学の修得にはものすごい努力が必要になるという。

 

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