3分でわかるビットコイン
  〜 ビットコインとは何ぞや 〜
         (2017年7月4日)

 ビットコインに対する関心が急速に高まっている。何やら胡散臭げなこの新しいタイプの「通貨」が異常な値上がりを続けているからだ。ビットコインとはいったい何者なのか。まとめてみた。 


1.まずはこの値上がり具合を

 ビットコインは一般的には「仮想通貨」と呼ばれるが、「暗号通貨」と呼ぶほうがイメージしやすい。2008年 「サトシ,ナカモト」と名乗る人物がインターネット上に投稿した論文をもとに作り出された。「サトシ,ナカモト」という日本人っぽい名前だが、おそらくアメリカのしかるべき「機関」であろうといわれている。

2009年に初めてビットコインが発行され、その時の価格は1ビットコイン=0.07円だったという。それが現在は約30万円。実に400万倍である。もし1万円分買っていれば、400億円になっている計算になる。まずは、最近1年間のビットコインの価格チャートをご覧あれ。



2014年に日本で、三井住友、みずほ、三菱東京、リクルート、電通などが出資するビットフライヤーhttps://bitflyer.jp/」というビットコインを扱う日本最大の販売所が設立され、さらに、2017年4月に改正資金決済等法が施行され、ビットコインが政府によって「通貨」としてのお墨付きを得るに及んで、急激に人気が高まったという次第である。

ビックカメラではすでにビットコインを実際の通貨として利用できるし、リクルート系企業をはじめ、多くの企業がこのビットコイン導入の準備を進めている。もし、ビットコインを使える店舗が増えれば、ビットコインの利用者はますます増加すると予想される。

ちなみに、このグラフには載っていないが、過去の1ビットコインの価格を紹介しておくと、2015年1月=約2万7千円、2016年1月=約5万1千円であった。2017年1月=約11万円であるから、現在の価格が高いのか安いのかは判断が分かれるところであろうか。

現在、ビットコインをはじめ1600種類以上の仮想通貨がある。ビットコインを求める大半の人は「投機」が目的だと思われる。しかし、ビットコインを資産保有として持つのはリスクが大きすぎる。価格変動が激しすぎるのだ。



2.ビットコインのしくみと特徴

 2014年2月、ビットコインの両替所であるマウント・ゴックス社が倒産した。そのため「ビットコインは危ない」という認識が急速に広がった。しかし、これは誤解である。マウント・ゴックス社が倒産したのは、内部犯行による横領が原因であり、ビットコイン制度そのものによる欠陥ではなかったのである。

 ビットコインの概略を説明すると以下のとおりである。
 第一に、ビットコインは円やドルのように手に取って目に見える姿かたちが存在しない。紙幣でもなければコインでもない。コンピューター上の単なる情報である。考えてみれば、私たちが普段接する「お金」も実は大半が単なる情報にすぎない。給料は銀行口座に振り込まれるだけだし、水道料金も電気料金も、口座から自動引き落としされる。紙の紙幣で支払われるわけではない。それと同じように、ビットコインもコンピュータ上の暗号化された情報貨幣にすぎないのである。したがって、金の裏付けなどもちろんない。

 第二に、通貨を発行する中央銀行にあたるものが存在しない。したがって、通貨の管理者もいない。通貨を発行できる人をマイナー(採掘者)と呼び、誰でもがマイナーとなって通貨を生み出すことができる。ただし、この採掘作業(マイニング)はとてつもなく膨大な作業なので、普通の人がマイニングをしても大赤字になるだけである。最近のマイナーは、個人ではなく企業へ移行しつつある。

これまでマイナーによって発掘されてきたビットコインの総額は1640万ビットコインである。最終的に世の中に出回る総量は2100万ビットコインと定められている。この量は絶対に変わることはない。このことについては後ほど詳述する。



(流通するビットコインの供給状況)

 第三に、管理者がいないのになぜ安全が担保されているのかという問題である。実は、これこそがビットコインの核心なのである。安全を担保する技術は「ブロックチェーン」と呼ばれる。ブロックチェーンの仕組みがわかると、マイニング(=ビットコインの新規発行)やその安全性が理解できるので、ここは我慢をして読んでいただきたい。

 通常のお金は中央銀行が発行し、送金や決済などの記録は銀行のコンピュータに記録される。これは「中央管理型」と呼ばれ、情報を1か所で管理する。ところが、ブロックチェーンは全く異なり、「非中央管理型」と呼ばれる。すなわち、「情報を全世界の参加者で共有する」のである。

たとえば、AさんがBさんに1ビットコイン送金したとする。すなわち、Aさんの資産が1ビットコイン減り、Bさんの資産が1ビットコイン増えたという情報が世界中のコンピュータに記録されるのである。

そこで、たとえば悪意のあるXさんが、自分のビットコインを10ビットコインから100ビットコインに書き換えたとする。このとき、Xの口座は100ビットコインという情報になるが、世界中のコンピュータの口座には「Xは10ビットコイン」持っているという情報が残ったままになっている。すなわち、Xの不正はたちどころにかき消されてしまうのである。ビットコインが通常のお金よりはるかに安全であるといわれるのはこうした理由による。

さらに、この仕組みがわかると、ビットコインがどのように増加していくかの仕組みも理解することができる。ビットコインの取引情報は「ブロック」と呼ばれる。通常は10分間の全世界の取引記録が一つのブロックを形成する。このブロックが時系列的につながったものがブロックチェーンである。一つのブロックをルーズリーフにたとえると、「ルーズリーフに取引記録を書き込み、それをファイルにして冊子にしたものがブロックチェーン」というイメージである。

そうすると、一つのブロックにビットコインの取引情報を書き込む人が必要になってくることがわかる。この書きむ作業のことををマイニングといい、書き込んでくれる人をマイナー(採掘者)と呼ぶ。マイニングという大変な作業に報いるために、マイナーにはビットコインが報酬として支払われる。実はこの時支払われるビットコインが、新規ビットコインの発行量になるのである。

ちなみに、パソコンと専用のソフトがあれば誰でもマイニングできる。ただし、一般的なノートパソコンを使ってマイニングしても、24時間で0.00002ビットコイン(=約7円)掘り出すのがやっとで、電気代やら人件費を考えればとても採算の合う仕事ではないという。高価なマイニング専用のハイスペックマシンを使って組織的にやらないと利益が出ないらしい。

 このようにビットコインが増加していけば、どんどん増えていくように感じられるかもしれない。ところが、マイニングには「半減期」という仕組みが約4年ごとに訪れることになっている。すなわち、約4年に1度報酬額が半分に減額されるのである。2009年の1回の報酬額は50ビットコイン、2012年は25ビットコイン、2016年が12.5ビットコインである。

なぜこのような半減期を設けているかというと、ビットコインの総供給量を固定化するためである。ビットコインの供給はマイニングの報酬からしか発生しない。したがって、マイニングの報酬が減っていくということは、ビットコインの供給量が収束していくことを意味する。そして、2100万ビットコインに達した段階で、新たなビットコインは生まれなくなる。その時期は2140年頃と想定されている。

その後はどうなるのか? 新たなビットコインは生まれなくなるが、送金に手数料が上乗せされることによって、手数料分がマイナーの報酬となり、この制度は維持されるという。


3.ビットコインは社会を変える?


ビットコインには、次のような特徴がある。

@ 発行量が制限されるために価値が下がることはない。すわなち、紙幣がインフレによって紙くずとなるようなことは起きない。
A 金融機関を仲介せず、個人間で直接送金できる。
B 中央管理型システムと違い、サーバー、セキュリティ、人件費などの費用がかからないため、送金コストをゼロまたはそれに近い金額にできる。
C 世界中で使える。
D 偽造はほとんど不可能である。偽造をするためには、参加者の半分以上を一斉に騙さなくてはならないが、情報が分散しているため、事実上それは難しい。

 このなかで、とくに、送金コストがかからないというメリットは大きい。現在、銀行が行なっている為替業務(決済業務)は今後消滅する可能性がある。ビットコインは送金に利用してこそ価値がある。

ビットコインはまだ始まったばかりである。仮想通貨は一過性のものではなさそうだ。ビットコインを普及させようとしている背景には、JPモルガンやロックフェラー系などの銀行やファンドがあるといわれる。IT革命はインターネットと併せて通貨革命をも引き起こすのかもしれない。

(注 本稿はビットコインへの投資を勧誘するものではありません。投資の判断は自己責任でお願いします)



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