2017年衆議院選挙の意味するもの (2017年10月23日)

 
終わってみれば自民党の圧勝だった。勝因の最大の理由は、ほかに安心して政権を任せられる政党がなかったということだろう。特に経済政策については、どの野党もアベノミクスを超える政策を打ち出すことができなかった。結局、消去法で自民党を選んだ人も少なくなかったのではないか。今回の選挙の意味するところを次の三点にまとめてみた。


第一に、憲法軽視の政治を容認してしまったことである。2016年に、憲法学者3人が憲法違反であると国会で証言したにもかかわらず、自民党は安保法制を可決・成立させてしまった。立法事実を先に作っておいて、あとからそれに合わせる形で憲法を改正する。これでは手順が「 チ ガ ウ ダ ロー 」である。

集団的自衛権の行使を容認するのであれば、まず憲法改正という手続きを経て、そのあとで法律を作るのが手順というものである。今回、立憲民主党が大きく議席を伸ばしたのは、そうした手順の違いは許されないとする国民の意思を反映したものと見ることができる。

しかし、自民党が圧勝したことで、結局、憲法を無視する立法が容認されてしまった。日本の憲政史上、取り返しのつかない選択をしてしまったといわざるを得ない。国民の憲法理解がまだまだ進んでいないことを改めて感じた選挙であった。


第二に、自民圧勝の原因の一つとして、野党にアベノミクスを超える経済政策がなかったことが挙げられる。国民が一番関心を抱くのは経済政策である。消費税を上げるとか上げないとかそんなみみっちいことではない。自営業の人、中小企業で働く人、これから就職をしようとしている人など、国民すべてが望んでいることが景気や雇用などの経済対策である。「またあの不景気の時代に逆戻りしたいのですか」と問われれば、誰だって二の足を踏む。


第三に、憲法改正および対米従属路線にゴーサインを出してしまったことである。アメリカがこれまで行なってきた戦争の中には、国際法上許されない戦争がいくつもあった。もしこのまま対米従属路線を続け、日本がアメリカとともに「集団的自衛権の行使」を行なうならば、日本の「平和主義」は雲散霧消してしまうだろう。また戦争をして餓死・病死などで「犬死」したいのだろうか。

確かに、憲法9条が現実と多少合わなくなっている部分はある。しかし、これまで解釈を工夫し何とか乗り越えてきた。憲法は死に体とはいえ、まだ完全に死に切ったわけではない。一定の歯止めにはなっている。憲法改正は、今のままではどうしようもないという事態になって初めて考えればいい。


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