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準備中の項目

「それはわたしです」Sono ioと言う場合、動詞が補語に一致するか?  parlare chiaroparlare chiaramenteの違いは?  過去分詞はどんなときに性数一致するか?    非人称の si は直接目的語をとれないか?  代名詞はどこに置く?

引用・参考文献と略号

疑問 Parlo italiano. に対してStudio l'italiano da un anno. と言うのはなぜか?

考察 同じitaliano「イタリア語」であるのに、parlarestudiareで定冠詞がついたり消えたりすることがある。

言語の知識を表現するとき、動詞conoscere, sapere, studiare, leggereでは定冠詞を用いる。

conoscere il francese; sapere il russo; studiare il polacco.

一方esprimersi in, scrivere inといった表現では定冠詞を必要としない。

esprimersi correntemente in spagnolo; scrivere in inglese.

parlareは、定冠詞付き、無しのどちらの構文でも用いられるが、その際意味が異なる。parlare italiano / francese / ingleseなどの[無冠詞]ではある特定の言語を用いてコミュニケーションするという意味になる。

La guida sta parlando inglese.

parlare l'italiano/il francese/l'ingleseなど定冠詞がついた場合はある特定の言語の知識の有無、それを使って表現できる能力を指す。

Scusi, parla l'italiano?

形容詞などの限定句が言語を修飾しているときは冠詞が必要になる。

parlare un ottimo inglese. esprimersi in un francese approssimativo.

「翻訳する」tradurreの場合は、原語の方だけに定冠詞がつく。

tradurre un romanzo dal francese in tedesco.[GIB, p.42]

ある言語を話す行為は無冠詞で話せる能力は定冠詞付きであるので、studiareimparareの場合は定冠詞が付くと考えられる。ただしparlareの場合、Parlo italiano.は「わたしは今イタリア語を話している(今からイタリア語で話すよ)」で、Parlo l'italiano.なら「わたしはイタリア語を話せる」という細かい使い分けが必ずしも成立するかは疑問で、実際には状況によらずparlare italiano(無冠詞)を使っていることも考えられる。

まとめ冠詞の有無には行為と能力の違いが現れていると考えられるが、こうしたニュアンスの違いがあるとは言いにくいので、慣用的に動詞によって使い分ける(parlare italiano / studiare l'italiano)程度が無難だろう。

疑問Vado al dottore.Vado dal dottore. の違いはなにか?

考察 「〜から」の意味をもつdaが、使い方によって「〜の元に(で)」なる。

前置詞daは、名詞(固有名詞または普通名詞)や代名詞の前に置かれたときに、「場所への補語」や「場所における補語」となる。

Vado dal dottore; vengo da te; sono dal barbiere; ci vediamo da Maria.

本来は「出発点」を指すdaにこうした用法が成立するのは、人間の生活や仕事の場所を指して前置詞pressoと同じ意味を持つ場合と説明される。

Sono dagli zii; ci sarà una festa dai Bertini; Paola è dal parrucchiere.

(住所や職場ではなく)人自身を指す場合は前置詞aを用いる。

Ho portato la lettera dal direttore (=nella stanza del direttore).

Ho portato la lettera al direttore (= al direttore in persona, nelle mani del direttore).

レストランやカフェなど公共の場についてdaが使われるのも同じ。

Stasera andiamo a cena da Gigetto; sono andati a prendere un gelato da "Giolitti".[GIB, p.168]

「マリオの家に」da Marioとか「両親のところに」dai suoi genitoriというのも同じとみなせる。

まとめ直接人を指すときはaその居場所を指すときはdaと使い分ける。

疑問再帰動詞の例として alzarsi を使うのは適当か?(再帰動詞その1:提案編)

考察再帰動詞の例として使われる alzarsi は、本当に再帰動詞なのか?

他動詞 alzare と再帰人称代名詞 se stesso (弱形 si )を合わせて、「自分を起こす」つまり「起きる・立ち上がる」という意味になるとよく説明されるが、なんとなく違和感がある。
たとえば、alzarsi と似た svegliarsi 「起きる、目覚める」が再帰動詞ではなく代名動詞と分類されるのは、「寝ている人が自分自身を目覚めさせること」ができないからなのか。それであれば、座っている人間が「自分自身をを起こすこと」もできない(自分で起き上がることはできても)はずである。こうした違和感を解消するのが、この項の目的である。

この「再帰動詞」「代名動詞」の区別をしない辞書やテキストもたくさんあるが、文法的理解のためにはあったほうが便利と思われるので、ここではその二つを区別した上で、alzarsi の扱いについて検討する。

簡単に言って、自分を対象にする再帰動詞グループ( lavarsi 「自分を洗う」)と、再帰形しかない代名動詞グループ( pentirsi 「後悔する」)に二分される。 alzarsi のような動詞群はその中間にある。fig.1

この場合 alzarsi は、主語の性質(意図を持つ生物か、意図を持たない非生物か)によって、再帰動詞または代名動詞のどちらかになるとされる。この点が複雑である。

(1) Io mi sono alzato presto ieri. 「昨日私は早く起きた」

(2) Si è alzato un vento forte. 「強い風が起きた」

(1)では主語が「生物」だから alzarsi は再帰動詞、(2)では主語が「非生物」だから代名動詞とされる。たとえば muoversi 「動く」も再帰動詞と代名動詞の間で揺れる動詞らしい。

それなら、人間が意図的でない行動をする場合はどうなるのだろうか。

(3) Mario si è buttato per il pendio.「マリオは斜面を転がった」

マリオが自分から「転がったら」再帰動詞で、「誰かに突き落とされて転がった」ら代名動詞になるのか? かなり微妙な印象を受ける。

また、基本的な動詞 chiamarsi 「という名前である」は人が主語なら再帰動詞であるが、非生物が主語なら再帰動詞ではなく、たとえば「受け身のsi」と考えなければならなくなる。
例文(4), (5)は再帰動詞、(6)は「受身の si 」とみなされる。

(4) Io mi chiamo Marco. 「私はマルコという名前です」

(5) Questo signore si chiama Marco Rossi. 「この男性の名前はマルコ・ロッシです」

(6) Come si chiama questo fiume? 「この川はなんという名前ですか?」

「自分を〜する」という再帰動詞の主語は「有意図の生物」で、そうでなければ「代名動詞」であると考えると、このような面倒な点が生じる。

そこで、「能格動詞」と「非対格自動詞」という二つの概念を導入し、fig.2のような分類を考える。fig.2

まとめ主語の性質は関係なく、 alzarsi や muoversi のグループを再帰形による能格動詞とし、「内在的再帰動詞」(再帰形しかない動詞など)とともに、非対格自動詞の下位区分に入れる。一方、再帰代名詞が直接補語になる( lavarsi )か、他に直接補語の名詞がある( lavarsi le mani )再帰動詞は「他動詞」とみなして、明らかに別のグループとして扱う。

主語の性質(生物/非生物)や意図の有無を問わないことが重要である。具体例は、次項(再帰動詞その2:分類編)で扱う。

疑問再帰動詞と代名動詞をどのように分類すべきか?(再帰動詞その2:分類編)

再帰形代名詞つまり、再帰形代名小辞(mi, ti, si, ci, vi, si)の用法を、再帰形でない動詞の用法(他動詞/自動詞)を考えながら分類する。

表にまとめる。

タイプ意味再帰代名詞のない用法備考
A−1lavarsi自分の体を洗う他動詞 lavare「本質的再帰動詞」
A−2lavarsi le mani自分の手を洗う他動詞 lavare「形式的再帰動詞」
A−3amarsi愛し合う他・自動詞 amare「相互的再帰動詞」(複数形で)
B−1commuoversi動揺する他動詞 commuovere他動詞が再帰代名詞を伴って自動詞となる能格動詞
B−2afferrarsiにつかまる他動詞 afferrare他動詞が再帰代名詞を伴って自動詞となるが能格動詞ではない
B−3approfittarsi利用する自動詞 approfittare自動詞に再帰代名詞がついた
B−4arricchirsi裕福になる他・自動詞 arricchire他動詞、自動詞、再帰形の三つが成立
B−5vergognarsi恥ずかしく思う成立しない「代名自動詞」(再帰形のみが成立)
C−1mangiarsi una mela(自分で)食べる他動詞 mangiare強調 A−2と同形
C−2prendersela怒る他動詞 prendere慣用表現
C−3andarsene立ち去る自動詞 andare慣用表現

グループAでは、再帰形代名詞を強形se stessoに書き換えられるか自分の一部が直接補語として存在しているので、「直接補語をとる他動詞」である。したがって単純形で「他動詞」の意味をもつ動詞しか再帰形になることができない。

(1)を(2)のような強勢形に書き換えると、近過去の場合essereはavereへと変わる。essereのままでは(3)のように非文となる。

(1) Io mi sono lavato ieri sera. 「昨晩私は体を洗った」

(2) Io ho lavato me stesso ieri sera. 「昨日私は体を洗った」

(3) *Io sono lavato me stesso ieri sera.

一方グループBは、直接補語をもたない自動詞である。単純形の他動詞が自動詞に変化する場合(B−1)を始めとして、いろいろなケースがあるが、いずれも直接補語をとることはない。

グループCは普通は慣用表現とされるが、明らかに直接補語(代名詞)をもつC−1,C−2はグループAに、直接補語をもたない自動詞であるC−3はグループBにそれぞれ分類できると思われる。

まとめ(その1:提案編)で提示した概念「非対格自動詞」、「能格動詞」と「内在的自動詞」に基づいて上の表を書き換える。

他/自下位区分タイプ意味再帰代名詞のない用法備考
他動詞再帰動詞A−1lavarsi自分の体を洗う他動詞 lavare「本質的再帰動詞」
A−2lavarsi le mani自分の手を洗う他動詞 lavare「形式的再帰動詞」
A−3amarsi愛し合う他・自動詞 amare「相互的再帰動詞」(複数形で)
C−1mangiarsi una mela(自分で)食べる他動詞 mangiare強調 A−2と同形
C−2prendersela怒る他動詞 prendere慣用表現
非対格自動詞能格動詞B−1commuoversi動揺する他動詞 commuovere他動詞が再帰代名詞を伴って自動詞となる能格動詞
B−4arricchirsi裕福になる他・自動詞 arricchire他動詞、自動詞、再帰形の三つが成立
内在的再帰動詞B−5vergognarsi恥ずかしく思う成立しない「代名自動詞」(再帰形のみが成立)
B−2afferrarsiにつかまる他動詞 afferrare他動詞が再帰代名詞を伴って自動詞となるが能格動詞ではない
B−3approfittarsi利用する自動詞 approfittare自動詞に再帰代名詞がついた
C−3andarsene立ち去る自動詞 andare慣用表現

「能格動詞」と「内在的再帰動詞」の境界線は微妙な問題が残るが、「再帰動詞」に対して「非対格自動詞」という対立は明確である。

疑問能格動詞とはなにか?(再帰動詞その3:能格動詞)

affondare「沈める」「沈む」のような動詞では、異なる二つの行為項図式schemi attanzialiが成立する。

(1) Il capitano affonda la nave.「船長は船を沈める」affondare (AGENTE, TEMA)

(2) La nave affonda.「船が沈む」affondare (TEMA)

(1)では行為者AGENTEと主題TEMAの二項があるのに対して、(2)には行為者がなく主題が主語である。これが異なる構造であることは、それぞれの助動詞が異なることからも理解できる。

(3) Il capitano ha affondato la nave.「船長は船を沈めた」

(4) La nave è affondata.「船が沈んだ」

こうしたaffondareのように、他動詞と自動詞の異なる二つの行為項パターンを持つ動詞の自動詞形は、「能格動詞verbi ergativi」とよばれる。

affondareでは同じ形で他動詞、自動詞が成立するが、他動詞に対応する自動詞が再帰動詞の形で与えられる場合もある(例はGGIC1, p.47より)

同じ形で他動詞/自動詞になる例。anerire, aumentare, avanzare, cambiare, cessare, cicatrizzare, cominciare, continuare, derivare, diminuire, esplodere, finire, guarire, ingrassare

他動詞に対応する自動詞が再帰動詞の形で与えられる場合。accumularsi, allargarsi, attorcigliarsi, capovolgersi, concentrarsi, dividersi, interessarsi, laurearsi, liquefarsi, muoversi, radunarsi, riempirsi

まとめAndornoは能格動詞の特徴をこう指摘する。

以下に見るように能格動詞は、より広いカテゴリーである非対格動詞verbi inaccusativiに属する。

疑問非対格動詞とはなにか?(再帰動詞その4:非対格動詞)

最近の文法研究では自動詞/他動詞の区別に加えて非対格動詞という分類区分がある。Andornoによればこの非対格動詞verbi inaccusativiには以下のような動詞が含まれる。

  1. 助動詞にessereを用いる自動詞
  2. 代名自動詞
  3. 受動態動詞

これらの動詞は直接補語をもたないが、その主語には他動詞の直接補語(目的語)とよく似た特徴がある。特に非対格動詞には以下のような可能性がある。

1.絶対分詞構文で主語と共に現れること。

(1)a. Arrivata Anna, siamo partiti. (非対格動詞主語)「アンナが着いて、私たちは出発した」

b. *Mangiata Anna, siamo partiti. (他動詞主語)

c. *Camminata Anna, siamo partiti.(自動詞主語)

2.動作主語を指す名詞を形容詞として修飾すること。

(2)a. Anna appena arrivata, è ripartita. (非対格動詞主語)「着いたばかりのアンナはまた出発した」

b. *Anna, appena mangiata, è partita. (他動詞主語)

c. *Anna, appena camminata, è rientrata.(自動詞主語)

3.主語に対して部分補語、属格補語を指す代名詞neを用いること。

(3)a. Ne è arrivata la sorella (la sorella di Anna)(非対格動詞主語)「その姉(アンナの姉)が到着した」

b. *La sorella ne ha mangiato un panino (la sorella di Anna). (他動詞主語)「その姉(アンナの姉)はパニーノを食べた」

c. *La sorella ne ha camminato (la sorella di Anna).(自動詞主語)「その姉(アンナの姉)は歩いた」

したがって、非対格動詞の主語は、自動詞主語と他動詞直接補語の両方の性質を有する。実際に他動詞の直接補語はこうした例文で現れることができる。

(4)1. Mangiata una pizza siamo partiti. (他動詞直接補語)「ピザを食べて私たちは出発した」

2. La pizza, appena mangiata è pesante.「ピザは食べた直後は腹にもたれる」

3. Ne ho mangiato la pizza. (La pizza di Anna)「わたしはそのピザ(アンナのピザ)を食べた」

非対格動詞主語がこうした対格補語の性質をもつには、動詞に後置される必要がある(GGIC1, p.47)。Andornoはその条件に触れていないが、例文(3)aの主語を前置すれば非文になると考えられる。

(3)a`. *La sorella ne è arrivata. (la sorella di Anna)(動詞に前置された非対格動詞主語)「その姉(アンナの姉)が到着した」

Andornoによれば助動詞にessereをとる自動詞はすべて非対格動詞に含まれるが、GGIC1の分類は微妙に異なる。

  1. 能格動詞(他動詞と自動詞が同形の場合と、他動詞と再帰形自動詞が対応する場合がある)
  2. 内在的再帰動詞
  3. essereを助動詞とする自動詞
  4. 対応する他動詞をもつが能格動詞ではない動詞
  5. 助動詞にessereとavereの両方が可能である気象動詞、動作動詞(avereを用いる場合は非対格動詞ではない)
  6. 受動態で用いられる動詞
  7. 受け身のsiで用いられる動詞

GGIC1では、助動詞にessereを用いる動詞で「非対格動詞」に含まれないものとして、以下のような動詞が挙げられてる。

  1. 本質的再帰動詞(再帰代名詞が強形に書き換えられる場合)
  2. 直接補語をもつ再帰動詞(sognarsi, immaginarsi)
  3. 非人称のsi
  4. 相互のsi
  5. essere
  6. costare

まとめ非対格動詞、能格動詞についてはあいまいな点も多いが、イタリア語の再帰動詞や代名動詞、受け身のsiや非人称のsiを考える際に重要な手がかりとなる。

疑問 ミランは男でユベントスは女? サッカーチームの男性女性の見分けかた

考察 性のない「非生物」名詞でも、イタリア語では男性女性の区別をしなければならない。サッカーのチームの男女についてこんな説明がある。

規則1:町の名前をそのままチーム名として使う場合、チーム名は男性。

il Napoli, il Torino, il Bari, il Bologna, il Parma, il Cagliari, il Verona

例外はローマla Roma。ラツィオの場合、州名は男性名詞il Lazioなので、チーム名は女性名詞la Lazio。

規則2:町の名前の形容詞をチーム名として使う場合、チーム名は女性。

la Fiorentina, l'Udinese, la Salernitana, la Cremonese, la Lucchese, la Reggina

アタランタl'Atalantaは、ギリシャ神話の女性の名から派生しているので、女性。 サンプドリアla Sampdoriaは、Sampierdareneseとl'Andrea Doriaの合併から前者の名前に由来し女性。 ユベントスla Juventusはラテン語の女性名詞Juventus(「若さ」の意味)なので女性。 インテルl'Interは形容詞internazionaleの縮約語で、規則2に準じて女性。 ミランMilan、ジェノアGenoaはそれぞれ町の英語名なので、規則1に準じて男性。[Birattari, p.89]

まとめ名詞(町の名前)なら男性、形容詞なら女性になる。あえて理由を考えれば、町の名前が女性名詞なので、区別するためにチーム名としては性を変えて男性にしているとか、インテルも含めて形容詞の場合は女性名詞扱いになるのは、チームを表すsquadraが女性名詞だから(例la (squadra) fiorentina)と推測できるだろう。例外のローマについてはさらに調べる必要がある。

疑問 finché節の2つの用法(finchéその1)

考察 finchéで始まる節は、主節の終了時点を指す場合と、主節との同時性を指す場合の2つの用法があり、それぞれ「〜するまで」、「〜する間」と訳される。

(1)a. Resta qui finché faccia bello.「天気がよくなるまでここにいなさい」

b. Resta qui finché fa bello.「天気がよい間はここにいなさい」

(1a)のように「ある変化が起きる時点まで」を指す場合を、便宜的に変化時点用法とする。類似表現を並べる。

(2)a. Resteremo fino alle sei「6時まで」

b. Resteremo fino al momento in cui lui telefona 「彼が電話する瞬間まで」

c. Resteremo finché lui telefona.「彼が電話する時まで」

(2c)を例にとると、ここでlui telefonaという文が指すのは「6時」のように幅のない点であり、「その時点まで残っていよう」という意味になる。図fig. 3参照

特徴を挙げる。

  1. fino al momento in cui「〜するまで」「〜が起きるときまで」と言い換えられる。
  2. 直説法でも接続法でもよい
  3. nonは虚辞のnonとなる。(否定文と肯定文に差がない)

したがって以下の(3a-d)は、「変化時点」用法であれば同じ意味となる。

(3)a. Resteremo finché lui telefona. 直説法、nonなし

b. Resteremo finché lui non telefona. 直説法、nonあり

c. Resteremo finché lui telefoni. 接続法、nonなし

d. Resteremo finché lui non telefoni. 接続法、nonあり

「彼が電話する(してくる)時点まで、残っていよう」

一方、(1b)のように「幅のある行為、状態」が持続する期間を表現する場合を、持続期間用法とよぶことにする。

変化時点用法と比較して、いくつかの違いがある。

  1. per tutto il tempo che「〜である間」「〜かぎり」やmentre「〜の間」と言い換えられる。
  2. 通常、直説法が用いられる。
  3. 虚辞のnonではなく本来の否定文になる。
  4. ときにfin cheの語形が使われる。

したがって持続期間用法である(4a)と(4b)は(3a)と(3b)と同形の文であるが、意味は違う。また相互に異なり、(4a)では現在「電話中が続いている間」、(4b)では現在「電話がない状態が続いている間」を指している。

(4)a. Resteremo finché telefona. 「彼が電話している間は」 fig.4参照

b. Resteremo finché non telefona. 「彼が電話してこない間は」 fig.5参照

現実には、持続期間用法(4b)は、変化時点用法(3a, 3b)と同じ状況を指す。つまり「電話してこない間」は「電話するまで」と同じことである。そのため、(4b)は虚辞のnonではないが、(3b)と同じとして扱うことができる。(4a)だけが別の状況(「彼が電話中の間は」)を指している。

まとめfinchéは基本的に「〜するまで」を意味する。finché +直説法肯定文の場合だけ「〜するまで」「〜する間」の両方の可能性がある。
nonについては次項 finché節内の虚辞のnonの区別はつけられるか(finchéその2)、時制・法についてはfinché節内の法と時制の関係(finchéその3)参照。

疑問 finché節内の虚辞のnonの区別はつけられるか(finchéその2)

考察 上で考察したようにfinché節で、語形が同じで同じ状況を指すために、変化時点と持続期間の2つの用法が区別できないことがある。上記の例文(3b)(4b)に対応する例を見る。

(5) a. Non sono tranquilla finché non mangia la minestra.

b. Non esco finché non arriva Piero.

(5a)は、変化時点用法では「スープを飲むまで私は安心できない」(虚辞のnon)、持続期間用法では「スープを飲まない間は私は安心できない」となる。(5b)は、変化時点用法なら「ピエロが到着するまで私は外出しない」(虚辞のnon)、持続期間用法なら「ピエロが到着しない間は私は外出しない」となる。

しかし、niente / qualocosa, nessuno / qualcunoといった表現があると、用法によって差が生じる。

(6)a. Non sono tranquilla finché non mangia niente.「(彼が)何も食べない間は落ち着かない」

b. Non esco finché non arriva nessuno.「誰も来ない間は出ない」

(7) a. Non sono tranquilla finché non mangia qualcosa.「(彼が)何か食べるまで落ち着かない」(虚辞のnon)

b. Non esco finché non arriva qualcuno.「誰か来るまでは出ない」(虚辞のnon)

(6a)は持続期間用法で実際に否定文であり、"Non sono tranquilla per tutto il tempo che non mangia niente"を意味する。(7a)は変化時点用法で虚辞のnonであり、"Non sono tranquilla fino al momento in cui (comincia a) mangia(re) qualcosa"を意味する。

本来の否定文は、non 〜 niente / nessunoであり、non 〜qualcosa / qualcunoとなるのは虚辞のnonである。

まとめfinché節のなかで、non 〜 nienteがあれば本来の否定文、non 〜 qualcosaとあれば虚辞のnonであるが、区別がつかない(つける必要がない)ことがほとんどである。

疑問 finché節内の法と時制の関係(finchéその3)

考察 finché節では用法によって接続法・直説法が変わる。さらに時制が関係することがある。

変化時点用法で、従属節の事象が発話時点以前に実現した場合は、直説法が用いられる。(過去の事実=直説法)

(8) a. Non tornai a casa finché non si fece tardi.「遅くなるまで帰らなかった」(実際に遅くなった)

b. Fecero marcia indietro finché non tornarono al puto di partenza.「出発点に戻るまで後退した」(実際に戻った)

従属節が接続法の場合、それが実現したかどうかは分からない。

(9) Non poteva avere un' idea esatta della rotondita della terra finché non l' avesse percorsa, misurata, palpata「地球を周回し、計測し触れてみるまでは、地球が球体であることは精確に理解できなかった」(実際に周回したかどうかはわからない)

持続期間用法の場合、主節の時制(現在・過去)の時点で成立している状況を指すため、finché節では接続法ではなく直説法を用いる。(その時点での事実=直説法)

(10)a. Divertiti finché sei / *tu sia giovane.( cioè adesso che sei giovane)「若いうちに楽しみなさい」(若い今に)

b. Finché si tratta / *tratti di pochi soldi nessuno farà difficoltà.「小額である限りはだれも苦労しないだろう」

(11) Finché fu giovane non si occupò dell'azienda.「若い間は会社に携わる事はなかった」

ただし状況が成立していても未来を想定する場合は接続法が可能である。

(12) a. Finché io viva, me lo ricorderò.「生きている限りそのことを覚えているだろう」

b. Spenderò quel che vorrò, finché lo consentano le mie finanze.「財政が許す限り好きなだけお金を使うだろう」

まとめ変化時点用法では、直説法と接続法の両方がある。持続期間用法はほとんど直説法だが、将来的な意味で接続法が使われることもある。

疑問 イタリア語のアクセント記号の規則とは?

考察 母音の開口/閉口とアクセントの規則について

1) イタリア語には7つの母音 と2種類のアクセント記号がある。

(ア) [a], [i], [u], 開口音[ɛ], 閉口音[e], 開口音[ɔ], 閉口音[o]

(イ) 右下がりの重アクセント accento grave [ ` ] es. già, cioè, sì, perciò, virtù

(ウ) 左下がりの鋭アクセント accento acuto [ ´ ] es. né, perché

2) 通常は語末のアクセントだけ書かれるが、同じスペルの単語を区別するために書かれることがある。

(ア) àncora / áncora 「錨(いかり)」/「まだ(副詞)」

(イ) pèsca / pésca 「桃」/「魚釣り」

(ウ) bòtte / bótte 「殴打(複数形<botta)」/「樽(たる)」

3) 複数の方式がある。

(ア) 閉口音のe [e], o [o]に鋭アクセント、開口音のe [ɛ], o [ɔ]と残りの a [a], i [i], u [u] に重アクセント(最も一般的)

à[a], ì[i], ù[u], è[ɛ], ò[ɔ], é[e], ó[o] (e, o の閉口音だけに左下がりの鋭アクセント)

(イ) 閉口音の e [e], o [o] と i, u に鋭アクセント、開口音の e [ɛ], o [ɔ], a に重アクセント

à[a], í[i], ú[u], è[ɛ], ò[ɔ], é[e], ó[o] ( e, o の閉口音と i, u に左下がりの鋭アクセント)

(ウ) すべての母音に重アクセントを使う。(簡略版、逆もあり)

à[a], ì[i], ù[u], è[ɛ], ò[ɔ], è[e], ò[o]

4) 以上をまとめる(太字が左下がりの鋭アクセント)。

[a][i][u]開口音[ɛ]閉口音[e]開口音[ɔ]閉口音[o]
(ア)àìùèéòó
(イ)àíúèéòó
(ウ)àìùèèòò

まとめ通常ほとんどが右下がりの重アクセント。perché, né, poichéなど、閉口音の-ché に注意。

疑問 アクセント記号を入力するには(Windows XP版)

考察 コンピュータでアクセントを入力するには

1) 文字化けが心配な場合は、アポストロフィで代用する。

es: Perché Marco è partito così presto? > Perche' Marco e' partito cosi' presto?

2) WordやPowerPoint: [挿入] > [記号と特殊文字] から文字を選んで挿入する。

3) WordやPowerPoint: ショートカットを利用する(コントロールキーCtrlとシフトキーShiftを使った2段階の操作).

「CtrlとShiftを両方押しながら<@>を入力し」、続いて「 <a> を入力」 → à

「CtrlとShiftを両方押しながら<@>を入力し」、続いて「 <i> を入力」 → ì

「CtrlとShiftを両方押しながら<@>を入力し」、続いて「 <u> を入力」 → ù

「CtrlとShiftを両方押しながら<@>を入力し」、続いて「 <e> を入力」 → è

「CtrlとShiftを両方押しながら<@>を入力し」、続いて「 <o> を入力」 → ò

「CtrlとShiftを両方押しながら(文字キーボード上部の)<7>を入力し」、続いて「 <e> を入力」 → é

「CtrlとShiftを両方押しながら(文字キーボード上部の)<7>を入力し」、続いて「 <o> を入力」 → ó

「CtrlとShiftを両方押しながら<@>を入力し」、続いて「Shiftを押しながらeを入力=大文字(E)を入力」 → È

まとめメール等、文字化け予防や急いでいる場合は、アポストロフィでかまわない.

疑問 動詞+名詞の合成語における、動詞は命令形か?

考察 portacenere, battipanni, apribottiglieなど、動詞+名詞の形の合成語parole composteにおける動詞の形は命令法2人称単数形に見えるが、はたして両者の間に関係はあるのだろうか。

1) are動詞の場合、動詞部分の語尾は、-a:

portalettere 「郵便配達人」: portare「運ぶ」>porta+lettere「手紙」=portalettere「手紙を運ぶ人」

lavastoviglie「食器洗い、皿洗い機」: lavare 「洗う」>lava+stoviglie「食器」=lavastoviglie「食器を洗う人、物」

tagliaerba「芝刈り機」:tagliare 「刈る」>taglia+erba「芝」=tagliaerba「芝を刈る物」

2) ere動詞の場合、動詞部分の語尾は、-i:

battipanni 「布たたき」: battere「叩く」>batti+panni「布地」=battipanni「布を叩く物」

perdigiorno「閑人」:perdere「費やす」>perdi+giorno「日」=perdigiorno「日を無駄にする人」

reggipetto「ブラジャー」:reggere「支える」>reggi+petto「胸」=reggipetto「胸を支える物」

3) ire動詞の場合、動詞部分の語尾は、-i:

apribottiglie 「栓抜き」:aprire「開ける」>apri+bottiglie「ビン」=apribottiglie「ビンを開ける物」

copricapo「帽子」:coprire「覆う」>copri + capo「頭」=copricapo「頭を覆う物」

命令法2人称単数の語尾はそれぞれ、-a, -i, -iである。

1)are動詞"Marco, porta quelle lettere subito qui!"「マルコ、その手紙をすぐ持って来い」

2)ere動詞"Marco, batti questo tappeto!"「マルコ、このカーペットを叩きなさい」

3)ire動詞"Marco, apri quella bottiglia di vino!"「マルコ、そのワインを開けなさい」

以上の例からは、合成語の動詞形と命令法が一致しているように思われる.

 are動詞: portare  ere動詞: battere  ire動詞: aprire 
 合成語  portalettere  battipannni  apribottiglie 
 命令法  porta  batti  apri 

しかし以下の理由から、合成語の動詞語尾は、命令法ではなく派生語の語幹母音と関係があると考えたほうが適切である.GGIC3, p.506

理由1.合成語に「命令」的な意味を想定することが難しい.

理由2.ire動詞isc型の合成語 pulivetri「窓拭き、ワイパー」」(pulire+vetri、*puliscivetri)は、命令法(pulisci)と一致しない.

理由3.ere動詞の語幹母音が e から i に変化する規則を合成語、派生語に共通して仮定できる.

不定詞の語幹母音、命令法語尾、合成語、派生語(動詞+接尾辞 -bile)の語幹母音の比較をしてみる.

 are動詞: portare  ere動詞: battere/leggere  ire動詞: aprire  ire動詞(-isc): pulire/preferire
 不定詞の語幹母音  A: portare  E: battere I: aprire  I: pulire 
 命令法語尾  A: porta I: batti  I: apri  ISCI: pulisci 
 合成語の語幹母音  A: portalettere I: battipanni I: apribottiglie  I: pulivetri 
 派生語の語幹母音  A: portabile  I: leggibile  I: apribile  I: prefelibile 

まとめ動詞+名詞の合成語における動詞は命令法に見えるが、むしろ派生語と共通の現象(ere動詞の動詞語幹母音が e から i に変化する:次項参照)だと考えられる.

疑問 動詞から派生する名詞と形容詞における語幹母音

考察 cantare → cantabile, vincere → vincitore のように、動詞から派生する形容詞や名詞において、接尾辞の前の語幹母音が、動詞の種類(are動詞、ere動詞、ire動詞)によって異なる.

動詞から形容詞および名詞を派生させる接尾辞、-bile; -tore; -zione; -mento; -tura の例を以下に挙げる(語例はGGIC3, p.496-7を参照した).

いずれの派生語でも、are動詞の語幹母音は a であり、ere動詞とire動詞の語幹母音は i である.are動詞、ire動詞では不定詞の語幹母音と同じであるが、ere動詞では不定詞の語幹母音 e が i に変わっている.

-bile「〜可能な」 are動詞 ere動詞 ire動詞
-語幹母音+接尾辞 -Abile -Ibile -Ibile
動詞 decifrare:解読する attendere:期待する udire:聞く
動詞 → 形容詞 decifrabile attendibile udibile
動詞 adorare:崇拝する leggere:読む risarcire:弁償する
動詞 → 形容詞 adorabile leggibile risarcibile
動詞 coltivare:耕作する cedere:譲る fallire:間違う
動詞 → 形容詞 coltivabile cedibile fallibile
動詞 approvare:承認する godere:享受する esaudire:聞き入れる
動詞 → 形容詞 approvabile godibile esaudibile
動詞 realizzare:実現する eleggere:選出する eccepire:異議を唱える
動詞 → 形容詞 realizzabile eleggibile eccepibile

-tore「〜する人」 are動詞 ere動詞 ire動詞
-語幹母音+接尾辞 -Atore -Itore -Itore
動詞 lavorare:働く bere:飲む(*註) cucire:縫う
動詞 → 名詞 lavoratore bevitore cucitore
動詞 denigrare:否認する vendere:売る tradire:裏切る
動詞 → 名詞 denigratore venditore traditore
動詞 tirare:引っ張る rodere:かじる spedire:送る
動詞 → 名詞 tiratore roditore speditore
動詞 dissipare:無駄にする vincere:勝つ assalire:襲う
動詞 → 名詞 dissipatore vincitore assalitore

(*註):bere; dire, fare などは現在形 bevo、半過去 dicevo、ジェルンディオ facendo が示すように、bevere, dicere, facereとして ere 動詞的な活用をする場合がある.Cfr. bevibile; dicitore, dicitura, dizione; facitore.


-zione「〜すること」 are動詞 ere動詞 ire動詞
-語幹母音+接尾辞 -Azione -Izione -Izione
動詞 formare:形成する ripetere:繰り返す ammonire:警告する
動詞 → 名詞 formazione ripetizione ammonizione
動詞 amministrare:管理する perdere:失う inibire:禁止する
動詞 → 名詞 amministrazione perdizione inibizione
動詞 delucidare:磨く volere:欲する proibire:禁じる
動詞 → 名詞 delucidazione volizione proibizione
動詞 intimidare:脅す descrivere:描写する ebollire:沸騰する
動詞 → 名詞 intimidazione descrizione ebollizione

-mento「〜すること」 are動詞 ere動詞 ire動詞
-語幹母音+接尾辞 -Amento -Imento -Imento
動詞 irraggiare:発光する accadere:起こる irrigidire:硬くする
動詞 → 名詞 irraggiamento acccadimento irrigidimento
動詞 arruolare:徴募する decadere:衰える condire:調味する
動詞 → 名詞 arruolamento decadimento condimento
動詞 brontolare:不平を言う sccadere:衰退する stordire:驚かす
動詞 → 名詞 brontolamento scadimento stordimento
動詞 scatenare:爆発する sconvolgere:転覆する svilire:軽んじる
動詞 → 名詞 scatenamento sconvolgimento svilimento

-tura「〜すること」 are動詞 ere動詞 ire動詞
-語幹母音+接尾辞 -Atura -Itura -Itura
動詞 sceneggiare:脚本を書く battere:叩く fiorire:開花する
動詞 → 名詞 sceneggiatura battitura fioritura
動詞 pesare:重さを量る fendere:傷つける ricucire:再び縫う
動詞 → 名詞 pesatura fenditura ricucitura
動詞 ingessare:ギプスをはめる mungere:乳を搾る pulire:きれいにする
動詞 → 名詞 ingessatura mungitura pulitura
動詞 tosare:刈り込む mietere:刈り取る imbottire:詰める
動詞 → 名詞 tosatura mietitura imbottitura

まとめ動詞からの派生語ではere動詞の語幹母音が e から i に変わる.合成語と同じ現象が見られる(前項参照).

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