旧約聖書 哀歌1.1(新共同訳)
第一の歌
なにゆえ、独りで座っているのか、人に溢れていたこの都が。
やもめとなってしまったのか、多くの民の女王であったこの都が。
奴隷となってしまったのか、国々の姫君であったこの都が。
Lamentations Rabbah by Jacob Neusner、
p.115-124
XXXV: vii.
- 「多くの民の女王であったこの都」
- 人で満ちていた[町が孤独である]と述べた後で、なぜ「多くの民の間で」と言うのか?
- それは学問に秀でていることを意味する。
- 「国々の姫君であったこの都が[奴隷となってしまったのか]」
- ラビのヨゼの息子であるラビのフナは述べた。「イエサレム人がどこに行っても、その知恵を聞いた人々は名誉の席をかれに用意するだろう」
- 以下のような話がある。
- かつて一人のイエサレム人が町に出かけ、友人に迎えられた。彼はそこにしばらく滞在した。死期が近づいた彼は、自分の財産をもてなしてくれた友人の手にゆだねた。
- 彼は友人に言った。「もし私の息子がやってきて私の遺産を受け取ろうとしたら、賢い行動をを三度するまでこの遺産を渡さないでくれ」
- 余所者が来ても[尋ねたとしても]その父親の友人に家を示さないでおこうと人々は合意した。
- 息子は聞いてこの地にやってきた。そして男の名を知った。息子は町の門のところに来て腰を下ろした。薪の束を背負った男が通り過ぎるのを見かけた。息子は彼に言った。「薪を売ってもらえるか?」
- 彼は息子に言った。「はい」
- 息子は彼に言った。「代金を受け取っていけ、誰某のところに薪を運んでくれ」
- 息子は、彼が例の男の家に来るまでその後を追った。
- 男は言った。「だれが注文したのか?」
- 彼は男に言った。「あなたは注文しなかったが、この薪は私の後についてきている男のものだ」[これが家を見つけた息子の第一の賢い振る舞いである]
- 男は息子を出迎えて挨拶し、言った。「どなたでしょうか?」
- 息子は彼に言った。「わたしは、お宅で死んだイエサレム人の息子です」
- 彼はは息子を家に入れて食事を用意した。
- 男には、妻と二人の息子、二人の娘がいた。彼らが食卓に着くと、男は息子の前に五羽の鶏を置いた。
- 男は息子に言った。「これを[我々の間で]分けてください」
- 息子は彼に言った。「それはわたしのすることではありません。わたしは客人ですから」
- 男は息子に言った。「どうかお願いします」
- 息子は、一羽を取ってそれを家の主とその妻に渡した。次の一羽を二人の息子に供し、三番目を二人の娘に、そして残った二羽を自分に取り分けた。[これが息子の二番目の賢い行動である]
- 男は息子に言った。「この分配はどういうわけか?」
- 息子は男に言った。「だがわたしは客人だと言いませんでしたか? それでもわたしは極めて公平に分配しました。あなたと奥さんと一羽で三つ、あなたの二人の息子と一羽で三つ、あなたの二人の娘と一羽で三つ、そして、わたしと二羽で三つです」
- 翌日、男は息子のために食事を作り、みなのまえに一羽の鶏を置いた。男は客に向かって言った。「これをとって分けてください」
- 息子は彼に言った。「それはわたしのすることではありません。わたしは客人ですから」
- 男は息子に言った。「どうかお願いします」
- 息子は鶏の頭を取って家の主の前に置いた。内臓をその妻に、両腿をその二人の息子に、手羽をその二人の娘に、そして身のところを自分に取り分けた。
- 男は息子に言った。「この分配はどういうわけか?」
- 息子は男に言った。「だが、わたしは客人だと言いませんでしたか? それでもわたしは極めて公平に分配しました」
- 「あなたに頭を与えたのは、あなたが家の頭だからです。内臓を奥さんに与えたのは、子供たちが子宮から生まれるからです。両腿は、家の柱であるあなたの息子さんたちに、手羽は娘さんたちに与えました。娘さんたちはこの家から離れて夫のもとに飛んでいくからです」
- 「そしてわたしは船[に似た形をしている身]をとりました。わたしが船に乗って来たからです」[Cohen, p.74による]
- 「さあ、わたしの父が残した遺産を渡してください。そうすればわたしはここを発つことができます」
- そこで男は席を立って息子にその遺産を渡し、息子は立ち去った。
- 四人のイエレサム人がアテネに行き、その土地の人に接待された。晩になって主が彼らのために食事を作った。飲み食いした後で、彼らのために四つのベッドを用意した、が、そのひとつは壊れていた[隣のベッドに支えられていた]。
- 彼らが飲み食いした後で、主人は言った。「イエサレム人はとても賢いから、かれらの話を聞くことにしよう。彼らが何を言うか聞き取れるようにそばに横にりに行こう。」
- 壊れたベッドに寝ていた男が目を覚まして言った。「おれがベッドの上に寝ていると思うかい? おれは地べたに寝ているだけだ」
- 二番目の男が目を覚まして言った。「そんなことに驚くのかい? 俺たちが食べていた肉は犬の味がしたよ」
- 三番目の男が目を覚まして言った。「そんなことに驚くのかい? 俺たちが飲んだ葡萄酒は墓地のような味がしたよ」
- 四番目の男が目を覚まして言った。「そんなことに驚くのかい? ここの主人は父親の息子ではないのだよ」
- ここで主人は言った。「一人は本当のことを言ったが、三人は嘘をついている」
- 翌朝、起きた主人は肉屋のところへ行き、言った。「ここに金はある。昨日もらった肉と同じものをください」
- 肉屋は主人に言った「もう残ってません」
- 主人は肉屋に言った。「なにか特別なことでもありましたか?」
- 肉屋は主人に言った。「乳飲みの子羊がいたんですが、その母羊が死んでしまいました。雌犬を飼っていたので、子羊は雌犬の乳を飲んでいました。夕べあなたが肉を買いに来たとき、売る肉がなくて、その子羊の肉を売るしかなかったのです」
- 主人はつぶやいた。「二人は本当のことを言っていたが、二人は嘘をついていた」
- 主人は酒屋のところへ行き、言った。「夕べ売ってくれたワインをください」
- 酒屋は主人に言った「もう残ってません」
- 主人は酒屋に言った。「なにか特別なことでもありましたか?」
- 酒屋は主人に言った。「父親の墓に植えた葡萄の木を持っていました。そこの葡萄を搾って葡萄酒を樽に詰めました。夕べあなたが葡萄酒を買いに来たとき、他に葡萄酒がなくてその樽から売るしかなかったのです」
- 主人はつぶやいた。「あの三人は本当のことを言っていたが、一人は嘘をついていた」
- 主人は言った。「母に尋ねてみよう」
- 主人は母のところへ行き、彼女に言った。「わたしはだれの息子ですか?」
- 母親は主人に言った。「あなたの父親の息子です」
- 主人は母親に言った。「本当のことを言いなさい。わたしはだれの息子か? 本当のことを言わなければ首を切ってやる」
- 母親は主人に言った。「あなたの父親は不妊でした。[あなたがおおやけの父親から受け継いだ]財産が第三者の手に渡らずあなたに渡るように、わたしが浮気をしたのが悪いことだったでしょうか?」
- そこで主人は言った。「イエサレム人は俺たちのところに来て、みんなが不義の子だと宣言するのだろうか?」
- 彼らは自分たちの間で約束して、二度とイエサレム人を[客として]受け入れないことにした。
- あるイエサレム人がアテネにやってきたが、だれも彼をもてなそうとしなかったので、彼は馬屋へ行った。
- 飲み食いした後で、彼はそこで寝ようとした。
- 馬屋の主人が彼に言った。「イエルサレムから来た者に対しては、その者が三度飛び跳ねるまで泊めてはならないというのが我々の間の約束ごとである」
- 彼は主人に言った。「あなた方がどんな飛び跳ね方をするのか知らない。先に飛び跳ねてくれれば、それを真似ることにしましょう」
- 主人が一度飛び跳ね、二度、そして三度目に飛び跳ねると、馬屋の外に出てしまった。イエサレム人は立ち上がって、その背後で戸を閉めた。
- 主人は彼に言った。「これはなんということか?」
- 彼は主人に言った。「あなたがわたしにしようとしたことをあなたにしたのですよ」
- [Cohenの翻訳ではなくBuberのテクストの配列に従う]アテネ人がイエサレムを訪れて学校に行ったが、教師は不在だった。
- 彼は子供たちに質問をし、彼らは答えた。
- 子供たちは彼に言った。「質問されて答えられなかった者は服をとられることにしよう」
- みんなは賛成した。
- 子供たちは彼に言った。「あなたは賢いから、先にどうぞ」
- 彼は子供たちに言った。「あなた方が地元だから、先に質問をどうぞ」
- 子供たちは彼に言った。「これを説明してください。九人が出て行き八人が入る、二人が注ぐが飲むのは一人で、仕える者は二十四人」
- 彼は子供たちに説明できなかった。子供たちは彼の服をとった。
- 彼はラビのヨハナンのもとへ行き、彼に言った。「これがあなたのやり方ですか?子供たちは客人を裸にしてしまった」
- ラビは彼に言った。「だれがあなたを裸にしたのか?」
- 彼はラビに言った。「学生たちです」
- ラビは彼に言った。「あなたが答えられないことを尋ねたのですか?」
- 彼はラビに話をした。
- ラビは彼に言った。「行ってこう説明しなさい[Cohen, p. 78]。入ってくる九人とは身ごもる九ヶ月のこと、出て行く八人とは割礼の八日間のことです。
- 「注ぐ二人とは乳を与える二つの胸で、飲む一人とは赤ん坊のことです。
- 「そして仕える二十四人とは授乳する二十四ヶ月のことです」
- 彼は行って子供たちにこの話をして、服を取り返した。子供たちは彼の前で暗唱した『わたしの雌牛で耕さなかったら、わたしのなぞは解けなかっただろう』(士師記14:18)」
- アネネ人がイエルサレムに来て、子供に出会った。子供にお金を渡して言った。「行って、わたしにチーズと卵を買ってきておくれ」
- 戻ってきた子供に言った。「教えておくれ、この卵は、白い鶏から生まれたのか、黒い鶏から生まれたのか?」
- 子供は彼に言った。「教えてください、このチーズは白羊からできたのか、それとも黒羊からできたのですか?」
- アテネ人がイエルサレムへ来て子供に出会った。お金を渡して言った。「行ってわたしに無花果を買ってきておくれ」
- 彼は子供に言った。「どうもありがとう」
- 子供は彼に言った。「なんの御礼もないの?」
- 彼は子供に言った。「なにが欲しいの?」
- 子供は彼に言った。 「あなたは年で、わたしは足で」"You with your month and I with my legs."
- 彼は子供に言った。「行って、分けなさい」
- 子供は自分の前に少ない分量を置き、外国人の前にはたくさんの分量を置いた。
- 彼はつぶやいた。「ありがとう。イエサレム人はとても賢いとみんなが言う。子供はこれがわたしのお金だと知っていてたくさんの分量を選んでわたしの前に置いたもだ」
- 子供が行くと、彼は言った。「それではくじを引くことにしよう。もしお前が勝ったらお前はわたしの分を取り、もしわたしが勝てばわたしがおまえの分をとることにしよう」
- 二人は合意し、それで子供は男の分を手に入れた。
- アテナ人がイエルサレムへ来て子供に出会った。お金を子供に渡してこう言った。「このお金でわたしに何か食べ物を買ってきておくれ、道中を通じて後に残るような何かを」
- 子供は行って、彼に塩を買ってきた。
- 彼は子供に言った。「わたしは塩を買ってきてくれと言ったか?」
- 子供は彼に言った。「何か食べて満足できて、後に残る物。
- 「食べて満足でき、旅行の間残る物はきっとこれだよ」
- アテネ人がイエルサレムに来て、壊れたモルタルを見つけた。彼はそれを手にして仕立て屋のところへ行って言った。「この壊れたモルタルを仕立ててもらいたい」
- 仕立て屋は一握りの砂を取って、彼に言った。「これを糸に縒ってくれたら、モルタルを仕立ててあげよう」
- アテネ人がイエルサレムに来て聖職者に出会い、こう言った。「木一束のどれだけが煙になるのだろうか?」
- 聖職者は彼に言った。「湿っていればそのすべてが煙になる。乾いていたら三分の一煙に、三分の一が灰に、三分の一が炎となる」
- 聖職者はどこでそれを学んだのか?
- 教会の祭壇の薪からである。
-
- アテナ人がイエルサレムに来て知恵を学ぼうとした。
- 彼は三年半勉強したが、何も学ばなかった。
- 立ち去ろうとして、彼は片目の見えない奴隷を買った。奴隷を売った男は、彼に言った。「こいつはとても賢くて、遠くを見通すことができる」
- 彼らが街の門を出ようとしたとき、奴隷が彼に言った。「急ぎましょう、そうしればキャラバンに追いつけます」
- 彼は奴隷に言った。「われわれの先にキャラバンがいるのか?」
- 奴隷は彼に言った。「そうです。我々の先に一頭の雌ラクダがいて、その片目は見えず、腹の中に双子がいます。それは二つの皮袋を積んでいて、ひとつは葡萄酒、もうひとつは酢が入っています。それは四マイルほど先にあって、御者は異教徒です」
- 彼は奴隷に言った。「駱駝が片目だといったいどうして分かるのか?」
- 「道の片方が駱駝によって齧られているのに、もう一方はそうでないからです」
- 「腹の中に双子がいるといったいどうして分かるのか?」
- 「駱駝は横になりました。わたしは二つの恩寵を見ました(It lay down, and I saw the graces of two)」
- 「二つの皮袋を運んでいて、ひとつが葡萄酒、もうひとつが酢だといったいどうして分かるのか?」
- 「滴の垂れた跡からです。葡萄酒の滴は地面に吸い込まれ、酢の滴は発酵しています」
- 「駱駝の御者が異教徒だとどうして分かるのか?」
- 「彼は道の真ん中で小便をしました。ユダヤ人なら道の端に行ったでしょう」
- 「それが四マイル先だとどうして分かるのか?」
- 「四マイル先までは駱駝の足跡を辿ることができますが、それ以上はできないからです」