マンション購入記



 若い頃、将来家を持てるなんて全く思っていなかったので、住宅財形もしていなかった。ところが50歳を過ぎた頃、退職を考えるようになると、転勤を考えなくてよくなったし、退職すれば宿舎を退去しなければならないので、自宅を買うことにした。一人暮らしだし、防犯上の観点からも一軒家の選択はなくマンションとした。賃貸でも良かったのだが、少し調べると、分譲マンションの賃貸ならいいが、元々賃貸物件として建設したものにはいい物件が少ないということだった。それに新築にもこだわりがあった。住んでいた周辺で5箇所ほどモデルルーム巡りをしたが、モデルルームにはしゃれた家具なども置いてあり、自分がこんな家に住めるのかと思うだけで、夢があって楽しかった。また、間取りの図面集などをくれるので、帰ってから、この部屋はどうだろうとかを想像するのも楽しい。モデルルームへ行くだけで、契約をしなくても、お米や図書券、お菓子セットなどのお土産をもらった。家を買うのに、こんなお土産では決めないと思うが‥。家を買おうと思っている人は無論、家を買おうと思っていない人でも、暇があればデルルーム巡りすることをお勧めする。冷やかしで良心がとがめるなら、「今は買う予定はない」と業者に言ってから見て回ればいいだろう。それでも親切に案内してくれる。もっとも、後から電話がかかってきたりする業者もいるが、簡単に買えるものではないので、はっきり断ればそんなには言って来ない。

 実際の購入を考える場合は、モデルルームだけではなしに現地に行っていろいろ確認すべきだろう。建築中は危険だからと言って中へは入れてくれないが、周辺の状況をよく見よう。鉄道や幹線道路に接しているところは騒音が気になるので避けるべきだ。あるマンションでは窓を閉めれば気になりませんよと言われたが、毎日窓を閉め切った生活なんて出来ない。ロケーションも大事である。実際にあったのは、裏手が工場というところと、もっと酷かったのは見える裏手に墓場があった。工場というのはくせもので、最近、都市部でのマンション敷地の供給元は工場跡地というのが多いのだ。広い敷地の工場は、売り払われて、高層マンションへ変貌する可能性が大いにある。元の土地が工場の場合、土壌汚染の恐れもある。同様に近くに空き地があると、ここには高層建築物が建つのか、一戸建てなのか等を見極めなければならない。自分の部屋の前に高層マンションが建ったら、陽は当たらないし、ロケーションは悪くなるはで最悪である。業者は近隣の他人の土地に何が建つかなんてことに責任は持たないし、持てない。
 周辺にどういう施設があるかも調べておく必要がある。スーパーやコンビニ等があるか、学校や消防署等がないか。病院や老人福祉施設も救急車の出入りが多いので注意しよう。
 図面から想像力を駆使して検討しよう。人の流れの多い出入口の近くは避け、各階もエレベータ前の部屋は避けよう。階数は、エレベータが使えなくなっても、歩いて上り下り出来る範囲で選ぼう。間取りは当然気になるが、部屋の位置の方が大事だ。角部屋で出来るだけ他の部屋と接していないところにしたい。いくら構造がしっかりしていても、近隣騒音や振動が皆無ということはあり得ないのだから‥。
 立地で大切なのは、自然環境はむろんだが、交通の便も大切で、バス便よりも鉄道の徒歩圏が望ましい。昨今の運転手不足ということでバス便は廃止の恐れがある。小規模マンションは、管理費や修繕積立金が割高になるし、共用施設を多くとれないということで、メリットはほぼない。

 検討の結果、隠居暮らしになるので、田舎で交通の便は少し悪いが、自然環境に恵まれた丘の上のマンションを買った。購入時に意識はしなかったが、体育館、シアタールーム、広い集会室と共用施設も多く、駐車場も維持費が安くてすむ自走式だった。体育館のあるところは少ないと思うが、サークル活動(卓球、バドミントン等)や子ども達の遊び場としての使用のほか、管理組合総会、管理組合のイベント等に使用しており、非常に価値がある共用施設である。当初一番狭い部屋で良いと思っていたが、モデルルームにおいてあった建築模型のルーフバルコニー付きの部屋が非常に良く見えて、契約寸前で価格は少し高くなったが、ルーフバルコニー付きの角部屋に変更した。しかし、住んでみると、非常に快適でその値段以上の価値があったと思う。変更は大正解だった。いい住環境はこころも穏やかにしてくれ、もっと早く買えばよかったと思った。
 実際に住んでみて分かったことがある。冬、寝室の北側窓の結露がひどいので、ここはオプションで2重サッシにしておくべきだった。というよりもすべての窓は冷暖房の効率化からも標準で2重サッシにしておくべきである。また、入居前の床のワックス塗布を一部屋だけけちったら、その部屋の床板の劣化が激しい。ここはすべてワックス塗布しておくべきだったし、普段もワックスがけをすべきだったと後悔をしている。

 その後、FX取引の収益で、贅沢かと迷ったが、2拠点生活の大阪市内の基地として、交通の便と価格で、セカンドハウスとしてワンルームマンションを購入した。会社やNPO法人の事務所としても使用し、会社が休業後は、近所に引越してきた姪に賃貸してもらった。平成26年8月、姪が大阪を離れて屋久島に行くことになって、賃貸契約は解除になったが、年金も満額受給になり少し余裕もできていたので、他人への賃貸や売却はしていない。姪が屋久島に家を建てた際は、私が屋久島の家を別荘として使わせてもらうという話をしていたのに、結婚したため、気軽に使えなくなり、むしろ逆に大阪のマンションを姪の帰阪時の宿として利用していることが多くなっていて、姪には利便性からこのマンション購入は大正解だったと言われています。
 しかし、問題もあり、共用施設としての集会室がないため、管理組合の理事会や総会を室料を払って外部の会議室を利用していて、広いエントランスという集会室を作るスペースもあったのに、もったいない話である。そして都市部だから仕方ないのかもしれないが、一部機械式駐車場であり、維持管理費が高くついている。また、事前に調べが及ばず、近くに消防署があり、夜間の緊急出動の際はサイレン音が気になります。