ある電車内での会話から

 ある日、電車内でこんな会話を聞いた。「もう相当お金もあるのに、あの歳になってまで、あんなに一生懸命働かなくてもいいのにね…」「そうだよね。でも、対照的に今の若い者は、金もないのに、一生懸命働こうとしないよな。」
 「あの歳」というのが何歳あたりを指しているのか分からないが、当然、定年年齢は超えていると思われる。この話を聞いてあなたはどう思うだろうか。この老人が元々勤勉で、若者が怠け者ということなのだろうか。

 私の想像するところによると、この老人世代の人たちが若かりし頃は、社会全体が貧乏で、働いてもあまり収入を得ることが出来ず、お金では相当な苦労をしたと思うのだ。そのため、いつまでも根底に自分のお金が無くなって不自由をするという不安があって、そのためにお金が出来た今でも、働き続けているのではないかと思う。世の中には年金を貯金している老人達もいると聞く。それも同じような心理からきているのではないだろうか。

 一方、現在の若者は、たとえ、一時、職を離れても、少し働けば(働き口もあるので)それなりの収入の得れるため、お金が無くなるという不安がないので、がむしゃらに働かないのではないのではないかと思うのだ。しかし、今は、お金なんて少し働けば、いつでもすぐ手に入ると思っているかもしれないが、それは将来も保証されているというものではないのだ。今は若いから働こうと思えば働き口があるかもしれないが、一定の年齢以上になると働き口は少なくなるし、特別な才能が無い限り、次第に就職の条件は悪くなる。
 私の知っているスナックの元経営者は、バブルの時代、毎日相当の日銭が入ってきて、それがずっと続くと思っていたので貯金もしていなかったという。ところが世の中不景気になると、収入は激減し、店をたたまなくなった上、60歳を過ぎてもまだまだ働き続けなければならないという話である。

 自分にあった仕事がないといって、親に甘えているフリーターやニートの人たち、将来、年をとれば、仕事をしようとしても仕事はないし、甘える親もいなくなる。どうして生活していくつもりなのか。自分にあった仕事なんてめったにあるものではない、みんな、食べるために働いているのだ。自分の食扶ちは自分で稼ぐ。これは成人した人間の最低の義務だ。生活保護はそのような甘えてる人たちまでは保護しない。

 この老人のようにお金に対する不安から働き続ける必要はないが、お金に楽天的になり過ぎて、定職にもつかず、しっかり働こうとしない若者も危険である。
 若い時代にしっかり働いてお金を貯めて、老後の生活費までの目処がつけば、早期退職して自分の人生を生きるのがいい、というのが私の持論である。