投資論(外国為替証拠金取引)
はじめに
外国為替証拠(保証)金取引(FX)は、私が知っている投資の中では、比較的安全で簡単でしかも効率よく収益が得られる投資(投機)です。リスク管理は当然必要ですが、そのシステムも用意されています。
まず、なぜ比較的安全かというと、株式投資では株式を保有している会社が倒産すると、価値がゼロになってしまうのに対し、外貨の価値がゼロになるということはありません。また、主要国の通貨であれば、短期間のうちに極端に価値が下がるということもありません。リスク管理が行いやすいということです。
簡単というのは、主要国通貨というのは限られているので(ドル、ユーロ、ポンド、オーストラリアドル、スイスフラン、カナダドルなど)、株式投資のように多くの銘柄の中から将来の有望株を探すという手間がかからないということです。マイナーな通貨(南アフリカランド、アイスランドクローネ、トルコリラなど)は流通量が少ないので、変動幅が大きいだけでなく、緊急時に売れない、買えないという状況が生じるのでお勧め出来ません。しばらく、取引してみて自分の得意の通貨(どういう動きをどの範囲でするか等)を見つければいいと思います。
効率がいいというのは、レバレッジ効果で証拠(保証)金の10〜20倍近くの資金運用が出来る上、外貨の上げ局面では無論のこと、下げ局面でも「売り」からポジションが持てて、どんな局面でも読みを間違えなければ、収益が得られる仕組みとなっていることです。
同じような仕組みは株式投資でも信用取引としてありますが、この両者の決定的な違いは、株の信用取引では6ヶ月という期限があるのに対して、外貨証拠(保証)金取引では期限がないということです。これは、非常に大きな差です。
一時期、絶対儲かると事実を告げずに強引な勧誘を行う業者によって被害者がでて、この取引(FX)が悪者扱いされたことがありますが、取引の仕組み等は、決して悪いものではなく、非常によく出来ているものです。
なお、この取引については、平成17年7月1日から、金融先物取引法(現金融商品取引法)の規制対象となり、事業者には一定の条件が課せられ、金融庁への登録業者以外は、取り扱えなくなっています。法では、会社資産と顧客預かり資産の分別管理を求めていますが、一部の事業者はより安全な信託保全を取り入れていますので、信託保全を採用している事業者を選ぶようにした方がいいと思います。
外国為替証拠金取引をするための条件
余裕資金が最低10万円以上あること。できれば、100〜150万円くらいの資金があると収益額も大きくなり、投資を実感できます。これは、将来的にも使う予定のない余裕資金であること。取引会社によっては初回の入金について、一定額以上と定めている場合があるので注意が必要です。
パソコン(スマホ)は必需品です。パソコン(スマホ)の操作ができ、インターネットに接続している環境にあること。
電話での取引もできますが、一部制約があったり、手数料も高くなります。ただ、インターネットでの取引は急落や急騰時、接続が困難になることがあるので、電話での取引方法も確認しておく方がいいでしょう。
リスク(危険)は当然ありますので、自己責任で取引できること。十分なリスク管理をするということは、損失の許容範囲を事前に自分で設定でき、損失の許容範囲を超えない手前で、損切り(損失を出してもそれを拡大させないために反対売買すること)をするということです。資金を全て失ってしまえば、挽回のチャンスもなく、大損したまま市場から退場することになります。
制度の概要(取引会社によって微妙に異なります)
単純に説明をすると、外貨(ドル、ユーロ、ポンド等)を日本円で買ったり、売ったりするのです。したがって、外貨の安いときに買って、高くなった時に売れば、収益があるということです。普通の商品と同じです。例えば、1ドル=100円の時に買って1ドル=101円で売れば、1円の収益があるということです。
外国為替証拠金取引では1ドル単位では取引できません。最低1万ドル(1単位)の取引からとなります(他の通貨も同様で1万通貨単位、最近では1千通貨単位で取引できる会社もあります)。最低単位で取引を行っていた場合、上記の場合、手数料を考慮しなければ、1万円の収益となります。
逆に外貨が下がると思えば、売ってから買い戻すということもできます。これは初心者には少し分かりにくいかもしれませんが、株の信用取引を行った経験のある人なら理解していただけると思います。
1万ドルを普通に買うと、1ドル=100円としても100万円の資金が必要となります。しかし、証拠金取引では、必要額の5%〜10%の資金で取引できます。
なぜ、そのような少ない額ですむのかというと、差益決済という方法をとっているからです。上記の例で言うと、普通の取引なら、100万円の資金で売買をして、1円上がれば、101万円を受け取るということですが、証拠金取引では、差益決済ですから信用で買って、この差益1万円を受け取るという形になります。要するに、通常の変動で、損害額がでそうな範囲を証券会社等が証拠金として設定して、その額を預けておけば売買ができるということです。
それでは、どうして10万円以上の資金が必要かというと、為替差損が出て預けている証拠金が減り、必要証拠金額に対して一定割合以下(各社によって異なります)になると証券会社等は損をしないために、こちら側の意向も聞かずに強制売買してしまいます。そのため、預けておく証拠金には少し余裕が必要なのです。
外貨を買うと買った外貨の金利の方が高い場合、スワップ金利といって金利差分の金利が毎日つきます。この場合、逆に売りから入ると金利を支払うことになります。これは預けている証拠金につくのではなくて、買った外貨に対してつくので、意外に大きな額になります。スワップ金利は、日々変動しますし、会社毎に微妙に違います。高金利通貨を比較的安いと思われる時期に買って長期に持ち、スワップ金利で収益を上げるという投資スタイルもあります。
手数料は買った時、売った時にそれぞれかかります。会社によって異なりますが、最近は手数料無料という会社も多くなりました。
本取引を行っている証券会社等では、インターネット上で、自社の制度概要等を説明しています。必要証拠金や手数料、スワップ金利等は会社ごとに違いがありますので、そちらを参考にして、もっとも自分に有利と思われる会社で口座を開設すればいいと思います。
なお、外国為替証拠金取引で収益(経費を差し引いた後)があると雑所得として確定申告し(総合課税)、税金を納める必要があります(詳しいことは税務署等に照会下さい)。少し前、外国為替証拠金取引で収益を得た人が申告せず、脱税で追徴金を課せられたという話が新聞紙上を賑わしました。その額が余りにも大きかったので、その種の報道があった後は、外国為替証拠金取引がそんなに儲かるのかと取扱各社へは照会が殺到したそうです。
個人で行うなら、従前から行われていた相対取引よりも、もっと有利な外国為替証拠金取引の形態があります。それは、平成17年に創設された「くりっく365」と呼ばれる東京金融取引所で取引される外国為替証拠金取引です。スプレッド幅は少なく、売り買いでのスワップ金利差がなく、スワップ金利も高い目です。手数料は各社異なります。また、税金が申告分離課税(20%)であり、損失がでた場合、翌年以後3年間にわたって損失を繰り越せるというのは大きなメリットです。誰しも、収益を上げ続けられるわけではありませんから…。
売買時期の判断
買い時、売り時は各自で判断するしかありませんが、その判断材料に、ファンダメンタルズ分析とテクニカル分析があります。
ファンダメンタルズ分析とは、一国の経済力が弱いと判断されるとその国の通貨の価値が下がってしまうので、将来的な経済状況を予測し、売買を判断するものです。情報量の少ない素人がファンダメンタルズ分析するのは困難ですし、専門家のファンダメンタルズ分析も、短期の場合は意味をなさないことが多いです。しかし、大きな方向がどちらなのかを知っておくことは大切です。中央銀行の政策金利の変更 経済指標の発表等が為替の変動要因になります。なお、G7など国際経済会議で為替が話題になる時は、注意が必要です。信じられないくらいレート価格が動きます。できれば、この種のイベントが予定されている直前の新規ポジションの設定は避けた方がいいと思います。
また、曜日的には、月曜日の午後4時以降のヨーロッパ時間が開いてから、動きを見てポジションをとる方がいいと思います。金曜日は手仕舞いも増えますし、土日に突発的な事件が起こる可能性があるので、新規ポジションは持たない方がいいと思います。暴落はほとんど月曜日におきているように思います。
テクニカル分析とは、チャート(価格の変動をグラフにしたもの)や各種指標というものを利用して、過去の動きから将来を予測するものです。歴史は繰り返すことが多く、チャートは参加者の心理の反映でもあるので有効だと思います。突発事件については、逆指値(ストップ)を入れておくしか対応策がないので、新規にポジションを持ったら指定しておきましょう。
テクニカル分析を使った基本的な取引方法は次の通りです。
@まず、現在の相場が大きな流れができているトレンド相場か、一定の値幅で上下しているボックス圏相場であるかを見極めることが大事です。この見極めは難しいですが、DMIという指標のADXが上昇し続けている時はトレンド相場であるという判断をします。
Aトレンド相場かボックス圏相場かが分かりやすい相場の時に勝負する。
Bその中でも大きな流れ(トレンド)に乗る順張りが基本。下がってきたからそろそろ上がるだろう(方向が転換する)と考える逆張りは、ボックス相場圏では有効だが、トレンド相場であれば大損を出す可能性がある。トレンドがつくと、その方向へ大きく動くので、直近安値・高値などの値ごろ感で売買してはいけない
Cポジションを新規に作る時は成行で行う(指値では行わない)
D利食い、損切り(ロスカット)は指値でもよい。
E危険を感じたら、成行で切ってもよい。
F思っていた方向と逆に動いた場合は、持ち続けたりナンピンをしないで、一度、ロスカットして、動いた方向へ新規ポジションを持つ
G自分の決めたロスカットルール(2円というふうに値幅で決めてもよい)に従ってストップは必ず入れておき、そのルールは守る。損切り(ロスカット)は勇気がいるが非常に大切。
H上昇時の買い乗せ、下落時の売り下がりは収益を増大させる
各種指標の見方で重要なものは次のとおりですが、最終判断は、いろんな指標を参考に総合的に判断するしかありません。詳しくは各自で勉強して下さい。
@移動平均線⇒ 直近の動きを予想するものではなく、長期のトレンド(上向き、横ばい、下向き)を見るための指標です。
ADMI⇒ADXはトレンドの強さを示す。グラフ上で上昇が続いていれば、トレンド続いていると判断し、下落していればボックス圏相場になっていると考える。+DIは上昇トレンドを−DIは下降トレンドを示す。+DIと−DIの線がクロスするところも注意。
Bローソク足⇒ 実体線の大きさに注目する、大きいほど流れは強い。ヒゲの長さ、特に底値圏での長い下ヒゲ、高値圏での長い上ヒゲには注意すること、今までのトレンドが転換する可能性が高い。また、寄り引き同時線も転換を意味するので注意する。
Cボリンジャーバンド⇒2標準偏差の外側での存在期間は長く続かないと見て、±2標準偏差の内側へ離れだした後、
買いシグナル 移動平均線を上回ってきた。
売りシグナル 移動平均線を下回ってきた。
D一目均衡表⇒難しいので参考にする必要はないが、雲より下では雲が抵抗線に、雲の上では雲が下値支持線になることが多いので、雲を越えてきたらトレンドが変わったと見る。
以下EからGの指標はボックス圏相場では有効だが、トレンド相場の時は有効とは限らない。
EMACD⇒
買いシグナル MACDがシグナルを上回った後MACDがゼロを上回った。
売りシグナル MACDがシグナルを下回った後MACDがゼロを下回った。
Fストキャスティクス⇒
買いシグナル %Kと%Dがゴールデンクロスして、%Dが30%を越えてきた。
売りシグナル %Kと%Dがデッドクロスして、%Dが70%を切ってきた。
GRSI(ストキャスティクスと似ている)⇒
買いシグナル RSIが30%を越えてきた。
売りシグナル RSIが70%を切ってきた。
最後に、各社では、無料公開セミナー等を開催しており、売買の方法、チャートの見方、最近の世界の経済情勢等を教えてくれます。インターネット上から開催状況を調べて(セミナビなど)、参加して勉強するとともに、疑問等があれば質問するのもいいでしょう。私は、この種のセミナーは非常に有用だと思っています。また、ネット上でも様々な情報が得られます。