私の投資体験

投資を始めるまで

 50歳の時、この年はいろんなことがあって、何か楽しみはないものかと思っていたところ、某信託銀行から投資セミナーの案内を受けた。粗品がもらえるということで、気軽に参加したところ、株式投資の世界に目を向けさせられることにになった。仕事を辞めたいと思い始めていた時期でもあったので、投資で収益を得て一定の蓄財ができれば、仕事を辞めても生活できるかも…という期待もあって始めようと思った。また、将来のインフレ対策や老後の楽しみになるとも思った。
 その昔、何かの本の影響で株式投資をしようと思ったことはあったが、親や周囲の誤った教育のせいで、株は怖いという印象があったし、周りに適当な指南役もいなかった。証券会社というのは銀行などと違って敷居が高すぎたし、一度、財形貯蓄のことで出向いた証券会社の担当者は、我々庶民顧客の立場を十分考えていないような対応をした。
 それまでは、金利が、郵便貯金の定額貯金がいいと聞けば定額貯金にし、信託銀行のビックがいいと聞けばビックにし、一時払い養老保険がいいと聞けば一時払い養老保険にして、安全でリスクをとらない運用をしてきた。しかし、現在の金融機関の預入れ金利は余りにも安すぎる。数字はついているが無いに等しい。

投資の勉強について

 退職後、本格的に投資について勉強しようと思ったが、投資を学ぶ学校のようなところを探せなかった。そこで、インターネットで探したのが、社団法人証券広報センターの通信教育である。いろんなコースが用意されているが、とりあえず「株式投資基礎」というのを受講した。通信教育なら、本を読んでも同じようなものだが、やはり試験があると、理解し、一所懸命覚えようとする。また、同センターでは、回数は多くないが、無料で株式入門セミナー(1日コース)というのも開催していた。これにも参加したが、1日で多くのことを学ぶので少しきついが、入門者が知っておくべきことは一応教えてくれる。また、毎日文化センターの株式投資の基礎講座(有料)も受講したが、株式投資の勉強はあまり役立ったとは思えない。一方、FXについては、周辺(遠くは名古屋)で開催された証券会社のFXセミナー(無料)にも数多く参加した。FXセミナーで得た知識は有用だったし、FX関係の書籍やグッズなども貰った
 証券会社等が開催する無料・有料の勉強会やセミナーがあるので、日頃からインターネット(セミナビなど)で探しておくといいだろう。地方での開催は不定期で少ないが、口座を開設していない人でも無料でインターネットから参加を申し込めるところが多い。


 日々の情報については、証券会社等のインターネットサイトはもちろん、TV大阪(TV東京)のモーニングサテライトや日経CNBC(ケーブルTV)の番組を愛用している。相場解説というのは後追いであまり役に立つとはいえないが、雰囲気だけを聞いている。平成20年に創刊された日経ヴェリタスという投資専門新聞は6ヶ月間定期購読したが、投資に直接役立つというものでなかったので、購読は継続しなかった。玉石混交だが投資関係の本も多く販売されている


株式投資

 そんな私が、株式投資をはじめられたのは、パソコンを使ったインターネットトレーディングという家にいながら、投資ができるようになったことや、インターネット専用証券会社の手数料が格段に安くなったことなど、投資環境の変化が大きい。今は、家のパソコンでリアルタイムに個別の株価が分かる時代である。また、各証券会社のホームページには、各種チャートや情報も提供されている。
 平成13年8月、少し不安を持ちながら、某ネット証券に口座を開設した。証券会社の口座の開設は、各証券会社のホームページから口座開設の資料請求をし、送られてきた書類に必要事項を記載し、本人確認の書類(免許証のコピー等)を添付して、返送するだけである。口座が開設された後、証券会社から指定された金融機関の口座へお金を振り込めば、手続きは完了する。ネット証券は完全前金制で、口座にある金額の範囲内で株式等を購入することになる。
 開始時期がこの頃であったことは結果としては幸いした。インターネットトレーディングも普及し始め、売買手数料も相当下がっていたし、日経平均株価と連動するETF(上場投資信託)が販売開始(平成13年7月)となっていた。また、比較的株価が安価な時期であった。 

 当初、株式投資にあたってどの銘柄を買えばいいか分からなかったので、少額の資金で「ETF」を買い、少し儲かるとすぐに売って利益を確定させた。その後、額を増やし、ETFだけではなくて、いろんな個別企業(オリックス、コーナン商事、セブンイレブン、ホクト、リコーなど)の株を買った。企業の選択の方針は、自分が知っている企業で、業績がいい印象のあるところといういい加減なものであり、しかも買うタイミングも、チャートなども見ずに、直近の高値よりは下がっているところといい加減であったが、それでも、始めは少し儲けて喜んでいた。
 しかし、退職直後の平成15年4月に日経平均株価が7,607円というバブル後の最安値をつけ、それまでの儲けは吹っ飛び、かなりの評価損がでた。株価というのは不思議なもので、材料があるから上がるということは当然あるが、相場全体が上がると理由もなく上がり、相場全体が下がると理由もなく下がるということがあるのだ。その後、令和6年には史上最高値を更新し、日経平均株価は4万円台まで上がり、その当時の5倍強になっている。
 株が下落しても益が得られるというので信用取引も行ったが、なぜか、買うと下がり、売ると上がるという失敗を繰り返し、6ヶ月という期限もあることから、あまり収益は得られなかった。
 その後、日経平均株価が上昇するなど相場環境が改善し、一度だけだが、IPO(新規公開株)に当たったこともあって、株式投資では何とか収益があった。
株主優待というものもあるが、あまり有用だと思わなかった。
 しかし、株式投資よりも、次に述べる外国為替証拠金取引の方が、効率的に収益が得られることが分かったので、取引はそちらに移行した。

外国為替証拠金(FX)取引

 平成15年3月に、株の取引をしていたネット証券が外国為替証拠金取引を扱うようになったため、少し勉強した後、この取引を開始した。少ない証拠金を用意するだけで、大きな額の取引ができる刺激的な投資である。
 これも始めは最低の1単位(1万ドル=当時必要証拠金約6万円)で行っていたが、そこそこの儲けがでたので、
取引額を増やしたところ、大きく値を下げて評価損がでて、追加証拠金も入れる状態となった。既に退職していたので、せっかく自由の身になれたのに、またどこかへ働きに行かなければならないのか、しかし、この歳になって新しい職場でこの損失額を稼ごうと思ったら、何年働かなければならないだろうか、そんなことをぼんやり考えた。しかし、その後何とか益がでるまで回復して、再就職しないですんだ。

 平成16年は、外国為替証拠金取引で「ポンド・円」という変動幅の大きい通貨取引を退職金を資金に高額で取引して、判断も的確だったので、相当の収益を上げて、当時はまだ総合課税だったので高額の税金も支払った。その後は分離課税になり収益の2割が税金となっている。
 その収益で、車を買い替え、大阪のワンルームマンションまで購入した。このマンションは将来、値上がりすればいいなという程度の投資的目論見はあった。購入後約20年経過して、枚方の田舎のマンションは、購入価格より下がっているが、大阪のマンションは値が上がっている。投資的目論見は当たった。
 手数料が無料だった、外国為替証拠金取引のディトレードというのも行ったが、少なく儲けて大きく損をするということを繰り返したので、止めてしまった。刺激的な取引で病みつきになってしまうが、素人にはなかなか難しい。
 平成17年には世間体や税金対策もあって、自分の会社を設立してFX取引を継続した。ところが、平成19年は、会社と個人で同時に「ポンド・円」の買いポジションを持ったところ、個人の方の証拠金が少なかったこともあって、2〜3月の世界同時株安の急激な下げに対応を誤り、ストップ・ロスにかかって強制決済され、損失が確定するという失敗をした。このロスカットしなければならないという教訓を翌年にも生かせなかった。
 平成20年、オーストラリアドル・円で前年の損を一旦は取り戻したのだが、10月、リーマンショックも一段落したとみて、個人でオーストラリアドル・円、会社でポンド・円の双方のポジションを持った。すると大幅に急落が続き、ロスカットすべきところを、双方に追加証拠金を入れて支えようとしたため、追加証拠金を巻き込んでストップ・ロスにかかるという大失敗をしたその結果、会社は休業、個人でも資金が少なくなり、投資額を大幅に縮小しなければならなくなった。


付録(詐欺)

 セミナーか何かの繋がりで某証券会社で私募社債を買うことになった。特に有利な利息でもなかったが、堅くいくものもあっていいかと思って買ったところ、途中まで利息が支払われていたが、最終償還時に利息もまとめて払うということになり、結局は償還されなかった。会社名が変わりいつの間にか会社も無くなっていた。会社ぐるみの詐欺だった。証券会社は免許・登録のようなものが必要で国が公に認めている会社がそんな詐欺をするとは思わなかったし、不思議なことに事件にもならなかった。当時、FXで多額の損失が出ていたので、このくらいの損などどうでもいいと思ってしまった。投資の世界にはこういうこともあるのだということは知っておいていい。


結語


 こんな世界があったのか、今まで知らなくて損をした、でも今からでも知って得をした、というのが投資の世界に足を入れてみての感想である。余裕資金であること(借金や生活資金でないこと)、予測した方向と違った場合に損切りする勇気(?)と資金に余裕があれば少々下がっても長期的に保持できれば大損はしない。一時期、給与所得者(サラリーマン)時代とは金銭感覚がまったく異なってしまっていた。100年に1回というリーマンショックの不幸に見舞われ、令和2年のコロナの世界的感染時にも外貨が急落したが、令和4年の円安外貨高時に少し取り戻し、全体の投資の結果はプラスである。もう歳なので投資の世界からは身を引く。投資は時間との勝負でもある。損をしたら取り返す時間がもうない。